George Lanakilakekiahiali`i Na`ope, a living treasure, performs Momi O Ka Pakipika (Pearl of the Pacific)at the Malama Punalu`u 2007 festival at Na`alehu Ka`u Hawaii. This is the 1st mele.
ノリのいいメロディと,ぴたりとはまった歌詞でもって、晴れ晴れとしたハワイの空気が伝わってくるように思われる『Ka Momi O Ka Pakipika』。ハワイに対する熱い思いが、思いつくままに選ばれたことばで表現されているような印象がありますが、おそらく、この歌の一番の魅力は、この飾り気のなさというか、これ以上にないと思わせるほどの素朴さでないかと思います。そのおかげで、「ku'u」(私にとっていとしい)、「na'u」(私にとっては)と、終始、強い調子で私にとってのハワイへの思いが語られているわりには、不思議と押しの強さみたいなものがないんですね。そして、きわめつけは「ia'u」(私には)が繰り返されるところなのですが、それさえ、口ずさむひとがそれぞれにとってのハワイへの思いをふくらませることができるような、自由で軽やかな雰囲気に満ちているように感じられます。 修辞的な表現が抑えられているなかで、唯一、詩的なことばが選ばれているのが、ハワイを「ka momi o ka Pakipika」(太平洋の真珠)にたとえているところ。文学的というかとにかく美しいフレーズですが、この表現には、結構、科学的なまなざしが含まれているのではないか……と思い始めています。真珠といえば、長い時間かけて海が育ててくれる宝物。そして、ハワイの島々も、隆起した大地が波に洗われ、浸食されながら現在にいたったことを思えば、まさに太平洋に浮かぶ真珠のような存在なわけですね。そう、数百万年ものときを経て今にいたったような……。ハワイでは、そんな島の成り立ちを語る神話が多く残されてきたことも思い起こされますが、人間のものさしを超えた途方もない時間の積み重ねには、科学のことばでは語りきれないなにかが自ずと含まれるのかもしれないと思ったりもします。 この歌を作ったCharles E King(1874-1950)は、名前だけを聞くと欧米にルーツのあるひとかと思いそうですが、クォーターながらネイティブハワイアンの血を受け継ぎ、Queen Emmaが後見人、音楽の先生はQueen Lili’uokalaniと、ハワイの王族に囲まれて育ったひとのようです。そして、ハワイ語はもとよりハワイの伝統文化や歴史にも精通していたとのこと。そんな彼が、あれこれとハワイを語ることのないこの歌を作ったことに、若干、もの足りなさを感じたりもするのですが、見方を変えれば、多くのハワイ人がそれぞれに大切にしているハワイを知り尽くしている彼だからこそ作ることができた、ハワイを愛するすべてのひとを包み込む、稀有なハワイアンソングといえるのかもしれません。
参考文献 Kanaheke: Hawaiian Music And Musicians-An Ilustrated History. The University Press of Hawaii, 1979
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