Ha'aheo Kaimana Hila

Ha'aheo Kaimana Hila






by Na Palapalai


 威厳に満ちたカイマナヒラ。
 (それは)灯台の光にいろどられた場所。
 美しくりっぱにそびえるその姿は、
 まさしく海の守り神にふさわしい……。

 Ha'aheo Kaimana Hila
 I ka hale ipu kukui
 Ku* kilakila a i luna
 He kia'i no ka moana

 'Oahu島の南東部、おだやかなHonoluluの海にはりだすようにそびえる「Kaimana Hila」。そこだけが台形状に隆起しているうえに、ほん際まで海が迫っているそのさまは、まさに海を見守るために現れたか(he kia'i no ka moana)と思いたくなるほどのロケーション……そんな、丘(hila)*と呼ぶにはあまりに堂々としているKaimana Hilaの思わずみとれてしまう姿が、「ha'aheo」(proud:自信に満ちた、貴族的な)と表現されているのではないかと思われます。
 そしてこのあと、Kaimana Hilaを取り巻くさまざまな自然や、そこを訪れるひとびとの様子が描写されていきます。

 ゆらりゆらりと打ち寄せる波、
 Lipoaの香りをつれてくる海風、
 そして、ぽっかり浮かぶ雲も(みんな)、
 (まるで)その場所をずっと飾ってきたようにそこにある……。

 'O na* 'ale holu o ke kai
 Ka moani o ka li*poa
 Ke ao 'o*pua e kau ana
 'O kou ka*hiko mau ia

 そこを訪れると、その美しさに誰もが歓喜する。
 (そして)あなたの名前は、
 はるか遠い場所でも耳にするほど知られてもいるのです。

 Ohohia na* malihini
 I ka 'ike i kou nani
 Ua lohe 'ia kou inoa

 Kaimana Hilaといえば、ハワイに行ったことがないひとでも、写真などで一度は目にしたことがあるほど有名なランドマークのひとつ。ハワイといえばカイマナヒラといってもいいほどなぜかその知名度が高いのは、やはりその姿の美しさのためなんですね(i kou nani)。そう、そこを訪れるひとびと(na* malihini)が、おもわず歓喜に満たされもするような(ohohia)……そうしていつのまにか、日本のような遠く離れた場所でも(ma na* 'a*ina mamao)、その名が聞かれる(ua lohe 'ia kou inoa)にいたったKaimana Hila。私自身は、「とりあえず行って損はない観光地」くらいの気持ちで訪れたのですが、あの圧倒的な存在感には、たしかに一度みたら忘れられないなにかがありました。そして、なんといっても印象的だったのは、屋外でみたその姿もさることながら、眺めのいいコンドミニアムの大きな窓わくに、まるごと切り取られた、Kaimana Hilaでした。そう、雲をいただき、海風に包まれながらただそこにあるKaimana Hilaは、まるで天然の絵はがきをみるように、数々の自然の装飾(ka*hiko)にいろどられながら、きらきらと輝いて見えたのでした……。

 そこはうっとりといい時間を過ごす場所。
 そう、愛を交わしあう恋人たちにとっては。
 その美しさをみるとつい見とれてしまう。
 月が煌々と照らす夜のその姿は格別だから……。

 Ma na* 'a*ina mamao
 I laila e walea ai
 Na* ipo maka onaona
 E nanea ana i ka nani
 O ka po* mahina ko*nane

 Waiki*ki*あたりのホテル群から眺める、地上に星がばらまかれたかと思うほどの夜景とは異なり、夜のKaimana Hilaは、その堂々とした存在感はそのままに、ただ静かに闇に沈んでみえました。なんというか、そこだけ黒い絵の具がなんども塗り重ねられてでもいるような、そんな感じで……そして、昼間とは違うその表情は、まるでもうひとつのKaimana Hilaに出合ったようでもあったのですが、もし、そこに白く輝く月明かりが放たれていたら、さぞかしロマンチックだったろうと想像されます。そんな特別な夜は、やっぱり恋人と二人きりで過ごしたいかも……ですね。

 もう一度、この歌に込めたあれやこれやをかみしめてほしい。
 (昔々)Le*'ahiとも呼ばれたKaimana Hilaのことを。
 あなたの名前は誰もが知っている。
 そう、遠く離れた場所でも……。

 Ha'ina 'ia mai ana ka puana
 No Le*'ahi, Kaimana Hila
 Ua kaulana kou inoa
 Ma na* 'a*ina mamao

 Kaimana Hilaが、「daiamond hill」のハワイ語読みであることからもわかるように、この名前は、18世紀末にこの地を訪れた西欧人が、そこで見つけた輝きを放つ岩石の結晶を、ダイヤモンドと見間違えたことに由来するようです。一方、古来、ハワイのひとびとがこの地を呼んだ名が、ここに登場する「Le*'ahi」です。「Lae'ahi」が変化したともいわれるその名は、ハワイの島々の誕生とともに語られる火の女神Peleの妹Hi'iakaが、その丘の形状が'ahi(魚の一種)の額(lae)に似ていることから名付けたものなんだとか**。そして、Peleの物語に登場するKaimana Hilaは、みずからの住処を求めて旅したPeleが、一度は穴を掘ってみたとされる場所だったりもするようです。つまり、Kaimana Hilaのあの丸いクレーターのような形状は、数百万年前に起こった火山の噴火の痕跡なんですね。
 その後、途方もない時間のなかで、雨風や波に浸食されつついまにいたるKaimana Hila。かつて、ダイヤモンドかと思われたその場所は、なによりも、ハワイの島々の記憶の結晶だったといえるかもしれませんね。そして、いまでは、だれもが知るところとなった(kaulana)Kaimana Hilaのことを、こころから誇りに思う(ha'aheo)気持ちを込めて歌い継がれてきたのが、この『Ha'heo Kaimanahila』ではないかとも……ハワイには、そこをひととき訪れるだけのひと(malihini)にはみえにくい、大地の記憶とともに開かれる風景があるのかもしれません。

Words by Mary Pukui, music by Maddy Lam

*:「hila」は英語の「hill」をハワイ語読みしたもの。
**:Le*'ahi(Lae'ahi)の地は、古代のハワイのひとびとが神事を執り行った「heiau」が設けられたところでもあり、Kamehameha一世の時代に、そこで行われた政(まつりごと)の記録も残されています。

参考文献
Pukui MK et al: Place Name of Hawaii. University of Hawaii Press, 1966
John Papa 'I*'i*: Fragments of Hawaiian history. Honolulu, Bishop Museum Press, 1959
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。