Ka Nae Pakalana

Ka Nae Pakalana





LIVE from SFJAZZ Center in San Francisco,
Kuana Torres Kahele performing his original song,
KA NAE PAKALANA





Halau Hula Na Meakanu O Laka O Hawaii performing Ka Nae Pakalana choreographed by Kumu Hula Rolanda Valentin Reese at the Na Palapalai concert June 26, 2010 at the Redondo Beach



 Waimanu……それは、さわやかな霧雨に包まれた山深いところ。
 うっそうと茂る森とともにあるその場所には、切り立った峰から道が続いている。

 なめらかに流れるようなつる、
 そして、深い香りをともなうわたしの大切な花が(そこに)……。
 それは、香り高きpakalanaの花。

 Pakalanaの花々が連なって、いままさに美しく花開く。
 深い霧に守られながら、(ふいに差し込む)陽の光とともに。
 
 Aia i Waimanu i sa noe 'olu
 Ka meheu laumania e iho nei
 I ka ma'ukele

 'O*lali a'e na* lau 'a*hihi
 Ku'u pua po* i ke 'ala
 Ka nae pakalana

 Mo*hala mai na* pua lei pakalana
 Pu*lamahia e ka uhiwai
 Me kukunaokala*

 霧に包まれた山の風景描写から、緑深い森の香りがただよってくるようにも思われる『Ka Nae Pakalana』。作者であるKuanaさんの、その場所に対する特別な思い入れが自ずと想像されますが、ハワイ島北部の渓谷地帯にあるWaimanuは、彼にとっては母方の先祖にゆかりのある場所として、尽きることのないインスピレーションを与えてくれる場所であるようです*。このことから想像を膨らませてみると、切り立った峰から下ってくる(e iho nei)道は、ひとを自らのルーツへと思い至らせる記憶の道のようにも思えてきます。もっといえば、ともに歌われているpakalanaの花の連なりは、Waimanuの土地に育まれた子孫たちの姿であるのかもしれません……。 
 
 いつもふとした瞬間によみがえるのは、(祖母)Kelohilaniにまつわる記憶。
 そう、香りのいい花のleiをギュッ、ギュッと編んでいたなぁと……。
 (不思議なことに)その香りは、
 (いまも)ずっと続いているように思い起こされるのです。

 (母)Hali'alaulaniは、つるを伸ばす(ように愛にあふれる存在)。
 まるで気高くそびえる森の中で、
 香る花の連なりに(命の)水を与えてきたようなひとなのです。

 'Upu a'e ka mana'o ia* Kelohilani
 Hilo pa'a 'ia i ka lei 'a'ala
 'A'ala mau loa

 Pa*hihi mai `o Hali'alaulani
 Ha*inu i na* pua lei onaona
 I ka ma*ulukua

 ここでは、祖母、母の名前とともに、それぞれへの思いが語られています。まず、おばあちゃん(Kelohilani)といえば、leiを編む姿……それが繰り返し思い起こされる(’upu a'e ka mana'o)わけですから、その光景がよほど印象的だったに違いありません。Kuanaさんのコメントによると、彼にとっておばあちゃんは育ての親であり、人生における指針を与え続けてくれる存在でもあるようです**。このことから考えると、単にleiを編むことだけではなく、祖父母の世代が担うハワイ文化の継承と、それを受け継ごうとしてきたKuwanaさんの学びのプロセスやおばあちゃんとのつながりが、leiの連なりに象徴されているのではないかと思ったりします。一方、お母さん(Hali'alaulani)については、つるを伸ばす植物のアナロジーによって、花々(子どもたち、子孫)へと命をつなぐ存在として語られています。それぞれに表現は異なりますが、過去を未来へつなぐという意味では共通しているかもしれません。
 
 Koauka、Na'alapa、そしてKeone(へのこの思い)。
 (植物の繊維が)凝縮されたkapaのように、
 いろんな思いがつまったWaipi'oのことや、
 楽しかったNa*po'opo'oの思い出やら……。

 ここまで歌ってきたWaipi'oのことは、もうこころに響いたことと思う。
 深い香りに包まれた、いとしいleiのようにつらなるこの思いを、kapalanaの香りにのせて……。

 'O Koauka, Na'alapa me Keone
 Ke kapa ulupo* 'o Waipi'o
 Luana 'o Na*po'opo'o

 Puana i ka wehi no Waipi'o
 Ku'u lei po* i ke 'ala
 Ka nae pakalana

 このバースには、ハワイ島の地名がいくつも登場します。まず、「Koauka」「Na'alapa」「Keone」と三つ連なっているのは、Waimanuと同じくWaipi'oにある地名です。また、これらに続く「Ke kapa ulupo* ‘o Waipi’o 」を直訳すると、「Waipi’oは(繊維が)密にからんだkapaである」となりますが、染色されたkapa美しさやそれを作る工程を思い浮かべながら、「Waipi’oでの思いがつまった」と訳してみました。Waukeなどの樹皮をたたいてならし、さらに樹皮を重ねてはたたく作業を延々と繰り返すkapa makingの作業……非常な忍耐力を要すると思われますが、境目を失った樹皮の一枚一枚が、Waipi’oで営まれた日々そのもののようでもあり、美しい一枚の織物のように大切で、Kuwanaさんにとってはこの上なくいとおしいものであるに違いない、なんてことを想像しながら……。
 ひとつ心残りなのは、最後にあがっているNa*po'opo'oとKuwanaさんとの関係がわからないこと。Na*po'opo'oはハワイ島の西側、Konaにある海辺の町なのですが、故郷とは違った意味で思い出深い場所なのかもしれない、いや、もしかすると土地の名前ではないのかもしれない……といったあたりの手掛かりを見つけることができませんでした。というか、よくよく考えてみたら、なぜpapalanaの花が選ばれて歌われることになったのかも、歌詞を読む限りではわからない……***。こんなふうに、きわめて個人的な思いが歌われている場合、ホントウのところは作った本人か、よほど近いところにいる人にしかわからない内容を含んでいることがあるのも、コンテンポラリーなハワイアンソングの特徴なのかもしれません****。

Composed by Kuana Torres Kahele

*:Kuanaさんはほかにも『Waimanu I Ka Lauoha』というWaimanuをテーマとする歌を作っており、その歌が収められたアルバム『KAUNALOA』に、「Waimanuはハワイのなかでも最も息をのむような(breathtakig)場所のひとつ」と記しています。また、Waimanuのロケーションを調べてみると、「Ka mehau laumania」(険しい山道)を「e iho nei」(下ったところ)とあるように、Waipi'o渓谷の険しい坂を下ったところにあり、現在でも車で行けるようなところではないようです。
**:アルバム『KAUNALOA』より。
***:Papalanaは、インドからベトナムあたりが原産地とされる植物で、「chinese violet」、中国語で「夜来香」(イェライシャン)とも呼ばれる植物です。その花は、強くてあまい、レモンのような柑橘系の香りを放ち、次第に緑色から黄色に変わることや、その葉がハート形をしていることが特徴とされるようです。
****:そのあたり、ときを隔てている難しさはありますが、トラディショナルとして歌い継がれてきた作品、あるいは神話や伝説を題材にした歌は、ひとびとの思いが積み重なる過程でだれのものでもないメッセージになっていることも多く、逆にアプローチしやすいこともあるように思ったりします。
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。