Aloha 'ia 'O Wai'anae

Aloha 'ia 'O Wai'anae





NA PALAPALAI
Live from Kuana's bedroom.....Kuana Torres Kahele and Kehau Tamure of NA PALAPALAI with Leimana Abenes





Paul Robins being a champ and singing this song at Song Contest 2010's Ho'ike.
Chaz, Kameron, and Kody dancing.



 愛すべき場所、その名はWai'anae。
 (Aloha 'ia 'O Wai'anae)
 (そこには)ココナツの木々の木陰(がある)。
 (He malu i ka ulu niu)
 そう、あのだれもが知っているPo*ka'i*のココナツの林……。
 (Ulu niu kaulana o Po*kai*)
 その生い茂るさまが見える風景は、ホントウに美しいのです。
 (He nani ke 'ike aku)

 素朴でシンプルなメロディから、ココナツの木が風にゆらゆら揺れるさまが自ずと目に浮かぶ……そんなゆったりした雰囲気が印象的な『Aloha 'ia 'O Wai'anae』。(私が)愛してやまないと歌われる「Wai'anae」は、オアフ島の西部を南北に走るWai'anae山脈から、海沿いにいたるまでの地域を指す名前です。また、ここでココナツが生い茂っているとされる「Po*ka'i*」は、古代にはheiau*が置かれていた場所でもあるようです。海を渡ってくる風が、この世とは違うもうひとつの世界の気配を運んでくる……そんな場所だったのかもしれません。そしてふと振り返ると、そこにはそびえ立つ山々の姿……次のバースでは,そんな陸側の美しい風景が、山の空気感とともに歌われます。

 荘厳な姿でそびえるKa'alaの峰。
 (Ku* kilakila Ka'ala)
 (それは)気品ある輝きに包まれた山。
 (Kuahiwi kau i ka hano)
 小さな葉を付けるマイレが美しく茂る(その場所には)
 (Uluwehi i ka maile lau li'ili')
 涼しく気持ちのいい香りがただようのです。
 (He 'ala hu'ihu'i e )

 Ka'alaといえば、オアフ島一標高のある山(4,020 feet)。そして、思わず誇らしくながめてしまうその場所には、香りのいいマイレの木が生い茂ってもいる……マイレといえば、古代のハワイのひとびとが祭壇に供え、いまもhulaダンサーが身につける代表的な植物でもあります。それを集めるために山に分け入るときには、祈りを欠くことが許されないような……もしかすると、伝統的なハワイアンの意識のなかでは、Ka'alaの山や森自体が、どこか神的な存在だったのではないかと思ったりもします。

 (さわやかに海からやってくる)Kaia*uluが吹く。
 (Pa*'ana ka makani he Kaia*ulu)
 それは穏やかに(頬を)なでるような風。
 (He aheahe ma*lie)
 ジンジャーの甘い香りが香ってもいる。
 (Pui*a i ke 'ala o ka 'awapuhi)
 うっとりするように香る花……。
 (He pua 'ala onaona)

 Wai'anaeのあるオアフ島の西側が、島の東側に比べて雨が少ないことから考えると、ここで描写されているのも、からっとさわやかに吹き抜けるような風ではないかと想像しています。頬をなでるようにやさしく、「'awapuhi」(ジンジャー)の香りを思い起こさせるような情緒をともなってもいる風……それは、もしかすると、いつだったかの記憶をよみがえらせるものだったりするのでしょうか?

 さあ、いまこそ歌のテーマを繰り返すのです。
 (Ha'ina mai ka puana)
 Wai'anaeこそが私のふるさと。
 ('O Wai'anae ku'u home )
 私たちによって大切にされてきたその場所は
 (Home i aloha 'ia e ma*kou)
 決して忘れえぬものなのです。
 (Home poina 'ole)

 そう、Wai'anaeこそが私のふるさと('O Wai'anae ku'u home )……おそらく、どこもかしこも家族との思い出がいっぱいつまっているような、そんな大切なWai'anaeなんですね。そして、その「home」**は、「私たちによって」(e ma*kou)愛されてきた……ここで、「ma*kou」(語りかける相手を含まない「私たち」)によってと歌われていることが、結構、重要ではないかと思ったりもします。というのも、Wai'anaeへの思いは、ほかのだれでもない、家族(的なひとびと)とともに共有してきたものであることが、この最後の盛り上がりの部分で高らかに歌いあげられていると思うからです。そして、「poina 'ole」(忘れられない)と歌われるのも、その思い出の場所が失われた(あるいは、失われつつある)からではないかと……風景やひとが時とともに移り変わっていくのは、ハワイでも日本でも同じこと。もっとも、この歌が作られたころのWai'anaeにどんな風景が広がっていたのかについては知るよしもないのですが、少なくとも、現在、Po*ka'i*の海辺にココナツの林は存在しないようです。
 Wai'anaeといえば、私自身、数年前にその海沿いをドライブしたことがあります。その時、窓越しにながめる風景に、この歌に描写されているような、温かくhome的なものを重ねようとしたのですが、どうしてもできなかった……というのも、海岸沿いに連なるブルーシートの家々を目にしたからなんですね。そう、ホームレスが存在することも、まぎれもなくハワイの現実……Wai'anaeについていえば、いわば表向きの幻想によって隠されているものが、かろうじて居場所を与えられているような、そんな場所だったりするのかもしれません。そしてこのことは、(裏を返せば)いまでも資本主義にのみ込まれる以前にあったハワイ的な価値観や伝統の痕跡をたどれるような、そんなWai'anaeであることの証ではないか……とも想像しています。

*:「heiau」は、古代のハワイのひとびとが、さまざまな神事を行ったとされる、神殿にあたるような場所。
**:ハワイ語の「home」は英語の「home」由来のことばで、意味的にも英語と同じように用いられます(ただし、発音はローマ字読み)。
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。