Pili O Ke Ao

Pili O Ke Ao





Musical performance and hula for "Pili o ke Ao" at Kupaoa's virtual CD release
party for their album, "Pili o ke Ao". The party was hosted at the Honolulu Club
on Friday, December 12th, 2008.


 一番鶏の声(が高らかに聞こえるいまこのときを)。
 私たち二人、天にまたたく金星の輝きとともに(迎えるのです)。
 Wai'auiaでは、なすことすべてがすばらしい。
 Ahikiの峰に面している名高いその水辺(の暮らしとか……)。

 'O ke kani mai a ka moa kuakahi
 Eia ka*ua me Ho*ku*loa i ka 'iu
 'Iu'iu na* hana i Wai'auia
 Wai kaulana i ka alo o Ahiki

 白み始めた明け方の空に、一番鶏の声が晴れやかに響きわたると同時に訪れる世界の目覚め……そんな、ありとあらゆるものが輝きはじめる一瞬に訪れるさわやかな空気感とともに、空間をみたす神々しい光が凝縮されているように思われる『Pili O Ke Ao』。新しい一日のはじまりのときのはやる気持ちをともにする(おそらくパートナー同士の)二人が、明け方の星のまたたきをながめながら、手に手を取って気持ちを新たにしているような雰囲気もあります。そして、なによりも、聞いているだけでムクムクと心が高揚してくる、そんな不思議なパワーに満ち溢れている歌だと思います。
 1番に登場する「Ahiki」がみえることから考えると、ここに描かれている風景は、'Oahu島の南東に位置する峰、Nu'uanu PaliからみたKailua地域であると思われます。そして、Nu'uanu Paliといえば、風下にあたるKona地域と、風上側にあるKailua地域を隔てる山脈、「Ko'olau Poko」に含まれる山でもあります。ということは、気候も風景も変わる境目に位置するのが、このNu'uanu Paliということになりますね。だとすると、異質な空間がせめぎあい、そこに立つひとの気持ちをわき立たせもするような場所だったりするのかも……。はじまりのときを感じるのにふさわし場所として選ばれたことから、たんに眺めがいいだけではないと思われるその場所は、海を渡ってきた風が吹き抜ける通り道でもあったりするのでは……と想像しています。
 そんなNu'uanu Paliは、比較的標高が低めであることから、昔もいまも山越えのルートになっているところです。そして、おそらくそんな地形のためでしょうか、この場所は、18世紀末にKamehamha一世が'Oahu島に侵攻したときの激戦地となり、多くの戦死者が骨をうずめたところでもあります。
 そんな歴史に由来する地名は、この歌のなかにもさらりと登場します。
 
 いつしか私はLele'anaeに至り、Holokea*holeの美しさを目にする。
 そして、(大地が)ふるえる様子を目の当たりにするのです。
 それは'iwa'iwaのシダの葉にしたたる水(のようでもあって……)。

 A hiki au i Lele'anae
 'Ike i ka nani o Holokea*hole
 Aia 'o ka nei ma mua pono
 'O ia wai i ke oho o ka 'iwa'iwa

 ここに歌われているLele'anae(文字通りの意味は「anaeのジャンプ」)は、追いつめられて逃げ場を失った'Oahu軍の兵士が、Nu'uanu Paliの崖から飛び降りる様子を、飛び跳ねる魚にたとえたもののようです*。多くの血が流された悲劇はともかくとしても、この地名に感じる一寸先もない瀬戸際感は、その場所が、どこかもうひとつの世界につながっている境目を感じさせることにも由来するのではないかと思ったりします。
 また、「Eia ka*ua~」(here we are~)と二人して世界を眺めていた1番とは異なり、「hiki au i~」(私は~に到着する)と歌われる2番の歌詞には、どこかひとりで世界と向き合っているような印象があります。もしかすると、実際にその場に身を置いているというよりも、そこに広がっているであろう風景をこころのなかで思い描いているのかもしれません。その一方で、「Aia 'o ka nei ma mua pono」の部分には、目覚めはじめた世界と向き合い(ma mua pono)、そこかしこから聞こえるざわめき(ka nei)、あるいは大地の鼓動を全身で感じ取っている雰囲気もあります。というか、日々、朝を迎えるたびに思い起こされる、そんなNu'uanuの記憶があるのかもしれません。

 (hui)
 そして、私たち二人、あたらしい一日のはじまりを迎えるのです。
 愛する気持ちにかき立てられながら、ともに手をたずさえて……。

 A ho*'ea ka*ua i ka pili o ke ao
 Ho'olale ke aloha i ka pili 'ao'ao

 こんなふうに、日々、あらたに気持ちを更新していくことができたら、変わりばえのしない毎日を、楽しく生き生きと過ごすことができるかもしれませんね。というか、一日のはじまりをホントウの意味での「はじまり」と感じ取れるひとにだけ、今日という日はやってくるのかもしれませんが……というわけで、世界が眠りと目覚めを繰り返す、その際のところ(pili o ke ao)**にある一瞬のこころのふるえを、全身全霊で感じ取ることが大切なのだとあらためて思った、そんな『Pili O Ke Ao』なのでした。

Lyrics by Ho’ouluma*hiehie(ed. Puakea Nogelmeier)
Music by Puakea Nogelmeier

*:「Holokea*hole」については手がかりが見つからなかったのですが、文字通りの意味は「a*hole(の魚)が走る(道)」であると思われるところから、Lele'anaeに通じる道ではないかと想像しています。
**:「i ka pili o ke ao」の意味は、「ke ao」(夜明け)に「(ka)pili」(接する〈ところ〉)で。ちなみに、「'ao'ao」は「side by side」(そばに、そばで)
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コメント

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隙間のりりー

Re: タイトルなし
jazztamaさん

もちろん、大歓迎です。ぜひお越しくださいね。
読みたいなぁと思いながら、なんとなく後回しになっていた曲です。
楽しみにしています。

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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。