He Aloha No* 'O Honolulu

He Aloha No* 'O Honolulu







 いとおしくてたまらないHonolulu。それはKu*kalahaleの雨にぬれる場所。
 Ma*mala湾をあとにして(船は進む)。
 みると前方にはLele(Lahaina)の街、そして'uluの木陰がそこに……。
 そう、灯台はいつも燃えるように輝くもの。
 Kaua'ulaの風のなか、決して消えることのないその光……。

 He aloha no* `o Honolulu i ka ua Ku*kalahale
 Ka nuku a`o Mamala `au a`e nei ma hope
 Kau mai ana mamua ka malu `ulu a`o Lele
 Kukui `a`a* mau, pio `ole i ke Kaua`ula

 「Ku*kalahale」*の雨にしっとりぬれるHonoluluが、だんだん遠くなっていくのをながめながら、思わず「he aloha no*~」(ホントウにいとおしい)という思いがわき上がってきた……そんな、旅がはじまるときの切ない気持ちをかわきりに、ある旅の道中が情緒たっぷりに語られているように思われる『He Aloha No* 'O Honolulu』。Ma*mala湾('Oahu島)をあとにして向かったMaui島の「Lele」**が、「Kaua'ula」***の風にも負けず輝く灯台(kukui)に浮かび上がる姿に目をやりながら、まだまだ続く旅の道行きに思いをはせている……そんな感じでしょうか。
 そしてこのあと、船はさらに東へと向かうのですが、続いて訪れるHawai'i島でも、船が行く先々の風景やそれを目にしたときの思いが語られるとともに、それぞれの地域独特の風や雨が描写されていきます。

 長い航路をずっと旅したはてに、'Upoluの岬が見えてきた。
 そして、Ma*hukonaへ、(強い)'A*pa'apa'aの風が吹くなかを。
 のんびりやさん、さぁ急いで、ほら、次はもうKawaihae。
 (突然の)Na*uluにおそわれて、あら波を巻き起こす風のなか……。

 `Au aku i ke kai loa oni mai ana `o `Upolu
 Ho`okomo ia* Ma*hukona i ka makani `A*pa`apa`a
 E wiki `oe `apa nei eia a`e `o Kawaihae
 Ho`ohaehae Na*ulu, i ka makani Ku`ehu `ale

 いきなり「のんびりやさん」('oe 'apa nei)と呼びかけられる誰かさんが登場してあれっ?って感じですが、ともかく船は、Maui島から次の目的地、Hawai'i島に到着したようです。島の北端、Kohala地域にある'Upoluの岬から、'A*pa'apa'aの強い風に吹かれてMa*hukonaへ、そして次に向かったKawaihaeでは、いきなり雨まじりの風「Na*ulu」におそわれて……と足早に南下している印象がありますが、「のんびりやさん」と呼びかけている感じからすると、目的(をはたす場所?)はまだ先なのかもしれません****。

 Mu*mukuの風の勢いが強くて、大きな帆もみんな風をはらむ(そのときに)、
 海が無数の色のモザイク状にみえもする、Konaで最も美しいものたちが現れる。
 (そして)あのHuala*laiの山頂(piko)をみると、恋い焦がれる思いを押さえていたものが、
 (まるごと)取っ払われたような気持ちになる。
 そう、love makingはつつがなく、うまい具合にぐぐグイッと……。

 'O ka hao a ka Mu*muku poho pono na* pe`a heke
 `O ka heke no* na Kona i ke kai ma*`oki`oki
 Ki`ina ke koi`i koi i ka piko o Huala*lai
 A la`i wale ke kaunu `a`ole pahuna hala

 いい風が吹いてきて、まさに順風満帆、しかも、Konaの海が最も美しい表情をみせる瞬間に立ち合っている……なんだかわかりませんが、いよいよ待ちに待ったものが訪れることを予感させる、そんな表現が続きます。海が「ma*'oki'oki」(cut in pieces、モザイク状)とされるのは、おそらく穏やかな海面が風でさざ波をたてているところに、太陽光がちらちら輝いてみえる……そんな光景ではないかと想像していますが、気持ちをかき乱しているのは、海ではなく遠くに見えるHuala*laiの山頂(piko)のようですね。そして、唐突な感じで語られる「ke kaunu」(love making)の情景なのですが、「pahuna」(pushing、thrust、差し込んだりすること?)が失敗することはない('a'ole~hala)ですから、思い切って「ぐぐグイッと」と訳してみました。そして、なにげなく見渡したように語られているHuala*laiの山ですが、「piko」が、山の頂上だけではなく人間のヘソからセクシャルな部分までを表すことばであることを考えると……結構、核心的な内容が語られている部分かもしれませんね。
 こんなふうに、なんとなく最高のKonaを楽しんでいるような描写が続きますが、Huala*laiが見えるということは、船は(歌詞にはありませんが)Kona地域の北部に位置するKailua-Konaあたりにいるのではないかと思われます。

