Ke 'Ala Ka'u I Honi

Ke 'Ala Ka'u I Honi





.Miss Aloha Hula 2014 - Ke'alohilani Tara Eliga Serrao .


 私が愛してやまないその香りは、
 島々を包むようにただよっている。
 そんな(ハワイのすみずみにまで広がる)かぐわしさのほうへと、
 私の賞賛の思いは、(あふれんばかりに)引き寄せられていく……。

 Ke `ala ka`u i honi
 Po*hai na mokupuni
 Hiki pu* me ke aloha
 I laila ko`u mahalo

 モキハナの香り、あまい風のようにやってくるその空気に包まれて、
 私はいつも呼吸するように、そのかぐわしさとともにある。
 そうして私のもとに訪れる、aloha(に満ちたこの気分)……。

 Ka pua o ka mokihana
 Onaona ma*puna hanu
 A`u i honi ho`omau
 Hui mai nei ke aloha

 ハワイの島々(na* mokupuni)をくまなく包む、あるすばらしい香りのことを、すべて語らんとするかのようにことばが重ねられていく『Ke 'Ala Ka'u I Honi』。香りの描写が続くこの前半部分は、まるで歌自体があまい香りそのものでもあるかのような雰囲気があって、香りを表現するハワイ語が華やかなメロディにからみつくような、しっとりと艶やかな雰囲気もあります。そんなふうに、香りについてはとことん饒舌に語られる一方で、香りにたとえられているであろう対象を暗示することばが少ないことも、このmeleの特徴ではないかと思ったりします。というか、なんの前置きもなく「私はその香りをずっと呼吸してきた」(Ke 'ala ka'u i honi)で語りはじめられるあたり、なんとなく唐突な印象があるような……。
 そんな思いであれこれ調べるうちに、このmeleのいきなりな感じは、もともとあったchant(詠唱、oli)を、現代風に短くアレンジしていることによることがわかりました*。そう、『Ke ‘Ala Ka‘u i Honi』は、もとをたどれば、Liliuokalani女王をたたえた「he mele inoa」(name chant)*である、『He Inoa No Liliu』にいきつくようなのです。
 この『He Inoa No Liliu』は、1868年には『Pua Nani O Hawaii』というタイトルのchantに形を変え、1888年には同じタイトルのもとで現代風にアレンジされたとのこと。そして、この二つのバージョンを元に、Keala Carter(1881-1981)とその息子であるTom Carter Jr.が作った楽曲が、1945年にLinda Dela Cruzによってはじめてレコーディングされた『Ke ‘Ala Ka‘u i Honi』だとされています。
 1945年のCarterバージョンに先立つ二つの作品の歌詞をみると、「he inoa no Liliu」(この歌はLiliuを讃えるネームチャントです)といった文言こそないものの、「auhea wale ana 'oe」ではじまる大切なひとへの呼びかけとともに、そのだれかが「pua nani o Hawaii」(ハワイを代表する花)であることが表明されています**。「Pua」(花)は、恋人や子どもといった身近にいる大切なひとをたとえて用いられることも多いことばですが、『Pua Nani O Hawaii』の「pua」については、だれかが個人的に思っているというよりは、ハワイのひとびとが思い慕っているひと(つまり、Liliuokalani女王)であることが、あいまいながらも示されているわけですね。
 一方、それらを受けて作られた『Ke 'Ala Ka'u i Honi』のほうはというと……歌詞を比較してみると、「auhea wale ana 'oe」の部分がないことも含め、先行する二つの楽曲の原型をほぼとどめていないことがわかります。ハワイの伝統的なchant(oli)では、まずその最初の部分で大切なことが語られることが多いことを思うと、この切り詰め方は決定的だったかもしれません。始まりの部分がカットされてしまったことで、だれに向けて思いを伝えようとしているのかがまったくわからなくなってしまったわけですから……おそらく、『Ke ‘Ala Ka‘u i Honi』のいきなり感の正体は、このあたりにあるのではないかと思われます。
 ちょっとアレンジが強引すぎやしないかと思ってしまいますが、19世紀のチャントを20世紀のポピュラー音楽にリメイクする際に、かなり大胆な圧縮が行われることは決してめずらしくはなかったようです***。そう、長い朗読のようなことばの連なりを楽しむハワイの伝統的なchant(oli)のスタイルは、現代のポピュラー音楽にはそぐわないわけですね。

