E ho'i i ka pili E ku'u ipo E nene'e mai, e nanea mai E ke aloha E ho'onipo ka*ua
両腕を大きく開き、こっちへおいでと誘う誰かの満面の笑みがイメージされる『E Ho'i I Ka Pili』。ふたりして「ka pili」*になる感じを出したくて、ためしに「ギュッ」と訳してみました。それにしても、ひととひとの距離って不思議ですね。視界に入ってくるだけでイライラするひとがいる一方で、これ以上近づけないところまで近づきたいひともいたりする……これって、理屈では測れない動物的な感覚なのかもしれませんね。そんな、恋人同士だけにゆるされる動きというか仕草が、さらっと、でもとびきりおしゃれに表現されているのが、「E nene'e mai, e nanea mai」。熱いはずなのにクールに韻を踏んでいるあたりにグッときます。
Ka nehe a ke kai O Kahakuloa Kai ko'o ha*ku'i,pi'i i ka pali E ke aloha Pulupe* iho ka*ua
ざわめく海、ふくれあがる波、そして、絶え間なく舞い上がる水しぶき……嵐を思わせるこれらの表現は、おそらく、ふたりだけの世界に没頭する恋人たちの、喜びと痛みが紙一重であるような、ぎりぎりの表現ではないかと思います。身もこころも大きく揺さぶられながら、この私も含めて世界がどんどん輪郭を失っていくときの……。 一方、この海の描写に続く「pulupe*」には、「びしょぬれになる(drenched)」「水浸しになる(soaked)」といった意味があります。日本語や英語の語感のままだと、なんだか悲惨な印象しかありませんが、恋人たちの喜びが最高潮に達しているであろうことを思うとなんだかしっくりこない……というわけで、ここは思い切って、ハワイ語の世界にある豊かな海のイメージを思い起こしてみました。そう、ハワイの創世神話『Kumulipo』に登場する、闇(po*)とイコールであるような「はじまりの海」を―生命はもちろんのこと、この世界さえそこからはじまったと語られるpo*の世界は、その営みでもって命を未来へつないでいく恋人たちにこそふさわしいのではないかと思う……そんなこんなで、赤裸々な愛の行為のなかに、深い生命の記憶がみえてくるようにも思われた、『E Ho'i I Ka Pili』なのでした。
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