Tutu Aloha(by Hi'ikua)

Tutu Aloha


 (ある日)人里はなれた森、その木々が美しく輝く場所(を歩いていて)、
 限りなく深いあなたのalohaのイメージが、ムクムクっと膨らんでいくのを感じたのです。

 愛するTutu、僕の大切なレフアの花(ku'u pua lehua)のようなあなた。
 あなたのalohaこそが、僕をずっと包んでくれている。

 タイトルにある「Tutu」は、おじいちゃん、おばあちゃんに対して親しみを込めて呼ぶときのハワイ語です。ことばの響きがなんとはなしにかわいらしくて、小さな子どもがTutuにまとわりつく様子が思わず目に浮かびますが、そんな甘く幸せに包まれた雰囲気は、この歌にもただよっているように思われます。子どもの頃からずっと、自分のことをいつくしみ、大切に育ててくれたTutu。その大切なあなたの底知れぬaloha(kou aloha palena'ole)への感謝の気持ちがふくらんで、思いがけずことばが紡がれた……『Tutu Aloha』は、そんなふうに生まれた作品のようです。「wao nahelehele」(ひとけのない森)の緑が美しく輝く姿(ka nani uluwehiwehi)が遠い記憶をたどらせたのか、あるいは、時空を超えた啓示がふいに降りてきたのか……体験した本人にしかわからないにせよ、その美しく素朴なメロディは、彼を敬虔な気持ちに導いたその山深い場所の空気感を伝えているように思われます。

 アパパネの歌声が聞こえる。
 それは古代からの英知がそこに宿ることの証。
 レフアのなかに現れるその大切な遺産は、
 大地に根ざすレフアのなかに受け継がれている。

 花の蜜に誘われて、美しい歌声とともにレフアの木に集まってくるアパパネ*……夢のように美しい情景が思い浮かびますが、作者はそこに、古代の偉大なひと(の英知)が宿る場所を重ね合わせたようです。そう、先のバースで「ku'u pua lehua」と呼びかけられていた僕のTutuとともに、祖先から受け継がれてきた大切な伝統は生きている……。

 この歌を、慈しまれてきたその花に捧げます。
 Tutuが歩んできたその人生のなかに、
 伝統を受け継ぐ種たちは芽吹くのです。

 最後のバースでは、この歌を「慈しまれてきたその花」(ka pua i hiipoi 'ia)、つまり、大好きなTutuに捧げますと締めくくりつつ、もうひとつ大切なことが宣言されてもいます。「Kupu a'e na* pulapula」を文字通りに訳すと「種たちは芽吹く」ですが、このpulapula(種、芽)は未来に続いていく子孫をあらわしている、つまり、作者自身も含め、Tutuのあとに続くひとびとによって、Tutuのなかに息づいている過去からの遺産をこれからにつないでいくことが歌われているわけですね**。しかも、それは「i ka meheu Tutu」(Tutuが歩んできた道である)とも表現されます。見通しのきかない山道にも、だれかがかつて踏みしめたであろう痕跡が残されていたんでしょうか……そう、過去を未来につなげる道は、多くのひとびとの歩みによって続いていくものなのです***。
 この歌は、Hi'kuaというハワイの3人組によるアルバム『Aia I Hi'ialo』に収録されているものです。CDの解説によると、彼らのグループ名、およびアルバムのタイトルは、「E hi'ikua mai a...e hi'ialo aku」という、ハワイのいわゆる「’o*lelo no’eau」(ことわざ)****に由来するとのこと。このことばは、たとえば年長者が若い人に向かって「私を背中におぶりなさい(私のやりかたを学びなさい)、そうすれば、あたなはすぐに私を腕の中に抱けるようになるわ(私の持ってる知を自分のものにできるわ)」という意味なんだそうです。う~ん、『Tutu Aloha』に込められたメッセージそのままですね。そして、このアルバム、思いのほか壮大なこころざしのもとに作られているような気がしてきました。太古の昔から連綿と引き継がれてきたハワイのひとびとの英知を、いまに、そして未来につなげていこうとするような……実はまだ聴き込んでいないのですが、宝石のような曲がいっぱいつまっている、そんなアルバムではないかと想像しています。


*:ハワイ固有の鳥の一種(honeycreeper、ミツスイ)
**:ハワイ語の世界では、子孫を「pua」(花)、家族(的なひとびと)のつながりを「’ohana」(タロイモの塊茎の複数形、タロイモがつながりつつ増えていくさま)にたとえるなど、子孫繁栄的なことがらを植物が命をつないでいくアナロジーによって語ることが多いようです。[参考]Pukui MK, Handy ES: The Polynesian Family System in Ka'u. Hawai'i Rutland,
Vermont: Charles E. Tuttle, p198, 1958
***:CDの解説によると、この歌はWai'anae渓谷の裏を歩いていたときに作られたとされています。Wai'anaeといえば、オアフ島で一番高い山、Ka'alaがあることから、結構、山の奥深い場所を歩いていたのではないかと想像しています。
****:文字通りの意味は「英知を伝えることば」。

composed by G.Kalehua Krug
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。