Hawai'i Kamahao

Hawai'i Kamahao





Mahalo Ke Akua 2010: Castro Valley: Na Palapalai


 どこもかしこも感動に満ちている。
 それで、あぁホントにすばらしいなぁと恋い焦がれてしまうような、そんな気持ちがわき上がってくるんだ。
 ふんわりとほのかな香りに包まれているこの大地……。
 そんなあなたの美しさのすべてを、私は誇りに思うのです。
 そう、この世界に二つとないハワイの美しさを。

 Puni ke aloha ka maka ‘i’ini nei
 Puni ka honua e moani ke ‘ala
 ha’akoi au i kou nani pau a pau
 o ka helu ‘ekahi nani Hawai’i

 大きく弧を描く水平線、ゆったり浮かぶ雲の連なり、緑美しい山並みと青い空とのコントラスト……そんなすばらしい自然に囲まれて(puni)、内側からわき上がってくる思いのままにことばが連ねられたような印象のある『Hawai'i Kamaha'o』。「ナンバーワンの美しさ」(ka helu 'ekahi nani)と言い切ることばにまずは圧倒される力強い歌ですが、「Hawai'i Kamahao」(Wonderful Hawi’i)を語ることばはとても詩的。作者のHawai’iに対するあふれる「ke aloha」(愛する気持ち)が結晶したような、そんな歌なのだと思います。

 (それは)くもりなく、まるで凪の海のような静けさとともにあって、
 こころ安らかに鳥が住まうような、そんな場所なのです。
 そう、よくもこんな空間がと驚くほかはないおだやかさのなかにありながら、
 これ以外ではあり得ないとも思わせるたたずまいをみせもする……(ハワイは)そんな魅力にあふれたところなのです。

 Ka*la’e e ka wailana
 a ka manu maluhia
 pa*ha’oha’o i ka ma*lie
 ma’ema’e wale i ka pono

 風のおだやかな昼下がり、ちょっとだけボートを沖へ出し、思いのままに波にゆられている……そんな、なにものからも解き放たれた空間に身をまかせているときに感じるような、ゆったりした空気感が伝わってくることばが連なっています。ここには「おだやかな」(calm)を意味することばがいくつも使い分けられているのですが*、視覚的というよりは、からだで感じるハワイが描写されているのかもしれません。

 かぐわしい'awapuhiの花。
 その香りがふんわりただよってくる。
 leiをかかげて、しっかりと身につけて……。

 (そこに住む)温かいこころにあふれるひとたちがまた、すばらしすぎるのです。
 そう、ハワイのかぐわしい魅力を愛してやまないひとたちが……。
 そして、元気にさえずる鳥たちもハワイの美しさなのです。
 この世界に二つとない、そんなこの土地の美しさ(そのものともいえるような)。

 Ke ‘awapuhi kaluhea
 Moani ke ‘ala mai nei
 he lei kau i ka maka
 pili pa’a pono ai

 Kamahoi na* po’e me ke aloha pumehana
 He li’a na* po’e no ko* ‘ala onaona
 na* manu ‘ole*hala kou nani , nani no*
 o ka helu ‘ekahi nani Hawai’i

 ここでは、魅力あふれるハワイだけではなくて、ハワイを愛するひとびと自身もすばらしいと歌われています。'Awapuhiのleiを大切に抱きしめる……といった内容がまず語られている部分では、土地を愛する思いというか態度が、比喩的に表現されているのかもしれません。それにしても、ちょっと不思議に思えるのは、ハワイに住む鳥たちが、唐突にハワイのすばらしさの象徴として語られ、なんとなく人間と同列に扱われていること……もっとも、考えてみたら、ハワイの島々には、人間がやってくるよりもずっと前から多くの鳥たちが暮らしていたはず。そして、そんな鳥たちが思いのままに暮らせる環境であることは、人間がいてもいなくてもすでにそこにあった、ハワイの自然のすばらしさを担保するものでもあるわけですね。そういえば、おだやかさを表すハワイ語がいくつも登場する2番にも、「こころ安らかに暮らす鳥」(ka manu maluhia)が登場していました。それに続いて「pa*ha'oha'o」(ことばを超えた、驚くべき)といった表現もみられるあたりは、なんとなく鳥たちの楽園的なものも感じられます。
 おそらく、延々と広がる太平洋にぽっかり浮かぶ島の連なりは、そこに暮らす多くの生き物にとって、なによりも体を休め、危険から守ってくれるオアシスなのだと思います。鳥にとっても、人間にとっても同じように……あるいは、そうあってほしいという思いを込めて歌われているのが、この『Hawai'i Kamahao』なのかもしれません。手付かずの自然が失われつつあることもまた、あの島々の現実であることを思えば……。

