Pa*lehua

Pa*lehua




Amy Hanaiali'i Gilliom





Amy Hanaiali'i Gilliom & Willie K with Dancers of Aloha Dalire
2000/8/22


 私を呼ぶ声が聞こえる。
 Pa*lehuaからやってくるその声が。
 私に(なにかを)思い起こさせてくれる、天に向けて開かれた忘れがたい場所。
 そびえる峰は(ただ)そこにある、まるで天に通じる(道を示す)ように……。
 そして、Pa*lehuaに呼びかける、私はここにいます、と……。

 こちらに呼びかける声なき声が聞こえ(e ka*hea mai ana)、天にも通じるように思われる(wehe i ka lani)神秘的な場所に出合った感動が、ギュッと凝縮されているように思われる『Pa*lehua』*。その場所が思い起こさせてくれる(ha*'upu ia'u)ことがらが具体的に語られることはありませんが、日常のなかで忘れられがちな大切なことへの思いが、にわかにむくむくと立ち上がってくる……そんな感じが、シンプルな歌詞とメロディによってストレートに伝わってくる曲です。Pa*lehuaに導かれ、この手が天にも届きそうなくらいに解き放たれた私のこの思い……そして、まるでその思いを届けてくれたPa*lehuaに、確かにメッセージを受け取ったことを伝えるかのように、「'auhea wale ana 'oe」**と呼びかけてもいます。
 歌の後半部分では、いわば体全体で感じたPa*lehuaを描写するように、風の気配やそれが連れてくる森の香りが歌われます。

 高く美しくそびえる場所、そこはPa*lehua。
 生い茂る木々のなかを風がそよぐ。
 そして、私たち(ma*kou)はpalepiwa***の香りに包まれる。
 Pa*lehuaに呼びかける、私はここにいます、と……。

 ここで、私たちがpalepiwaの香りに包まれるとされるときの「私たち」が、「ka*kou」ではなく「ma*kou」であることは、結構、重要ではないかと思ったりします****。「Aloha ka*kou」とお互いにあいさつを交わすときに用いられる「ka*kou」とは異なり、「ma*kou」には話しかけている相手、ここでは、呼びかけているPa*lehuaが含まれていない、つまり、Pa*lehuaは、自らとは別の地平で語られるべき存在として意識されていると思うからです。もっといえば、そこには、ひとが自らの力のおよばない大きななにものかに出合ったと感じるときの衝撃や驚き、あるいは畏れをいだかせるような体験があったのではないかと-そう、そこからのちに宗教と呼ばれるものが始まりもするような類の稀有な出来事が……。
 ホントウのところは、Pa*lehuaのメッセージを受け取った本人にしかわからないことですが、少なくとも、きわめて個的なPa*lehuaにまつわる体験が、とぎすまされた感覚によって普遍的なものにまで昇華しているように思われる、そんな『Pa*lehua』なのでした。

composed by Amy Hanaiali'i Gilliom


*:Pa*lehuaと呼ばれる山がちの地域は、カウアイ島、オアフ島にあり、この楽曲の作者のインスピレーションをかき立てた場所がどこにあるのかは不明。「pa*-lehua」の文字通りの意味は「lehuaに囲まれた場所」。
**:文字通りの意味は「Where are you?」ですが、慣用句として「Listen!」「Pay attention!」といった、声を届けたい相手への呼びかけとして用いられることばでもあります。
***:ユーカリ族の樹木一般を指すハワイ語。「pale」(取り除く)、「piwa」(熱)という名が示す通り、熱冷ましとして用いられていた植物のようです。
****:「ka*kou」も「ma*kou」も、日本語にすると「(3人以上の)私たち」としか訳せませんが、「ka*kou」は話しかけている対象を含み、「ma*kou」には含まれないという厳密な使い分けがあります。
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。