Mahina 'O Hoku

Mahina 'O Hoku





Natalie Ai Kamauu with Iolani Kamauu and Chad Ai
(『Aloha Wau Ia 'Oe』と交互に歌われている )


 ねぇ、答えて(どこにいるの)? (私の)14番目のお月さま……。
(‘Auhea wale ‘oe mahina ‘o Hoku)
 さぁ、(いまこそ)あなたのそのキラキラ輝く美しさを見せて(ほしい)。
 (Ho*’ike a’e ‘oe i kou nani)

 まったりとしたメロディにのせて、まるで夢みるように歌われる『Mahina 'O Hoku』。ハワイ語で歌われるラブソングの冒頭によく登場する「'Auhea wale 'oe」ではじまっていますが、呼びかけている「あなた('oe)」が「Hoku」という名のお月さま(mahina)だなんて、いったい、どういう歌なんでしょうか……。
 ハワイのひとびとは、もしかすると、私たちには想像もつかない思いを抱きながら、この満月一歩手前の月を眺めたりするものなのかもしれないのですが、とりあえず、タイトルにもなっている「Mahina 'O Hoku」から、願望が満たされる直前のはやる気持ちをイメージしてみました。まるで、遠足前の小学生みたいに、無限大にふくらむかとも思われる幸せに包まれながら、期待と妄想にも似た思いで胸がはりさけそうになっている、そんな感じ……。

  海ははてしなく穏やかで、山々の峰はちょっとさびしそう(なくらい静まり返っている)。
 (Ua la’i na* kai, mehameha na* pali)
  (そんな世界で)あなたと私、ふたりきりで愛をたしかめあうのです。 
  (‘O ‘oe a 'o au e ho’oipoipo nei)

 静けさに包まれた夜の海、青い月明かりに照らされた山々……そんな、まるで世界が止まったかに思われる風景を背景に、二人が愛し合ういま、ここだけは、むせかえるように熱い……そんな状況を思わせる描写が、まだまだ続きます。

 海風がつれてくる、甘いhi*nanoの花の香り。
 (He moani ke ‘ala o ka pua hi*nano)
 さあ、あなたのalohaで、(いまこそ)私をあなたの愛で包んで……。
 (E apo mai ‘oe me kou aloha)

 あなたの名前、Mahina 'O Hokuをもう一度繰り返す……。
 (Ha’ina kou inoa mahina ‘o Hoku)
 あなたは神的な高貴さをまとった夜の空で、私にその美しさをアピールし続けるのです。
(Ke noho nani maila ma na* lani ki’eki’e)

 「hala」(pandanous)の雄木に咲く花「hi*nano」は、ハワイ語の世界では、その甘い魅惑的な香りとともに、恋人たちだけの特別な時空間を自ずと思い起こさせることばです*。また、「aloha」によって「apo」(円を描く、抱く)と歌われる部分は、男女がお互いの腕を相手にからませひとつになっている……そんな情景を思い起こさせもします。ハワイ語のラブソングによくみられる「lei」(花で編まれた円環)ということばで語られるものと内容は同じではないかと思われますが、ここに登場する表現は、leiのたとえよりも、やや直接的ではないかと思ったりもします。
 そういえば、「14番目の月」というタイトルの楽曲が、ユーミンの初期の作品にありますね。「次の夜から欠ける満月より、14番目の月が好き」と歌われるあれです。人間の欲望は、いま満たされることよりも、いまを超えるものの到来を予感させるものにこそひかれてしまう、そんなものなのかもしれません。


*:halaの木が生い茂って壁のようになり、周囲から隔離されていて(したがって、ひと目をはばからず)、男女が愛し合うことができる……そんな海辺の場所を思い浮かべたりもします。
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。