Ka Wai Mu*ki*ki*/Puna I Ka Ulu Aloha

Ka Wai Mu*ki*ki*/Puna I Ka Ulu Aloha












 鳥といえば、Lehuaの香り高い蜜をすうもの。
 (そして)Punaのあの植物から(飲み物を)取り出すのも彼らだったりする。
 Kali'uの山手にある、黄色い樹皮の'awa。
 そこからPunaのkavaは作られる。
 彼の愛が私のところに届く(のは、そのkavaの力があってこそ)。
 眠りへと誘いもしながら……。
 
 Ka wai mu*ki*ki* 'a'ala lehua o ka manu
 O ka manu 'a*ha'i ka la'au o Puna
 Ka 'awa 'ili lena i ka uka o Kali'u
 Eia i ka la'au ka 'awa o Puna
 Mapu wale mai ana no ia'u kona aloha
 Ho'olana mai ana no ia'u e moe

 「Ka wai mu*ki*ki*'~」とはじまる鳥の描写のいきなりさ、そして独特のメロディラインの陰影でもって、思わず歌の世界に引き込まれてしまう『Ka Wai Mu*ki*ki*』。鳥(ka manu)、lehuaの花の蜜(ka wai lehua)、眠りを誘う飲み物kava(ka 'awa)、Punaの大地……そんな、詩情をさそう小道具でもって語られているのは、いったい誰のどんな思いなのか……?そのあたりを探るために、まずはこの歌の元になっているchant(oli)が含まれる、火の女神Peleとその妹Hi'iakaにまつわる物語をたどってみたいと思います。
 長い旅のはてに、Hawai'i島はMauna Loa山の火口を終の住みかと決めた、火の女神Pele。ある日、遠くから響いてくるpahu hula(ドラム)の音色にこころ奪われ、誘われるままに深い眠りに落ちます。そうして彼女は、夢うつつのままその精神だけでKaua'i島へ……そして、そこでpahu hulaを奏でていた美しい男性、Lohi'auに出会い、たちまち恋に落ちるのですが、Hawai'i島に戻らなければならなくなったPeleは、わずかな滞在のあとLohi’auのもとを去ります。ですが、Peleは彼を捨てたわけではなかった―眠りからさめたPeleは、Lohi'auをKaua'i島へ迎えにいくことを妹たちに命じるんですね。そして、ほかの妹たちが後込みするなか、勇気をふりしぼって旅立つことを決意するのが、「Hi'iaka-i-ka -poli-o-pele」(Peleの胸に抱かれたHi'iaka)とも呼ばれる、一番幼いHi'iakaでした。
 旅をともにするWahine’o*ma’o、および特別なパワーをPeleに与えられ、さぁ、これからKaua'iへという旅のはじまりのところで、Hi'iakaは早くも困難に直面します。回り道になるけれど安全なルートか、獰猛で魔力を持つmo'o(大トカゲ)、Pana’ewa*がいる近道を選ぶか……危険を承知で後者を選択したHi'iakaは、お供が寝入ってからも、まんじりともせず闇を見つめながら、わき上がる思いのままに歌います。そうして生まれたと語られるchant(oli)が、この「Ka Wai Mu*ki*ki*~」ではじまるくだりです。
 ここで眠ってしまっては命取りになる。力の限り戦わなければ……闇をまとった切り株さえ、大トカゲPana'ewaの化身だったりする真夜中の森。歌のなかで、鳥は眠りを誘うkavaをもたらすとされますが、物語では、Pana'ewaが偵察のために送ったスパイでもあります。そんな状況のなか、Hi'iakaはあくまでも戦い抜くことを宣言する……。Peleの妹として語られるHi'iakaですが、その名前の由来(Peleの胸に抱かれたHi'iaka)からすると、彼女のこの強さは、その愛(大地の力)でもってハワイの島々を生み出し、いまも燃え続けるPeleの力そのものなのかもしれません。

 Punaはあふれる愛が育つところ。
 よみがえる愛の記憶や、うちに秘めた熱い思い(にあふれている)。
 Lehuaの花は、まるでやわらかなミストにかわいがられているように見える。
 Ka'uhiwaiの雨にうっとりまどろんでいるというか……。

 Puna i ka ulu aloha
 He hali'a, he i'ini o loko
 Ka pua lehua i mili 'ia e ka noe
 Noenoe mai nei e Ka'uhiwai

 私の思いは、もう、すっかり連れ去られたような感じ。
 Lehuaのことを思わずにはいられない、この捕らわれの身にとっては……。
 Leiに編めば、(もうその)香りはいまここに……。
 (そうして)あなたのやさしく歌うような声とともに、そのかぐわしさが届くのです。
 
 Ua uhi 'ia ko'u mana'o
 No ke kauwa ke aloha i na lehua
 Haku 'ia i ka lei, ke 'ala mai nei
 E hoene me kou leo nahenahe

 幾度となく思い起こされるこの思い。
 (それはいつも)山深いPunaの森へといざなわれていく。
 さぁ、この歌に込めた思いを、もう一度こころに響かせてほしい。
 Lehuaの花々への尽きぬ思い、満たされることを知らないこころもようを……。

 'Upu mai ana ke aloha
 No ka uka nahele o Puna
 Ha'ina 'ia mai ana ka puana
 No ke kauwa ke aloha i na lehua

