Ke Akua Mana E*

Ke Akua Mana E*






 美しく、人智を超えた神よ。
 あなたこそが、この大地を創造されたのですね。
 そう、(空に瞬く)星たちと輝き、あるいは稲妻をともなって……。
 そして、あなたのそのみなぎる力を示している(のが、この世界の存在にほかならないのです)。


 E ke Akua nani kamaha'o
 Na*u no* i hana ka honua nei
 Me na* ho*ku*, ka uila, ka hekili
 Ho*'ike ana i Kou mana e*

 「E ke Akua~」と、いきなり神(Akua)への呼びかけではじまる『Ke Akua Mana E*』。「あなたこそが」(na*u no*)大地を創ったとされることからすると、ここに歌われている「ke Akua mana」は、全知全能の神といったところでしょうか。あるいは、その大地の創造が、星たちや稲光といった、宇宙を感じさせるものたちととともに語られるあたりは、どこかビッグバンによる世界のはじまりを思わせるものもあります。そんな、宗教と科学がかぎりなく近いところで世界を語るときに現れる「はじまりの物語」にも似たこの歌、実は『How Great Thou Art』というキリスト教の教会音楽に触発されたものなんだとか……そう、キリスト教の神を讃える歌と同じメロディにハワイ語の歌詞が付けられたのが、この『Ke Akua Mana E*』なんですね。なにか大きな力に圧倒されながらも、その存在に向けてありったけのメッセージを伝えようとしているこの歌の迫力は、その内容もさることながら、教会音楽にはりついた独特の雰囲気によるところが大きいのかもしれません。
 
(Hui)
 私は歌う、(あらゆる命を)生かし賜うあなたのことを。
 美しい、ほんとうに美しいこの世界(をあなたはお創りになった)。
 私は歌う、(あらゆる命を)奮い立たせるあなたのことを。
 美しい、ほんとうに美しいこの世界(を創造したあなたを讃えて)。

 E mele au i ka Ho'o*la e*
 He nani no*, he nani no*
 E mele au i ka Ho'a*la e*
 He nani no*, he nani no*

 この繰り返しの部分には、「ho'ola」(命を与え)、あらゆるものを「ho'a*la」(立ち上がらせる)神に対する賛辞が、声高らかに歌いあげられているような感じがあります*。そう、美しい世界を前にして、思わず口を付いて出た「he nani no*」……そして、このフレーズには、ことばにならない思いがかろうじて形を与えられたような、そんなぎりぎりの思いが込められているようにも思います。たとえば、世界がいま、こうしてあることに対する驚きとともに、なにか途轍もない大きなものとのつながりに気づかされるときに、ひとが不意におそわれもするような……世界中であらゆる名で呼ばれている神的なものたちも、そのはじまりのところには、そんなきわめて個的な体験があったりするのではないかと思ったりもします。

 (神よ)あなたは、奥深い森、そして空を舞う鳥たちをはじめ、
 数々の水辺から荘厳な山の頂まで、すべてをお創りになった。
 (そうすることで、あなたは)自らの輝かしさをお示しになったのです。

 Ua hana 'Oe i ka wao nahele,
 A me na* mauna o ka lewa pu*;
 Na kahawai, na* mauna ki'eki'e
 Ho*'ike ana i Kou nani e*

 奥深い森(wao nahele)、鳥たちが舞う「空」(lewa)、命の源である「水のある場所」(kahawai)、思わず見上げる峰々(na* mauna ki'eki'e)……ここには、先に「he nani no*」と歌われた美しい世界が、ハワイの自然を具体的に感じさせることばとして連なっています。教会音楽として歌われるときは、おそらく「Lord」(Christ)と叫ばれるのだと思われますが、ハワイ語の「ke Akua」と訳された時点で、ハワイのひとびとが古代から大切にしてきた神に置き換えられている……ということなんでしょうか。もっとも、「ke Akua」と単数形で呼びかけられる神には、なんとなくキリスト教的な唯一の絶対神みたいなものをどうしても感じてしまいます。歴史的にみれば、ハワイのひとびとが西洋音楽に出合ったはじまりのところには教会音楽があったわけですし**、それはなによりも布教のために歌われたものであることを思えば、それも当然なのかもしれませんが……。それでも、生命力に満ちたハワイの大地には、あの島々のエネルギーそのものでもある、複数の神々(na* akua)が似合うのではないか……と、個人的には思っています。

Hawaiian Lyrics by Albert Nahale'a*

*:「ho'ola」「ho'a*la」は、それぞれ「ola(生きる)」「ala(起きあがる)」という動詞に、能動性を付加する接頭辞が付いたことば。
**:Hulaをともなわない「歌う」行為を表すハワイ語の動詞「hi*meni」が、英語の「hymn」に起源を持つのはそのあたりの事情によるようです。
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コメント

Gospel Hula Girl

素敵な訳ですね!
四国でゴスペルフラ教室をしています!
今年はこのKe Akua Mana Eに挑戦します。
とても素敵な訳ですね~生徒に紹介させて
いただきます♡

隙間のりりー

Gospel Hula Girl さま
>Gospel Hula Girl さま

メッセージありがとうございます!

ゴスペルフラ、はじめて聞きました。
ちょっと想像がつきません。衣装とかどんな感じなのか……興味津々です。

生徒さんたちにもご紹介いただけるとのこと、うれしいです。

ところで、ゴスペルの曲がハワイ語に訳されることって、結構あるんでしょうか?
自分でも調べてみようと思います。

なお

勉強になりました
少し前に、この曲を習ったのですが歌詞や意味を自分で探さなければならない教室で、色んなところのを見ていました。
ですが、リリーさんのはとても詳しくで勉強になりました。
ありがとうございます。

あと、リクエストのページはもう受け付けておられないのですか?同じくマーク・ヤマナカの『Rain Li'i Li'i』の歌詞も探しているのですが、なかなか見つけられなくて・・・

隙間のりりー

なお様
参考にしていただけたようで嬉しいです。
どんな振り付けなんでしょう……この曲のフラを見たことがないのですが、すごく興味があります。

そして、リクエストありがとうございます。
『Rain Li'ili'i』、聞きなおしてみました。
軽快で楽しげな曲ですが、高貴なだれかのことを歌っているんですよね(たぶん)。
時間かかるかもしれませんが、チャレンジしてみます。

これからもどうぞよろしくお願いします。

なお

ありがとうございます!
Rain li'i li'i のリクエストを検討して頂き有難うございます♡
楽しみに待っています。

Ke Akua Mana E
歌詞を知ってから踊ると、フリと歌詞がマッチしていて、改めて感動しました。
ホイケの最後に踊る曲なのですが、来てくださった全ての方に、感謝を込めて踊りたいと思います。

Good soup music

ラジオで紹介させて下さい♪
はじめまして!
北海道でGospel Crossというゴスペル音楽番組をしております、Good soup musicのManaと申します(^ ^)
明日の放送でハワイアンゴスペル特集を組んでいるのですが、こちらの訳が素敵だったのでぜひご紹介させて頂きたくメッセージいたしました♪
もしお時間ありましたらお聴き頂けると嬉しいです!
毎週月曜21〜22時 FMりべーる
ラジオアプリ「リスラジ」にて全国で視聴可能♪
どうぞよろしくお願いいたします!(^_-)

隙間のリリー

Manaさま
Manaさま

コメントいただき、ありがとうございます。
昨日、私の和訳をご紹介くださったんですね。
ありがとうございました。
コメントを確認するのが遅くなってしまい、残念ながら番組の視聴はできませんでしたが。。。
今後ともどうぞよろしくお願いします。

隙間のリリー
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。