E Ku'u Tu*tu*

E Ku'u Tu*tu*





IZUMI,Ryuji Maki & Shigehiko Ikari performed Hawai`ian songs @ Enoshima Aloha Sunset 2009,Japan.





May 22, 2011 at University of Hawaii at Manoa, Orvis Auditorium.50th Annual Spring Concert: Ku'u Tutu performed by Angeli



 大好きなtu*tu*。
 だってとってもやさしいんだもん。
 Tu*tu*が呼ぶ温かい声が、いつも聞こえてくるの。

 Aloha au i ku'u tu*tu* la*
 I ka nui lokomaika'i
 E lohe mau 'ia ana la*
 Kona leo heahea

 「Tu*tu*」は、祖父母世代に対して親しみを込めて呼ぶときのハワイ語で*、タイトルの『E Ku'u Tu*tu*』は、「おじいちゃ~ん」「おばあちゃ~ん」みたいな感じで呼びかけるときの言い方です。あるいは、「おばあちゃんへ」みたいな書き出して、小さな子どもが一所懸命手紙を書いているようなイメージもあります。いずれにしても、大好きなtu*tu*のことをだれかに聞いてもらいたくて仕方がない、そんな感じでしょうか……。
 というわけで、このあとtu*tu*のことが具体的に語られていきます。

 コットンのエレガントなholoku*スタイルのワンピース、そして大きな袖。
 シルクのハンカチーフをレイみたいに首に巻いたりとかして……。
 そう、tu*tu*はいつもとってもおしゃれなの。

 'O ka holoku* kalakoa la*
 Ka mu'umu'u lima nui
 Ka hainaka* lei kilika la*
 'O kona wehi mau ia

 「holoku*」は、すそが引きずるくらいに長いスタイルのワンピースの名称です。型紙をもとに作られることから体にフィットすることもその特徴で、もとをたどれば、宣教師とともに西洋からやってきた女性たちが、ハワイに持ち込んだものだったようです。そんなことを考えあわせると、なんだか流行の最先端をいくtu*tu*像が浮かび上がってくるように思います。「lima nui(大きな袖)」と歌われる当時の流行だったパフスリーブも、下からtu*tu*を見上げる小さな子どもにはひときわ大きく見えたのかもしれません……。

 キルトを縫ったり、帽子を編んだり、香りのいいお花をレイにしたり……。
 Tu*tu*はそういうことが好きなひとなの。

 Tu*tu*の部屋には大きなロッキングチェアーがあって、ゆらゆら揺れてるの。
 それは、Tu*tu*の大切な孫たちがそこで遊んでいるから……。

 'O ka humu kapa pohopoho la*
 Ka ulana i ka pa*pale
 'O ke kui lei pua 'ala la*
 A 'oia kona makemake

 Aia ma kona lumi la*
 He noho paipai nui
 He mea ho'oluliluli la*
 I ka*na lei mo'opuna

 縫い物をしたり、レイを編んだりと、いつも忙しそうに手を動かしているtu*tu*の姿が目に浮かぶようですね。一方、小さな子どもたちは、そんなtu*tu*を羨望のまなざしで見つめたりするのかもしれません。Tu*tu*はすごいなぁ、いつかは私も、みたいな感じで……もしかすると、ハワイの伝統的な手仕事は、そんなふうに次世代に伝えられてきたのかもしれません。
 もっとも、子ども目線で訳せるのはここまでで、ロッキングチェアーの部分は、tu*tu*のいる空間をやや遠目にながめているような印象があります。そして、思うんですね。ここまで語られてきた光景は、すべて記憶のなかのtu*tu*をたどったものだったのではないかと……というか、そんなふうに思いめぐらせることで、夢のようにゆれるロッキングチェアーや、そこに腰掛けてやさしくほほえむtu*tu*の姿は、そこにかつてあったあたたかい空気感とともに、ありありとよみがえってくるものなのだと思います。そう、おそらく、自分が子どもを持つような年齢になっても……。

 さあ、歌のテーマをもう一度。
 この歌を大好きなtu*tu*に捧げます。
 Tu*tu*が呼ぶ温かい声が、いつも聞こえてくる……。

 Ha'ina mai ka puana la*
 No ku'u tu*tu* aloha
 E lohe mau 'ia anala*
 Kona leo heahea

 「leo heahea」(温かい呼び声)は、「hea」(call、呼ぶ)が重ねられることで、その呼びかけがなんども繰り返されるニュアンスもあります。孫たちのことが気になって仕方ないtu*tu*が、なんだかんだと世話をやきたがる微笑ましい様子が目に浮かぶ、そんな歌詞だと思います。
 こんなふうに、tu*tu*をとりまく空間が、どこまでもふんわりと温かく描かれる『E Ku'u Tu*tu*』。核家族化が進む日本では、だんだん見られなくなっている光景かもしれませんが、子どもたちに祖父母世代だからこそ伝えられる大切なこともあるに違いないと思うと、ちょっと残念な気もします。古きよき時代は、失われたものでしかないのかもしれませんが-そんなことをあらためて考えさせられた、『E Ku'u Tu*tu*』なのでした**。

*:性別を問わず用いられるこばであることから、「おじいちゃん」「おばあちゃん」のいずれかであることは文脈から判断する必要がありますが、ここではハワイ語のニュアンスを残すために「tu*tu*」にしてみました。「tu*tu*」に限らず、兄弟、姉妹、親戚縁者を表わすハワイ語は、まずは世代を明らかにすることばとして存在することから、それ自身は性別の意味を含まないことが多いようです。
**:ハワイでは、伝統的な風習として、子どもたちが教育のために祖父母世代に近いところで育てられることが意識的に行われてきたようです。
 
参考文献
Pukui MK et al: Nana I Ke Kumu (Look to the Source) Vol. 2, Honolulu, The Queen Lili'uokalani Children's Center, p36, 1972


comosed by Marry Kawena Pukui & Maddy Lam(1955)
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。