 Ho'ohilaの水辺、この名高い流れは、
 鳥が求めもすれば、風景をいろどりもする。

 Kahi wai `o Ho`ohila
 Keia wai kaulana
 A ka manu e inu wai
 Wehiwehi wale `ia uka

 Palaiのシダの生まれたての葉っぱを、
 Halaとともに編んだもの、
 (それこそが)凛とした空気に包まれた私の大切なレイ
 (であり、ここまで語ってきたひとの象徴だといっていい)。
 そして、Lanihuliの場所で振り返る
 (その姿をみたような幸せな思いこそが、この歌のメッセージなのです)。

 Ka liko o ka palai
 I wili pu* `ia me ka hala
 Puana ku`u lei i ke anu
 Huli e ke `alo i Lanihuli

 こんなふうに、最後までLiliuokalaniの名がまったく語られない『Ke'Ala Ka'u i Honi』。唯一、最後に登場する地名、「Lanihuli」(文字通りの意味は「高貴なひとが振り返るさま」)****の部分だけは、Liliuokalaniの微笑みに胸ときめかせるようなニュアンスが感じられますが、残念ながら、こうしてLiliuの魅力が熱く語られる部分も、20世紀の甘いラブソングとして解釈されてしまうことも多かったのではないかと想像されます。それでもこの歌が、150年のときを経て今日まで歌い継がれてきた理由はなんなのか?が気になるとともに、同じ人物のことを歌っていても、そのときどきにイメージされていたLiliuokalani像は違っていたのではないか……と思ったりします。まず、1868年のchantバージョンは,当時29歳だったLiliuokalani女王を讃えて作られたものですが、1888年にリメイクされたときは、年を重ねてもひとびとを惹きつけてやまない女王を描写しているはずですし……そして、この1888年バージョンについては、当時の時代背景も重要ではないかと思ったりします。そう、1887年にKalakua王が亡くなり、米国資本が台頭するなか、王朝の形骸化が絶望的なまでに進んでいたハワイ。そんな状況にあって、王朝を引き継ぐべく期待されていたLiliuokalani女王に対する思いは、それこそ祈りに近いところでことばにされたのではないかと思うからです。
 そんなmeleに込められた熱い思いも、1945年のCarterバージョンからはすっかり抜け落ちてしまったものと思われます。それでも、21世紀を迎えたいまになって、このmeleがMerrie Monarchで歌い踊られているという事実は、ハワイのひとびとが、そこになにか今日的な意義を感じとっている、あるいはそれを見出そうと試みていることの現れではないかと思ったり……*****。そんなこんなで、時代が移り変わってもそのときどきのひとびとの気持ちに寄り添うように歌い継がれる、そんなmeleがハワイにはあることを教えられた、『Ke 'Ala Ka'u i Honi』なのでした。

*:「he mele inoa」(name chant)は、王族などの偉大な人物のことを讃えて歌われるもの。
**:「auhea wale ana 'oe」(文字通りの意味は「where are you?」)は、慣用的には呼びかける対象に投げかけることばとして、「Listen!」に近い仕方で用いられます。
***:ハワイ王朝の6代国王となったWilliam Charles Lunalilo(1835-1874)が、自らに起こったつらいエピソードをもとに作ったchantに後にメロディがつけられ、今日まで歌い継がれている『'Alekoki』あたりにも、同じような事情があるようです。
『'Alekoki』についてはこちら。http://hiroesogo.blog.fc2.com/blog-entry-4.html
****:「Lanihli」は、O'ahu島の山側、Nu'uanuにある山頂の名。
*****:このmeleの変遷については、Ha*lau Mo*hala 'Ilimaのkumu hulaであるKi'hei de Silvaが、2011年のMerrie Monarchにエントリーした際にまとめたという文章を参考にしています。
 http://www.halaumohalailima.com/HMI/Ke_Ala_Kau_i_Honi.html
ちなみに、Youtubeの画像は2014年のミスアロハフラのパフォーマンスですが、そこでは『Ke 'Ala Ka'u i Honi』が、旧バージョンである『Pua Nani O Hawaii』と組み合わされています。

by Keala Carter, Music by Tom Carter Jr.
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。