Aloha Ku'u Home A I Ke'alohi

Aloha Ku'u Home A I Ke'alohi





Ho'ike Vol.5 / 20th September, 2009
Kuhai Halau O Kapuokanaupaka Pa Olapa Kahiko


 Ke'alohiにある私の愛すべきふるさと。
 先祖たちによって大切に守られてきた土地。
 そこでの暮らしはおだやかそのもの。
 そう、Ko'olauの山々にいだかれながら……。

 Aloha ku‘u home a i Ke‘alohi
 Ka ‘a*ina i hi'ipoi 'ia e na* ku*puna
 Ua la'i ka nohona a o ku'u home
 I ka malu o nä pali o ke Ko'olau

 O'ahu島の東側、Ka*ne'ohe湾にはり出した小さな半島、「Ke'alohi」。Ka*ne'oheの中心部から車で10分ほどのところにあり、地図でみると、海岸づたいに細く平らに広がるHe'e'iaの向こう側に、ほどよい距離でKo'olau山脈が連なっています。現在は「He'e'ia State Park」として公的な組織によってその自然環境が守られ、地域のコミュニティのための場として機能してもいる、そんな場所のようです。
 Ka*ne'oheをはじめO'ahu島の東側には、魚たちが繁殖する豊かな海があり、かつてはfish Pond(養魚場)が連なるなど漁業がさかんな地域でした。欧米資本の台頭とともにかつてのハワイアンたちのくらしが失われ、ハワイ各地が開発の波にのみ込まれていくなか、そんな漁場も姿を消していったわけですが、Ke'alohiのfish Pondは、He'e'iaを守るべく活動を続けてきたNPO組織(Friends of He'e'ia)によって守られてきたようです。海と山と、そのすべてを包む青い空……そんな美しい環境もさることながら、その場所で営まれていた古代のハワイのひとびとの暮らしの、せめて痕跡だけでも残したい―そんな思いをかりたてるなにかが、He'e'iaという場所にはあるのではないかと想像しています。

 Kalimuloaには、'ama'amaやkuhonuが砂まじりの海で泳いでる。
 Hoiのkaloもどんどん増えて、
 Pu*'o*lenaの水耕地は豊かに実るのです。

 Aia i Kalimuloa ka i'a 'ama'ama
 A me ke kühonu au 'ukele kai
 Ma*huahua ka 'ai o Hoi
 Ua lupalupa i ka wai o Pu*‘o*lena

 「'ama'ama」の魚や「kuhonu」(カニの一種)が住まう静かな浅瀬「Kalimuloa」。そこに至る低地にある「Hoi」には、kalo(タロ芋)の畑が豊かに実っている……なんとなく、のどかで静かな、自然とともに生きるひとびとの姿が目に浮かぶフレーズです。かつてはそんな暮らしがあったKe'alohiへの作者の思いは、これに続くフレーズで、さらに違った角度から語られていきます。

 Ma'eli'eliの声が聞こえる。
 この土地に眠る先祖、家も、poiも魚も、みんなわれわれのものだと。
 私には、そこに(あるべき姿が)みえるのです。
 Hawai'iloaの目を見張るような美しさ(とともに)。

 Hea aku o Ma*'eli'eli he kupa o ka 'a*ina
 He hale, he 'ai, he i'a no ka*kou
 I laila au i 'ike aku ai
 Ka nani kamaha'o o Häwai'iloa

 「Ma'eli'eli」は、Ke'alohiにほど近い場所にある小さな山。「Hawai'iloa」はその対岸にあるMo*kapu半島にある小山です。ずっと昔からそこにあり、Ke'alohiを昔もいまも見守ってきたそれら自然の風景は、その土地の守り神的な存在として意識されているのかもしれませんね。そして、その土地の精霊が、先祖や家、poi、そして魚も、みんなわれわれのものだと訴えている、そう、私にはその土地のあるべき姿が、見えるのです(~au i 'ike aku ai)と続くあたりは、自然が訴える声であると同時に、作者のこころの叫びであるとも言えそうです。

 思い出すたびに涙がこぼれる。
 忘れ得ない先祖たちにまつわる記憶(を、あの日、祖母から聞いたときのことを)。
 さぁ、呼びかけよう、Komomuaよ答えておくれと。
 Ko'amokumokuとも呼ばれるHe'e'iaに向けて……。

 Ha*nini ku'u waimaka i ka ho'ohali'a
 Po*ina 'ole ka ha*'upu o na* ku*puna
 Hea aku ma*kou e o* mai e Komomua
 E ke Ko'amokumoku a o He'e'ia

 この歌の作者であるHewitt氏は、子どものころ、病にふせって瀕死の状態にあった祖母から、Ke'alohiにまつわる話を聞いたようです。そんなおばあちゃんの思い出とともに思い起こされるものとして、Ke'alohiの過去、現在が歌われるとともに、それが本来あるべき姿を取り戻すことを願う未来へのメッセージも込められているように思われます。そして、そんないわばハワイアンとして生きる道しるべを求めようとするときに、なによりも「Komomua」(先人たち)に教えを請おうとするわけですね。この敬虔な態度に、大地と自然に根ざした伝統を重んじる、ハワイ文化の真髄をみる思いがします。

 (hui)
 Hauの花の美しさに飾られたすばらしいところ。
 Malulaniの水しぶきにぬれて(輝くその土地こそが)
 私が生をうけた場所なのです。

 Lei ana ka 'a*ina i ka nani pua hau
 Pulu pe* i ka 'ehukai o Malulani
 Ku'u 'a*ina ha*nau

 He'e'iaのMalulaniには小さな小山が点在しており、洪水が起こるなど水位が上昇すると、それらが尖った島々にみえるところから、He'e'iaといえばKo'amokumoku(「mokumoku」、切り立った)(「ko'a」、さんご礁)と呼ばれてきたようです。ときに変貌する風景に驚きながら、自然のあるがままをいつくしんできた、そんな海辺の暮らしが想像される地名だと思います。
 ここにいたって、少し迷うことがあります。ふつうは「私の生まれた場所(ふるさと)」といった訳がつけられるであろう「ku'u 'a*ina ha*nau」ですが、この歌に限って言えば、そこで先祖の暮らしが営まれていたことが重要で、必ずしも生まれ育った場所ではないようにも思われるからです。
 He'e'iaは、実は私にとっても思い出深い場所だったりします。この歌の作者であるKawaikapuokalani Hewitt氏のハラウに所属していた数年間、毎年8月に行われていたho*’ike(発表会)のリハーサル&セレモニーで訪れたのが、He'e'ia State Parkだったからです。旅行者の目には、緑豊かな環境が限りなく自然のままに残されているように思われたHe'e'iaだったのですが、州立公園になっているという時点で、もうひとびとの暮らしとともにある場所ではなくなっているんですね。そして、そこから一望できるKa*ne'ohe湾は、アメリカ海兵隊の船が行き来する場所でもあった……思えばあのとき、失われた多くのものの存在抜きには語れない、負の部分をいっぱい抱えたハワイに出合っていたのだと、いまさらながらに思い起こされます。
 自らが先祖とのつながりのなかで生かされていることへの意識とともに、命の源が大地にあることが強烈に感じられてもいる、そんな『Aloha Ku'u Home A I Ke'alohi』。淡々と連なるメロディのなかに込められたその熱く切実なメッセージは、先祖にルーツのある土地と引き離されて生きる、多くのハワイのひとびとのこころの声でもあるのかもしれません。

 

参考文献
Elspeth P Sterling, Catherine C Summers: Sites of Oahu. Honolulu, Bishop Museum Press, 1978

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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。