Holo Wa'apa*

Holo Wa'apa*




Hi'ikua (Kalehua Krug, Kamuela Kimokeo, Blake Leoiki-Haili)





38th Annual Linfield Lu'au- couples dance



 さあ(あなたと私)、カヌーで出かけましょう。
 (まずは)ゆったりオールを手に持って。
 前へ、後ろへとゆれは続くけれど、
 おだやかに行ったり来たりするくらいなら波だって気にならない。

 二人で(ka*ua)、カヌーに乗って出かけましょう(i ka holo wa'apa*)と、まるで二人してピクニックにでも行くみたいな雰囲気ではじまる『Holo Wa'apa*』。オールをゆったりと手にとる(lawe ma*lie)と歌われるあたり、なんとなく急ぎの旅でもなさそうですが、いったいこの二人、どこへ行こうとしているのでしょうか。結局、最後まで、向かっている場所について語られることはないばかりか、とにかく波にゆられている様子だけが描かれている、そんな印象があります。もしかすると彼らのお出かけの目的は、二人してゆらゆらすることだったりするのかも……。
 いきなり結論めいたことを書いてしまいましたが、ともかくこの先を読んでみると……。

 しっかりオールを引くあなた。
 (その様子は)まるで陸地へと果敢に進む'iwa鳥*のようにすてき……。
 私が馬に乗って進むときのスピードにも匹敵するすばやさ。
 波の力ってすごい……。

 こんなふうに、たいしたことない(mea'ole)くらいのゆれだったカヌーが、早くも結構なスピードを出して進み始めている様子が歌われています。そして、カヌーを漕いでいるのは、どうもあなた('oe)と呼びかけられている誰かのようです。しかもこの誰かは、そのカヌーをあやつる様子を「'iwaのようにすてき」「馬で進むスピードなみ」とたたえられてもいます。おそらくなにごとかの成就をめざして、力強くオールをさばきながら、カヌーのへさきをぐぐっと方向転換させるその姿のカッコよさを……。

 風にまかせて、カヌーのへさきは方向を変える。
 北東へ、北西へ、そして南西へ……。
 カヌーはそうやって動かされている。
 さあ、しかっかりオールをこいで、左舷に向けて……。

 結局、二人してカヌーに乗っている様子の描写だけに終始する歌なのですが、なんとなく二人の間で、あることがらがクライマックスを迎えていることだけは伝わってきます。風や波といった自然の激しさと、それに果敢に挑んでいる誰かのエネルギー。その両者が拮抗する状況にあって、大胆に舵を切るカヌー……歌詞によると、180度回転していることになりますが、なにか劇的なことが、この二人の間に起こったことの暗示かも……と思うと、ますます想像力をかきたてられてしまいます。
 この歌の作者はLena Machado**という女性であることからすると、オールを漕いでいるのは男性で、彼があやつるとともに、しだいに激しくゆれはじめるカヌーに身を任せているのは女性ということにもなるでしょうか。「'iwa鳥みたいですてきよ!」とか言いながら、最後には「さあ、しっかり漕いで!(こっちへ)舵を切って!」(Port hard mai 'oe i ka hoe)ですから、もしかするとこのひと、結構したたかに相手をあやつってる?……そう、私、ホントウは少々の波でゆれる(刺激?)くらい、へっちゃらだったりするのよ(Mea'ole na* 'ale)なんてことばで、ときにけしかけたりもしながら……。

composed by Lena Machado


*:frigate bird(軍艦鳥)。かつてハワイの海辺に生息していた水鳥で、比喩的には「handsome person」を意味することもある。
**:1930年代から40年代にかけて活躍したシンガーで、コンポーザーとしても多くの楽曲を残した(1903-1974)。
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。