 Ko'olauの山々よ、
 その木々の葉が色づくころの様子とか(を思ってみたりする)……。
 ふと目をやると、そこにはあの(鳥たちの聖域として)有名なKa*papaの島がみえたなとか……。

 E maliu ‘o Ko’olau
 a ka mai’a lau pala
 e huli aku na*na*
 Ka*papa kaulana

 Ka*papaは、O'ahu島の東側、Ka*ne'ohe湾のちょうど真ん中あたりに位置する、平らな形状をした小さな島の名前です**。島から陸側へ目をやると、Ko'olau山脈の連なりが見わたせるような、そんな位置関係にあるようです。また島の周辺には、現在もウミガメがたくさん暮らしているようで、ハワイの固有種である「naupaka」「kahakai」「ilima」といった植生もみられるようです。そして、なにより有名(kaulana)なのは、海鳥たちがおだやかに暮らすところでもあるということ……ハワイの固有種である鳥たちの姿がどんどんみられなくなりつつある状況にあって、Ka*papaがいまも鳥たちの聖域として知られていることは、ハワイを愛するひとびとにとっては、とても大切なことではないかと思われます。

 あのpalapalaiのいとしさといったらない。
 (ハワイのこころそのものといっていい)神聖さとすばらしさの象徴でもあるその姿が、
 いつもこころのどこかに住まっている、そんな気がする。
 そう、こころのなかにいつも大切にしまってある、
 そんなハワイのなにもかもが、すべてこころのなかにあるのです。

 Na* palapalai ho’oheno
 Hemolele ki’e ki’e loa
 Ho’ohihi ka mana’o
 ke ‘i’ini a ka pu’uwai…ke ‘i’ini a ka pu’uwai
 Hawai’i i ka pu’uwai

 「palapalai」はシダの一種で、この歌の作者もメンバーであるハワイアンバンド、「Na* Palapalai」の名の由来でもあります。そして、この植物がバンド名になり、神聖さの象徴として語られてもいるのは、なによりもそれがハワイの固有種であることに意味があるためだと思われます。そう、ハワイのひとびとにとっては、「maoli」(indigenous、土地固有の)であることにこそ価値があり、大切に守るべき神聖さにほかならない***……このあたりは、南国の植物はみな同じにみえてしまう私たちには、ホントウには理解できない部分なのかもしれません。ですが、彼らがみずからのルーツに誇りを持つ態度からは、なにか大切なことを教えられているように感じるんですね。生まれてこのかた、ともに暮らし、惜しみなく与え続けてくれる大地への感謝の気持ちや、自分の力を超えた存在に対する敬虔さとか……そして、もしかすると私たちには、人工物に囲まれた日常のなかで、そんな生活者の視点からみたあたりまえのことがみえにくくなっているのではないか……なんてことをふと思うにいたった、そんな『Hawai'i Kamahao』なのでした。

*:「ka*la'e」「wailana」「maluhia」「ma*lie」。
**:Ka*papaは、2マイルほど沖へ行ったところにある島で、広さ約9.5エーカー、標高の一番高いところで海抜14フィート。
***:「maoli」(indigenous、土地固有の)を意味するハワイ語は、「true」(真実の、本物の)を意味することばでもあります。

Na Kuana Torres
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。