Nani Ni'ihau(Kaulana Ni’ihau)

Nani Ni'ihau(Kaulana Ni’ihau)







From their Nanea release, Nani Ni'hau. On Stage Kuana Torres Kahele, Kehau Tamure and Ioane Burns.



 名高い島、Ni'ihauは美しさそのもの。
 その島で採れる貝で作ったleiのすばらしさは格別……。

 Kaulana no 'oe nani Ni'ihau
 Pu*pu* lei nani o ka 'a*ina

 その際立った美しさは、ほかとは比べようもない。
 Kahelelaniの(時代からの文化を伝える)島のleiの気高さは……。

 He nani hiehie 'oi kelakela
 Ka lei ai ia o Kahelelani

 そのあふれる愛を、どうかわたしの所に届けてほしい。
 Ni'ihauならではの、その温かい愛を。

 Ho* mai kou aloha pili me au
 Ke aloha pumehana no Ni'ihau

 Ni'ihauよ答えておくれ、あなたの名をさけぶ私の呼びかけに。
 愛にあふれたここちよさと、温かいこころでもって。

 E o* e* Ni'ihau i kou inoa
 Pu'uwai 'olu`olu me ke aloha


 地球の裏側にまで届きそうな、のびやかに響く高音のメロディラインが印象的な『Nani Ni'ihau』。エネルギー全開な感じで歌われるその勢いのせいか、「Ni'ihau (ならでは)の」(no Ni'ihau)、温かく幸せを運んでくれそうななにか(ke aloha pumehana)を切望する思いが、圧倒的な存在感でもってこころに響いてくるように感じられます。そして、これ以上はないくらいにシンプルな歌詞から、なぜかその島のイメージもふわっと広がってくるようにも思われるのですが、その一方で、Ni'ihau島については、結局、島で採れる貝で作った美しいlei(pu*pu* lei nani o ka 'a*ina)のことしかわからない不思議さもあります。この『Nani Ni'ihau』を作ったとされるAbbie Paleaは、Kaua'iに暮らす女性ジャーナリストだったひとのようですが、その彼女が書いたとされる『Hoku o Hawaii』という新聞の記事に、Kaua'i島を訪れたNi'ihau島のひとびとのことをレポートしたものがあります(1940年)*。その記事に、彼女の自作の詩もともに掲載されているのですが、そこでもNi'ihau島の貝のleiがテーマになっていることからすると、彼女にとって、よほど印象的なNi'ihau shellだったのではないかと想像されます。
 Ni'ihauは、人が住む島の中ではハワイ諸島最西端に位置する、約180平方キロメートルほどの小さな島です。その東27キロメートルのところにあるのがKaua'iで、こちらはハリウッド映画のロケ地になったこともあり、観光スポットとしても人気の島だったりします。その一方で、Ni'ihauのほうは、なぜかハワイの島々のなかでも、あまり知られていないような印象があります。
 そんなNi'ihau島の、ほかのハワイの島々とは違うありかたは、1863年、カメハメハ4世が、この島をElizabeth Sinclair(当時、Kaua'i島在住)に売却したことに端を発します。売却後、個人所有の島として長年その住民以外の立ち入りが制限されてきたNi'ihau島は、いまもホテルもなければレストランもなく、舗装された道路どころか電気も水道も通っていないという、いわば近代化の歴史から取り残されたような、ある意味特異な場所として守られてきたようです。そんな島に、現在、200人あまりのひとびとが暮らしているようですが、Kaua'i島の親戚の家とNi'ihau島をいったりきたりというひとも結構いるようで、実質的な人口はもっと少ないのかもしれません。そして、そんな島の産業はというと……雨が少ないうえに酸性でもある土壌は農業に適しないこともあって、牧畜に従事する以外には、昔から限られた生業しかなかったようです**。そして、唯一、フルタイムの仕事を確保できた牧場も、1999年には閉鎖されてしまった……そんな状況のなか、Ni'ihau島の人口は減少し続けているようです。
 とはいえ、Ni'ihau島にも、もともとそこに暮らすひとびとの暮らしがあり、独特の文化がはぐくまれてきた土地でもありました。たとえば、『Nani Ni'ihau』のなかに島の象徴として登場するKahelelaniは、その歴史のなかで最初に名を残した王(ali'i)の名前ですし、そのあとに続く王が、Kaua'iとNi'ihauの両島をともに支配した時代もあり、Kamehameha一世によるハワイの統一に最後まで抵抗したのもこの地域だったといいます。また、歌の中でも、Ni'ihauの美しさそのものであるとされる「Ni'ihau shell lei」をはじめ、Ni'ihau には「makaloa mat」***や、それを美しく飾った「pa*wehe」と呼ばれる独特の文様もありました。
 ですが、残念ながら、現在も継承されているのはNi'ihau shell leiだけ****……そう、Ni'ihauといえば「pu*pu* lei nani」(貝のレイ)で有名(kaulana)というよりも、それしかないNi'ihauのようです。そんな、人間にとっては「なにもないこと」がなによりの特徴であるようなNi'ihauですが、その環境が幸いしたのか、絶滅危惧種であるmonku seal(アザラシの一種)を呼び寄せてもいるNi'ihau*****、ハワイの島々のなかで、唯一、ハワイ語が日常的に用いられてもいる島……そんなNi'ihauは、なにもないことによって、逆にハワイのほかの島々にはもうない多くのものが、いまも奇跡的に残されているところなのかもしれません。そう、ハワイのひとびとが、ときに思わずこころの底から叫びたくもなる、そんな、近しいけれども遠い、失われた記憶のありかでもあるような……。

*:http://nupepa-hawaii.com/tag/abbie-p-palea/
**: Sinclair家のひとびとも、もともと牧場を作る土地を探していてNi'ihau島を購入したようです。
***:マカロア(スゲ科の植物)を使って編まれた、Ni'ihau島だけにみられた織物。
****:Ni'ihau shell lei による島の産業活動の活性化を支援しようとする活動もあるようです。
 http://www.niihauheritage.org/index.html
*****:http://www.aloha-hawaii.com/kauai/niihau/
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。