 前半の『Ka Wai Mu*ki*ki*』が夜のPunaの闇を表現しているとすると、それに続いて歌われる『Puna I Ka Ulu Aloha』には、太陽に照らされてalohaが育つ(i ka ulu aloha)、明るさに満ちたPunaが表現されているのではないかと思ったりします。流れるpeleに焼かれ**、真っ黒な溶岩におおわれたPunaの大地。そこに、真っ先に芽吹き、やがて花を咲かせる'o*hi'a lehua。強い風にふかれるがままになびきながらも、彼らがしっかりと大地に根を下ろすことができるのは、生まれたての土壌にも雨は降り、なによりもPunaの自然に守られているから……そう、荒涼と広がるPunaの大地は、愛にあふれるところ(Puna i ka ulu aloha)なんですね***。
 PeleとHi'iakaの物語には、Peleの命を受けてKaua'i島へ向かうことを決意したものの、揺れ動く気持ちのままにHi'iakaが歌うシーンがあるのですが、そこに登場するのが、『Ka Wai Mu*ki*ki*』の最初に登場した、Kali'uの土地に育つlehuaたちです。私、Hi'iakaはPunaを離れ、あなた、PeleはKali'uのlehuaのもとにとどまる……そう繰り返し歌うHi'iakaは、Peleに大切なlehuaの森を託したかったのかもしれません。一方、Peleのほうはというと、Hi'iakaにKaua'i島行を命じるにあたって、「私たちふたりの恋人、Lohi'auを連れ帰るように」と語っていたりします。そもそも、「Hi'iaka-i-ka -poli-o-pele」(Peleの胸に抱かれたHi'iaka)というネーミングからして、PeleとHi'iakaは、別々の個体でありながら一心同体のようでもあり、一方を欠いてはいずれも存在し得ないようなところがあります。そして、そんなPeleとHi'iakaの不思議な関係は、『Puna I Ka Ulu Aloha』で語られるPunaへの望郷の思い、そしてlehuaへの深い愛着と、まだみぬひとに恋い焦がれる気持ちが混然一体となったような雰囲気にも表れているように感じられます。また、その思いは、まさに花の蜜を求め続ける鳥たちの(ka wai mu*ki*ki* 'a'ala lehua)、まるでlehuaの虜になったような姿(no ke kauwa ke aloha i na lehua)が象徴するものでもあり、乾きそのものが愛としかいえないような、狂おしい感情でもあって……そんな、決して満たされることのない深い愛の思いが、ここには表現されているのではないかと思われます。

 Punaはlehuaの花が折り重なるように咲き乱れるところ。
 そう、Punaのlehuaは赤く燃えるように咲く……。
 まるで、あの山の火口に住む女神たちの鼓動が聞こえるよう。
 Kilaueaこそが愛であり、いとおしい大地でもあってみれば。
 神聖さそのもの、あの女神たち(にこの歌を捧げます)。

 O Puna lehua i ka papa
 I 'ula i ka papa ka lehua o Puna
 Kukui mai la i na wahine o ka lua
 Mai ka lua ou e hele mai nei
 Aloha Kilauea ka 'aina aloha
 Ho'i no e ke kapu e na wahine 

 この最後の部分は、再び『Ka Wai Mu*ki*ki*』のメロディで歌われますが、歌いはじめの鬼気迫る感じは薄れ、なぜか調和のとれた世界が歌い上げられているような印象があります。それは「火口に住む女神たちの鼓動」といった、あまりにも美しい表現のためかもしれませんが、地震や火山の噴火といった、人間にとっては災害でしかない自然現象がそんなふうに語られていることが、実はとても重要なことなのかもしれないと思ったりします。人間の存在をおびやかすことがあろうとも、火山Kilaueaこそが愛であり、いとおしい大地でもある(Aloha Kilauea ka 'aina aloha)……そう言い切れるのは、pele(火山)が生み出した島なのだから、大地はそもそもPeleのものだという思いが根底にあったりするのかもしれません。そんな、人間の力を超えた存在への大いなる敬意と信頼でもって、科学とは別の仕方で思考する世界観が表現されているように思えてきた『Ka Wai Mu*ki*ki*/Puna I Ka Ulu Aloha』。PeleとHi'iakaの物語をたどりながら、神話のことばで語られるハワイの知を感じることができる一曲でした。

*:Pana'ewaは、Hi'iakaたちが旅したとされる、Hawai'i島、Hiloにある、奥深い山側の地域の名前でもあります。
**:ハワイ語の「pele」は、女神の名前であるとともに、溶岩流や火山、火山の噴火そのものをあらわすことば。
***:力強い植物のエネルギーにイマジネーションをかき立てられて語り継がれてきたのが、「'O*hi'a」と「Lehua」の悲恋の物語なのかもしれません。

参考文献
Emerson NB: Pele and Hi'iaka-a myth from Hawaii. Hilo, Hawai’i, Edith Kanaka’ole foundaition, pp12-36, 1997
Fried CL: The dream of Pele. Hawaiian legends of dreams. Honolulu, University of Hawai’i Press, pp55-67, 2005

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コメント

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hanaleimoonlight@aol.com
ありがとうございます!
Punaへの大地への愛だったのですね!
やっと情景を表現できそうです!

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hanaleimoonlight@aol.com
ありがとうございます!
Punaへの愛だったのですね!
晴れて私の気持ちと曲が重なり踊れそうです!

隙間のりりー

hanaleimoonさま

コメントありがとうございます。
あくまでも私のとらえかたなので恐縮ですが、イメージをふくらませる手がかりにしていただけたら嬉しいです。
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。