最後のバースでは、この歌を「慈しまれてきたその花」(ka pua i hiipoi 'ia)、つまり、大好きなTutuに捧げますと締めくくりつつ、もうひとつ大切なことが宣言されてもいます。「Kupu a'e na* pulapula」を文字通りに訳すと「種たちは芽吹く」ですが、このpulapula(種、芽)は未来に続いていく子孫をあらわしている、つまり、作者自身も含め、Tutuのあとに続くひとびとによって、Tutuのなかに息づいている過去からの遺産をこれからにつないでいくことが歌われているわけですね**。しかも、それは「i ka meheu Tutu」(Tutuが歩んできた道である)とも表現されます。見通しのきかない山道にも、だれかがかつて踏みしめたであろう痕跡が残されていたんでしょうか……そう、過去を未来につなげる道は、多くのひとびとの歩みによって続いていくものなのです***。 この歌は、Hi'kuaというハワイの3人組によるアルバム『Aia I Hi'ialo』に収録されているものです。CDの解説によると、彼らのグループ名、およびアルバムのタイトルは、「E hi'ikua mai a...e hi'ialo aku」という、ハワイのいわゆる「’o*lelo no’eau」(ことわざ)****に由来するとのこと。このことばは、たとえば年長者が若い人に向かって「私を背中におぶりなさい(私のやりかたを学びなさい)、そうすれば、あたなはすぐに私を腕の中に抱けるようになるわ(私の持ってる知を自分のものにできるわ)」という意味なんだそうです。う~ん、『Tutu Aloha』に込められたメッセージそのままですね。そして、このアルバム、思いのほか壮大なこころざしのもとに作られているような気がしてきました。太古の昔から連綿と引き継がれてきたハワイのひとびとの英知を、いまに、そして未来につなげていこうとするような……実はまだ聴き込んでいないのですが、宝石のような曲がいっぱいつまっている、そんなアルバムではないかと想像しています。
*:ハワイ固有の鳥の一種(honeycreeper、ミツスイ) **:ハワイ語の世界では、子孫を「pua」(花)、家族(的なひとびと)のつながりを「’ohana」(タロイモの塊茎の複数形、タロイモがつながりつつ増えていくさま)にたとえるなど、子孫繁栄的なことがらを植物が命をつないでいくアナロジーによって語ることが多いようです。[参考]Pukui MK, Handy ES: The Polynesian Family System in Ka'u. Hawai'i Rutland, Vermont: Charles E. Tuttle, p198, 1958 ***:CDの解説によると、この歌はWai'anae渓谷の裏を歩いていたときに作られたとされています。Wai'anaeといえば、オアフ島で一番高い山、Ka'alaがあることから、結構、山の奥深い場所を歩いていたのではないかと想像しています。 ****:文字通りの意味は「英知を伝えることば」。
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