He mai no ka lani, ha’u ha’u e No Kaho*’anoku*, ha’u ha’u e
「ha'u ha'u」の繰り返しが印象的な『He Ma'i No Ka Lani』。この歌は、タイトルにもあるように「he mele ma'i」と呼ばれるもので、ずばり、王の「ma'i」(生殖器)を讃えています*。そう、王族の血筋が未来永劫続くことを祈りつつ、われらが王の偉大な「それ」について、公の場で声高らかに歌われるmele ma'i……日本ではちょっと考えられないことですが、ハワイでは古代から受け継がれてきたoli(朗詠)における重要なテーマのひとつだったりします。それにしても、そのものずばりを歌うなんて……と思ってしまいますが、日本語でも「ことだま(言霊)」といわれるように、そのものが実際にどうかということよりも、それについて積極的にことばにしていくこと自体が重要なのかもしれません*。
Ka pai na* ‘olo, ha’u ha’u e Na* ‘olo o ke kuhi, ha’u ha’u e
ここでは、王の「ma'i」の動きが表現されているのではないかと思われます。だとすると、繰り返し歌われる「ha'u ha'u」が、まさに王のそれがムクムクっと立ち上がってくる感じではないかと……**。ちなみに、「'olo」は「睾丸」を意味するハワイ語だったりするのですが、それが「踊っている(o ke kuhi)」と形容されるなんてすごすぎる……というか、そういいたくなるような勢いで続けられるわけですね。そう、「ha'u ha'u」という動作が……。
Ha’ina kou ma’i, ha’u ha’u e Ma’i nui o ka lani, ha’u ha’u e
この歌に表現されている「ma'i」の持ち主である王、「Kaho'anoku*」は、カメハメハ王直系の人物のようです。彼にまつわる具体的なエピソードが見つかれば、歌のイメージをもっとふくらませることができるかも……と思って調べてみたのですが、残念ながら、彼のひととなりがうかがえる記述は、文献にもみつかりませんでした***。もっとも、王族の血筋を伝え守るものとして「ka lani」****と呼ばれた彼は、おそらく、彼個人としての人生を歩む以前に、王として生きることを運命づけられていたわけで、観念的にはひとではなく神的なものとして存在していたのではないかと思われます*****。だとすると、彼の「ma'i」を語るmele、あるいはそのもとになったoliを構成することばは、相当、吟味したうえで慎重に選ばれているはずだと思う……そのあたりを感じ取るために、まずは私たちのなかにある思いこみや常識をリセットする必要があるかもしれませんね。ことばで言うほど簡単ではありませんが……。そんなことを思いながら、歌詞のエキセントリックな印象についまどわされてしまう自分を反省させられた、『He Ma'i No Ka Lani』なのでした。
参考文献 1)Kamakau SM: Ruling chiefs of Hawaii. Honolulu, Kamehameha Schools press, 1992, p127 2)Pukui MK et al: Nana I Ke Kumu (Look to the Source) Vo2. 1, Honolulu, The Queen Lili'uokalani Children's Center, 1979, pp84-87
コメント
tikiroa
しかし、動画、すごいです。
2013/07/09 URL 編集
隙間のりりー
先日はリクエストありがとうございました。
コンテンポラリーにアレンジされてる時点で,神聖な意味はずいぶん薄れているのかもしれませんが,もともとどういう思いで歌われたものだったのかを考えると,ハワイの精神的な文化を知るうえで重要な歌なのだと思います。
それにしても,この動画,すごいですよね。。。。載せるかどうか迷いました(笑)。
2013/07/09 URL 編集