 私たちふたり、きっとうまくいくよね。かわいい瞳のおさかなさん状態で(うっとりと)。
 その頂上(piko)のところで、満たされるまでめいっぱい求めて。そう、まったりするまで……。
 (そして)からだをぎゅっと抱きしめてくれるときの、あなたのあの愛の仕草がふいによみがえってくる。
 やがて(船は)Honu'apoへ、波が激しく(ダンスでもするように)上へ下へを繰り返すなか……。

 Hala `ole no* ka ua i ke kole maka onaona
 E haupa* `oe a kena i ka piko `oe a lihaliha
 Hali`ali`a mai ana kou aloha ka*kia iwi
 Ho`okomo ia* Honu`apo i ke kai kauha`a

 ここではまず、「Hala 'ole no* Ka*ua」(私たちふたりは失敗しない)と、ふたりの間になにごとかが起こりつつあることが語られています。「maka onaona」(やさしい、恋するような目)をしてですから、ともにうっとりするときを過ごしているであろうことが想像されますが、決定的なのは、あなたに対して、「おなかいっぱいになるまで、脂ののったものを食べて」と挑発しているようにも思われるあたりでしょうか。しかも、満足する場所は、先のバースにも登場した「i ka piko」のようですから、「kou aloha ka*kia iwi」(からだをギュッと抱きしめる愛の仕草)がふいに思い起こされるのも当然でしょうか……一方、船についてはHonu'apoの港へ向かうとだけ語られ、まるでなにごともなかったようなそっけなさですが、波は「踊るように上下している」(kauha'a)ようですから、愛の記憶を反芻しているといったところかもしれません。 
 
 Maunaloa号は、Konaのおだやかさをあとにして、
 (次は)Ho'okenaへ、おさかなのしっぽ(をかわいがる)みたいに。
 もうおわかりですね、Konaのすばらしいものたちのことが。
 Konaといえばみんな知っている、あのおだやかで静かな海のことを……。

 Ha`alele ka Maunaloa i ka pohu la`i a`o Kona
 Ho`okomo ia* Ho`okena i ka pewa a`o ka manini
 Ha`ina mai ka puana `o ka heke no* na* Kona
 No Kona ke kai malino kaulana i ka lehulehu

 ここではじめて、船の名が「Maunaloa」であることが語られます。つまりこの歌は、(表向きは)Maunaloa号がHonoluluからMaui島、そしてHawai'i島の西側にあるKonaへとたどる道行きを描いていたわけですね。そしていま、あの愛の記憶とともにあるKailua-Konaをあとにして、Ho'okenaへと向かうわけですが、それにしても、どうして船が「おさかなのしっぽ」(i ka pewa a'o ka manini)みたいにフリフリしながら進むのか……ここでは、Ho'okenaという地名が用いられるときのハワイ語の慣例から、そこに音的に近い「ho'oheno」(cherish、かわいがる)の意味が含まれていると考えてもよさそうです*****。だとすると、おさかなさんたちの恋はまだまだこれから……ということなのかもしれませんね。そう、船が行ったり来たりを繰り返す限りはーそして、Konaといえばだれもが知っている(kaulana)。愛のさなかの、めくるめくときを思わずにはいられない、きらきら輝く海のあのおだやかな表情を(ke kai malino)……******。


composec by Lot Kauwe*
 
*:Honoluluの雨風の呼称。
**:Lahaina(Maui島)の古い呼称。Malu-'Ulu-o-Leleと呼ばれた地域もあったようなので、そのあたりをふまえての風景描写ではないかと思われます。
***:Maui島の西側の地域に吹く風。 
****:'A*pa'apa'aはHawai'i島Kohala地域に吹く強い風。Na*uluは同じくKohalaのKawaihae特有の、いきなりやってくる雨まじりの風。
*****:ハワイのラブソングで、Ho'okenaが「ho'oheno」の意味で用いられることが結構あるようです。
******:古代のハワイのひとびとの漁業(lawai'a、fishing)を描写する文献のなかに、餌やルアーにひっかかる魚たちを、魅力的な(とくにいい香りのする)女性に弾かれる男性にたとえている描写をいくつかみかけたことがあります。「maka onaona」を「うっとりしている目」と訳しましたが、「onaona」がまずは香りの表現であることを思うと、こんなふうに魚を恋人たちにたとえる感覚は、ハワイ語の世界では共通認識としてあるものなのかもしれません。それにしても、恋するひとを釣り上げられてびっくりしている魚にたとえるとは……痙攣しているような、われを失わんばかりの表情をしているところが、love making中の恋人のまなざしに似ているということなんでしょうか。わからないでもないですが(笑)、そんなことまでことばにしてしまう大胆さが、ハワイ語ならではかもしれません。

参考文献
Elbert SH, Mahoe N: Na* mele o Hawai'i nei. Honolulu, University of Hawai'i Press, 1970, pp68-69
Kamakau SM: The works of the people of old. Honolulu, Bishop Museum Press, 1976, p79
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。