E ho'i mai no* ka*ua la* e pili Ka ua loku kaulana a'o Hanalei
軽やかに弾むハワイ語が、ひとつ、またひとつと重ねられるたびに、はやる気持ちをどんどん盛り上げていくような、そんな印象のある『Ka Ua Loku』。Hanaleiに連なる山々(na* pali)の、その際のところを縁取るように(ke nihi a'e nei)降り続くというあたりから、低く垂れ込める雨雲が、山の頂を白くおおっている風景も目に浮かびます。 Hanaleiといえば、Kaua'i島の北側に位置し、海沿いから山深い地域にまでひろがるエリアです。地図でみると、その海岸線にひときわくっきりと弧を描いているのがHanalei湾で、その名の由来が「curved bay」であるのもなるほどなぁと思われます。そして、Hanalei湾周辺の海沿いにはりつくようにわずかな平地があり、その際に迫るように険しい山々がそびえているようです。つまり、ほぼ垂直に切り立った山肌が、直接海に面しているような感じですね。そして、この歌のタイトル『Ka Ua Loku』そのままに、Hanaleiといえば、その山々に降り続くどしゃぶりの雨(ka ua loku)で知られる(kaulana)といわれるほど、年中雨の絶えない地域でもあるようです。そして、そんな雨の風景を見上げながら、海から届けられる「ka hoene」(やさしく響く音)に耳を傾けてもいる……こんなふうに、海も山もともに体感できるシチュエーションは、隆起した大地が海に迫っているKaua'iならではといえるかもしれません。 一方、歌のなかでは、このHanaleiの雨について、「laua'eの葉」*をぬらすとともに「胸に抱くいとしいひと」に寄り添いもすると描写されています。そう、雨は「ku'u ipo」にくっつく(ho'opili)ように降る……だとすると、「ka ua loku」とはつまり、いとしいひとを丸ごと抱きしめたいという思いで最高に盛り上がってしまった、作者自身の思いを象徴することばではないかという気がしてくるんですね**。そう考えると、冒頭で「e ka ua o Hanalei」(Hanaleiの雨よ)***と、なぜか雨に向けて呼びかけられることも、「これから私の心象風景をことばにしよう」という宣言のようにも思えてきます。 さらに、雨の描写に続く海からの気配を感じさせる部分には、波のささやきが、まるで(思いを)「立ち上がらせるもの」(he ala)だと歌われています。もしかすると、美しい波の音に静かに耳を傾けているというよりは、恋の衝動にいてもたってもいられない、そんな感じなんでしょうか。そして、とうとうがまんできなくなって、「E ho'i mai no* ka*ua la* e pili」(さぁ、ぼくら一緒になろうよ!)にいたる、みたいな……。 こんなふうにたどってみると、表向きには自然の風景を美しく描写しているだけにみえて、実はそこに、ムクムクっと立ち上がってくる恋心が、その勢いのままに重ねられていることがみえてきます。1920年代にこの歌を作ったという、Alfred U.Alohikeaというひと、途轍もなく精力的かつ情熱的で、あふれる思いのままに生きたような、そんな男性だったのではないかと想像しています。
*:「laua'e」はマイレに似た香りのするシダ。香りは異性を引きつける魅力の象徴でもあることを考えると、laua'eに「ku' ipo」(恋人)が重ねられているのかもしれません。 **:『Ka Ua Loku』の「loku」は、いわゆる「どしゃぶり」を表すことばですが、比喩的には「深い思い」(deep emotion)を意味します。 ***:「E +名前」で、その対象への呼びかけのことばになります。
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