Mokihana Lullaby

Mokihana Lullaby






Kuana Torres Kahele and Kehau Tamure of Na Palapalai with Mark Yamanaka
sing Mokihana Lullaby at a rehearsal for the 2009 Studio Saki Christmas
Concert



 その美しさに包まれて、誇らしく気高さをたたえている。
 この島の宝、真に美しいその姿……。
 そう、それがmokihanaの花なのです。
 深呼吸すると、からだ中があまい香りで満たされるような……。

 Haʻaheo i ka nani
 A he nani maoli nō
 He pua mokihana
 ʻAʻala onaona ia hanu

 美しさに包まれて(i ka nani)、誇らしく気高さをたたえている(ha'aheo)その花は、この島の宝といってもいい美しさをたたえている(he nani maoli no*)*……こんなふうに、ことばの限りを尽くしてmokihanaの美しさを歌いあげている『Mokihana Lullaby』。「pua mokihana」と歌われていることから「花」と訳していますが、歌われているのは、leiの素材としてもよく用いられるmokihanaの実のようです**。「'A'ala onaona ia hanu」というフレーズから、近づいて深呼吸するだけでからだ全体がその香りで満たされる、そんな存在感に満ちあふれたmokihanaが想像されます。

 その花はmaile lauli'ili'iとともに編まれるもの。
 まるでalohaが寄り添うような姿で……。
 そう、忘れ得ない愛(の記憶)とともに。

 He pua haku ʻia
 Me ka maile lauliʻiliʻi
 Wili ʻia me ke aloha
 Me ke aloha poina ʻole

 ここに歌われるように、mokihanaは小さめの葉をつける種類の「maile lauli'i(li'i)」と組み合わせてleiに用いられることが多いようです。そういえば、Maileが別の花と組み合わされたりからまったりする様子は、愛を象徴するものとしてハワイアンソングによく登場するモチーフだったりもします***。そして、ここでも「愛とともに編まれる」(me ke aloha)とされますが、愛といってもいったいどんな種類の愛なんだろう……このあたりのイメージをふくらませるために、hui(繰り返し)の部分を読み進めてみたいと思います。

 思い起こすと感謝の気持ちでいっぱいになる。
 私がともに歩んできたその土地への思いに圧倒されて……。
 愛にあふれる島、それはKaua'i。
 Kalanipo*の名で知られる島(のなにもかもが愛しく思えるのです)。

 Mahalo nō iā ʻoe
 Iā ʻoe e kuʻu hoa aloha
 Aloha nō ʻo Kauaʻi
 Kauaʻi o Kalanipō.

 ここでは、「'oe」(あなた)と呼びかけながら、それへの感謝の気持ちが歌われているわけですが、その対象は、作者が(おそらく)そこで生まれ、その命を育んでくれたKaua'i島であるとされます。「'oe」という人称代名詞はともかく、島が「ku'u hoa aloha」(愛すべきパートナー)だなんて、日本語の感覚からするとやや奇妙に思えますが、島というよりも、生活をともにしてきた島のあらゆる生き物たち、あるいは島の生態系をまるごと包み込む環境そのものがイメージされているのではないかと思ったりします。このあたりの感覚については、ハワイ語で土地を意味する「'a*ina」が、「'ai-na」(食べるもの/こと)****、つまり、食べるという行為の舞台が'a*inaにほかならないことを考えあわせると、さらに理解が深まるでしょうか……そう、この私をmahaloの気持ちでいっぱいにさせるのは、私の命もその一部分であるところの、Kaua'i島の自然そのものなのです。
 ここにやや唐突な印象で登場する「Kalanipo」は、ハワイの島々が島ごとに力のある指導者によって治められていたころに活躍し、Kaua'i島で名を残した王の名前です。なかば慣用句的に詩的な表現として用いられることばですが、ハワイの島々が王国として統一される以前に、島ごとの独自性を保ちつつ文化を育んでいたころをイメージさせることばであることは、心にとどめておくべきかもしれません。

 この歌を、私の思いが編まれたleiに捧げます。
 深呼吸すると、からだ中をあまい香りで満たしてくれる、
 そんなMokihanaのために……。

 Puana ʻia mai
 No kuʻu lei aloha.
 He pua mokihana
 ʻAʻala onaona ia hanu

 Leiを編むことは、花や葉を編み込みながら思いを形にしていくことでもある……そう考えると、ここでこの歌を捧げると歌われている「ku'u lei aloha」は、作者自身の思いそのものでもあるといえそうです。一方、ただただMokihanaとそれが象徴するKaua'i島のことだけが歌われているこの歌は、まるで歌そのものがmokihanaのleiのようでもあります。Mokihanaのleiによって喚起される感情や、mokihanaのleiを編むことでしか表現できない土地への思いがあるのかもしれませんね*****。あるいは、まるでその島の子どもとして生まれそこに暮らしてきた者にとっては、なによりも親のような存在であるKaua'i島なのかもしれません。揺りかごのなかで耳にした、あの子守唄に包まれた記憶そのものでもあるような……『Mokihana Lullaby』の、どこか夢見心地でしあわせに包まれた雰囲気は、このあたりからくるのではないかと想像しています。

*:「本物の」「真の」と訳されることが多い「maoli」ですが、元々の意味が「native」(土地に固有の、その土地で生まれた)であることから、「この島の宝」という訳をつけてみました。
**:Mokihanaの実は小さめのビー玉大で、青梅のような色をしています。香りはaniseed(アニス、香辛料の一種)に近く、八角にも似た強い芳香を放つようです。古代のハワイのひとびとは、その実を染色に用いたとされています。
***:「Pua Tuberose」「Pua 'ahihi」など。
****:「'ai」は「eat」(食べる)、「na」は名詞化する語尾。
*****:ハワイの各島の植生が外来種の台頭によって大きく変化してきた状況を考えると、Kaua'i島の固有種であるMokihanaは、島のひとびとにとっては特別な思いを抱かせる存在なのかもしれません。

参考文献
Marie A McDonald, Paul R: Na Lei Makamae-The Treasured Lei. Honolulu, University of Hawaii Press, p94, 2003

Composed by Louis Kauakahi & Loyal Garner
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。