Ku'u Milimili

Ku'u Milimili






 私のレイ、私の大切なmilimili……。
 恋人の甘くすてきな香りがただよっている。

 Ku`u lei, ku`u milimili e
 Ke `ala onaona o ka ipo
 E moani nei

 タイトルになっている「milimili」を辞書で引くと、「beloved」(愛される対象)から「favorite」(お気に入り)、「pet」「toy」といった、かなり広い意味合いで用いられることばであることがわかります。ここでは「ipo」(恋人)が出てくることから、愛するひとのことだと思われますが、ペットやおもちゃと同じことばが恋人にも使われることに違和感を持たれるかたがあるかもしれません。
 このあたりについては、「milimili」が、対象への愛情だけでなく「mili」(感じる、かわいがる、世話をする)といった直接的な接触を感じさせる動詞から派生したことばであることから理解する必要があるかもしれません。そして、milimiliに含まれるこの皮膚感覚は、この歌の重要な要素のひとつではないかと思ったりもします。たとえば、次のフレーズに含まれる内容なんかが、とくに……。

 あなたの愛を私はいつも強く求めている。
 それ(あなたの愛)を(私の)愛でもってひとつにするそのとき、
 (その関係はいっきに)忘れがたいものになる(ことを夢見て)。

 Ko* aloha ka`u e li`a mau nei
 I hui pu`ia me ke aloha
 Poina `ole

 愛によって「hu'i pu* 'ia」(ひとつにつながる)……この内容を具体的に思い浮かべるために、もうこれ以上のことばはいらないって感じでしょうか。そう、milimili以外には……。

 この気配、(私が)耳を傾けるそのささやきは、
 私のレイが涙するから(に違いない)。
 いとしいあなた……。

 Ka leo ke*ia ua ho`olono ai
 Kulu na* waimaka o ku`u lei
 Ku`u milimili

 「milimili」同様、この歌に多用されている「ku'u」の語感も、歌の雰囲気を感じ取る手がかりになるかもしれません。
 「ku'u」(私の)は、「ko*」(あなたの)と対になることばで、この二つはともにことばそのものが愛し合う関係を語っているという点で、所有を表すほかのことばとは次元の異なる意味を担っているからです*。そう、「ku'u」と呼びかけることが、すなわち「大好きだよ~」という呼びかけでもあるような……ともに喜びをわかちあうmilimiliな関係には、どこか自他をわかつことも困難であるような、あるいはその一体感が永遠に続くことを祈り求めるような、狂気と紙一重の狂おしさがあるのかもしれません。だから、受け止めてしまうんですね。ちょっとした気配に感じたあなたの涙を、まるでわがことのように……そんなぎりぎりのこころのありようが、「Kulu na* waimaka o ku'u lei」の部分に凝縮されているように感じます。
 日本語でもそうですが、歌詞として連なるハワイ語は、文法にならって読むとことば足らずだったり、ぶつぶつ切れている印象を受けることが結構あります。『Ku'u Milimili』にもそんなところが多分にあるため、いつも以上にことばを補って訳してみました。でもホントウは、ことばとことばの間にあるものを感じ取るべきなのかもしれません。ことばにするよりも体で感じる(つまり、milimiliする)ほうが先だったりするような、愛するひとへの思いのせっぱ詰まった感じを、やっとつむぎだされたギリギリのハワイ語表現のなかから聞き届けるために……。

*:「ku’u」と「ko*」が社会的な所有関係を表わすほかのことばと異なる点については、それらがときに反社会的なものでもありうることを考え合わせると、理解しやすいかもしれません。たとえば、配偶者同士はお互いに相手を所有し合う関係にありますが、法的(あるいは社会的)には認められていない間柄で、「ku’u」「ko*」と愛をささやきあうこともある……大人の世界にはいろいろあるものです。

by Bill Aliiloa Lincoln
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。