Pa* ko*nane a ka mahina ‘O Hina ka wahine ho’oma*lamalama Ka lama pa*hola mai ka we*lau Mai ka ‘a*ina a i kai moana
白く輝く月の光で、煌々と照らされていた夢のような世界と、それを目にしたときにふいにわき上がってきたある想い……そんな記憶の断片が、素直なメロディラインにのせてまっすぐに描写されているように思われる『Pa* Ko*nane』。いきなり月の女神「Hina」の名が登場する感じも、その夜の月の美しさが格別であったことを暗示するとともに、昼とは違う夜の世界の、どこか幻想的な雰囲気を伝えているように思われます。エネルギーに満ちあふれた太陽の光とは違う静かで控えめな光が、それでもずっと遠く沖のほうまで(a i kai moana)*のびていたあの夜……トーチの光がその先から広がっている(ka lama pa*hola mai ka we*lau)**というフレーズも、ひょいっと手を伸ばせば届きそうな位置に、くっきりとその姿を現している月の姿を思わせます。そう、もうひとつの世界への入り口がそこにあるような……そんな感じでしょうか。
Luana ka*kou ma kona malu E maliu mai a pili i ka nani Ka nani luaole i ke Kaiaulu Ulu a’e ka mana’o o loko
月の光に包まれているときの(ma kona malu)、幸せで喜びに満ちた(luana)気分……ハワイ語の「malu」には、単に物理的に「おおうもの」(shade、shelter)というだけでなく「peace(ful)」という意味もあり、こころ穏やかな気分を連れてくる、そんな夜の光景だったであろうことがうかがえます。そう、こころのなかから(o loko)ある思いがわき上がってくるような(ulu a’e)……と同時に、「ulu」にはそとからやってくる(たとえば神的な)ものにイスパイアーされる意味もあることを考えると、どこか自分を超える力と出合い、それに守られてもいることに思い至った、そんなひとときだったのではないかと思ったりもします。
Ha*’ina ‘ia mai ana ka puana E na*nea pu* ka*kou i ka makani I ka makani Kaiaulu e po*’ai nei Ua ulu a pa’a ka mana’o o loko
Wai’anaeといえば、O’ahu島の西側にあり、その海側の低地の背後には、O’ahu島最高峰のKa’alaをはじめ、いくつもの山々が弧を描くように連なる地域でもあります。そんな峰々にぐるっと囲まれながら(po*’ai a puni)、ささやくような風のそよぎを感じながら穏やかさに満たされる(lana ma*lie na leo nahenah)、そんな月明かりの美しい夜だったようですね。そして、その空間で感じた幸せは、やはりそこでしか感じられないなにものかであったと思われます。そう、「Kaiaulu」***と呼ばれる風が吹くWai’anae には、そこにしかない美しさ(ka nani luaole)があるのだから……山が取り囲むさまを表現している「po*’ai」に、たとえば複数の人間が集まってサークルを作っているようなイメージもあることを考え合わせると、山々に対する親密な思いや、それらがただそこにあるだけで得られる安心感みたいなものも表現されているように思えてきます。 最後に、この歌が収められているCDアルバムのタイトル、『Kuleana』について振り返っておきたいと思います。ハワイ語で「責任」を表す「kuleana」には、もともと「分け持たれた土地」という意味があり、「自分がそこに生まれ、それによって生かされているともいえる土地を正しくケアする責任を担う」というところからくることばのようです。そして、このCDのブックレットにある解説文を読むと、「kuleana」というタイトルには、ハワイのoliの伝統を受け継ぐハワイアンミュージックを守ることで、後の世代にハワイ人のアイデンティティを伝えていくことこそが、われわれの「kuleana」である……そんな熱い思いが込められているようです。ある美しい夜の風景を思い起こしただけの歌ではなく、ハワイの自然から受けた啓示のようなものを、ある使命でもって伝えようとしている……そんな歌なのかもしれませんね。そう、ここまで、「ぼくら」と訳してきた「ka*kou」****にも、その感動を多くのハワイのひとびとと共有すべく投げかれられた、熱いメッセージが込められているような……。 こんなふうに、自らのルーツにほこりをもち、それを大切にすることでおのずと示されるものがあるのかもしれません。なんというか、強く、正しく、しなやかに生きるための、途轍もなく大きな道しるべのようなものが……。
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