Nani Hanalei

Nani Hanalei 





Maunalua


 Hanaleiこそ、私が愛してやまない場所。
 その美しさ(にはことばにならない何かがあるから)。
 あなたの存在は、なぜかいつも私のこころをかきたてる。
 そうHanaleiは、ほかにたとえようもない場所なのです。

 ‘O Hanalei ku‘u aloha
 Ka nani a‘o Hanalei
 Ho‘ohihi ana ‘oe i kuu aloha la*, e
 Hanalei no* e ka ‘oi

 静かにひびく重厚感あふれるメロディが、壮大なHanaleiの風景描写そのもののようにも思われる『Nani Hanalei』。低音と高音が入れ替わるたびに、別のパノラマが入れ替わり立ち替わり現れる、そんなドラマチックな雰囲気もありますが、歌詞のほうはいたってシンプル。「私のこころをグイグイっとひきつける」(ho‘ohihi ana ‘oe)と歌われはするものの、Hanaleiについては、それほど多くを語っていない印象もあります。ですが、そのややことばが足らない感じも、目の前に広がる風景の圧倒的な存在感に身を任せる誰かの、ことばにならない驚きというか、その場の空気感を伝えているようにも思ったり……そう、感動ってそうそうことばにできないものなんですね。そんなことばが取りこぼしてしまうものさえ、美しいメロデが奇跡的によみがえらせているような、生き生きした躍動感みたいなものがこの歌にはあるように思います。

 私の気持ちをぐんぐんひきつけるというか……。
 Hanaleiの美しさ(には驚きが満ちている)。
 (足もとを危うくする)つるつるの、
 Manu‘akepaのコケ(って不思議だなぁと思ってみたり)。

 Ho‘ohihi ho‘i ko‘u mana‘o
 Ka nani a‘o Hanalei
 E pakika, e pahe‘e,e
 Ka limu o Manu‘akepa

 HanaleiはKaua‘i島の北側にあり、海沿いから山深い地域にまでひろがるエリアです。地図でみると、その海岸線にひときわくっきりと弧を描いているのがHanalei湾で、その名の由来が「curved bay」*であるのもなるほどなぁと思われます。そして、Hanalei湾周辺の海沿いにはりつくようにわずかな平地があり、その際に迫るように険しい山々がそびえているようです。つまり、ほぼ垂直に切り立った山肌が、直接海に面しているような感じですね。そんなこの地域特有の地形によって、ほかでは見られない風景が広がっているわけですが、それがここに登場する「Manu‘akepa」のようです。
 熱帯の森におおわれた山々にぐるっと取り囲まれながら、大海原から打ち寄せる波に洗われるManu‘akepa。その緑生い茂る渓谷は、いままさに海に流れ込もうとする滝状の水によって、そこかしこでその山肌を深く刻まれている―そんな光景がみられるManu'akepaは、この特徴的な滝の風景とともに、海辺の砂地に群生する海藻に似たコケが生えていることでも知られています。「つるつるすべる」(e pakika, e pahe‘e)と表現されているのは、水が絶えることのない谷と、そこに生息するコケのためなんですね。

 誇り高きHanalei。
 とにかく雨がどっさり降って、
 そうして、あのMolokamaの滝の風景が現れる……。
 (思えば力強く吹き抜ける)'A*pa‘apa‘aの風(にも、ふとなにかを感じさせるものがあったような)。
 
 Hanohano a‘o Hanalei
 I ka ua nui ‘ana la*
 Ka wailele a‘o Molokama la*, e
 Ka makani ‘A*pa‘apa‘a

 雨がどっさり降って、そうして滝が現れる……海沿いにみられるManu‘akepaだけでなく、もっと標高のある内陸のほうでも、どうもHanaleiといえば滝のようです。
 ここに登場するMolokama(Namolokama)を写真でみてみると……巨大な壁のように連なる山脈が、隆起したままの姿をとどめるような迫力でもってそこにあります。そして、なんといってもみるひとを驚かせるのは、その山肌を刻むいくつもの滝……下から見上げたのではわかりませんが、Molokamaはその頂上のところが平らなプラトー状態になっていることから、おそらくそのてっぺんの高原で蓄えられた水は、滝になっていっきに流れ落ちるのではないかと思われます。なんというか、もう想像するだけでこころもからだもふるえが止まらない、そんな驚きの体験がそこにはありそうな、そんな予感がします***。

 ここまでことばにしてきて、
 Hanaleiの美しさがこころに響いたでしょうか。
 その存在には、私のこころをグイグイッとひきよせるなにかが宿っている……。
 そう、Hanaleiは、そんなこの世のどこにもない場所なのです。

 Ha‘ina mai ka puana
 Ka nani a‘o Hanalei
 Ho‘ohihi ana ‘oe i ku‘u aloha la*, e
 Hanalei no* e ka ‘oi

 ここまでたどってみて、「hanalei no* e ka ‘oi」ということばで表現されているのは、ほかにはない美しい風景がそこにある、ということだけではないような気がしています。自分が生まれるはるか昔からそこにあり、人間の命のスパンとはスケールが違い過ぎるその存在と向き合うとき、はたしてひとは、どんなことに思いを馳せることになるんだろうかと……。Kaua'i島が誕生し、その何百万年かを経てきた軌跡が、まるでむきだしのままそこにあるかのようなHanalei。そこには、人間には決して手の届かないものにさえ、ひとときふれたような気持ちにさせられる、そんな時間が流れているのではないかと思ったりもします。そうして私のこころは、どんどんその高みへと引き寄せられていく(ho‘ohihi ana ‘oe i ku‘u aloha la*)……私もいつか、そんな聖なるHanaleiを体験できることを願いつつ、筆を置きたいと思います。

by Kai Davis(1940)


*:「hana」はハワイ語で「bay」、「lei」は「curved」。

* *:『Northwest Hawai'i Times』(2006, July)
 http://www.northwesthawaiitimes.com/kpjuly06.htm
***:Molokama(Namolokama)の風景 http://great-hikes.com/blog/more-waterfalls/
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。