Pua Lilia

Pua Lilia





The Brothers Cazimero perform "Pua Lilia" at the 25th Annual May Day Concert in 2002
produced by Jon de Mello for The Mountain Apple Company • HAWAII.




 お~い雨よ。
 山々の峰を縁取るようなその姿(には)
 (まるで)あの花がつまれたことを思い起こさせるようなところがある。

 'Auhea wale 'oe e ka ua
 Ke nihi a'e nei i na* pali

 
 静かに記憶をたどるように、愛するひとのおもかげが語られているような雰囲気のある、『Pua Lilia』。そんなゆっくりした語り口に反して、いきなり「つまれたその花」(ia pua i 'ako 'ia)の話がはじまるあたり、かなり直球で思いが表現されている印象もあります。そう、ハワイ語のラブソングで「つまれた花」といえば、「意中のひとと思いをとげる」みたいなニュアンスがありますから……それにしても、冒頭の「'Auhea~」のところで、その花にではなく「雨」(ka ua)に呼びかけられているところは、あれっ?て感じなのですが、これについては、同じ作者によるラブソング、『Ka Ua Loku』(文字通りの意味は「どしゃぶりの雨」)のなかで、雨が作者自身の恋心の象徴として語られていることが理解の助けになると思われます*。『Ka Ua Loku』には、山々の峰に白くもやった雨雲が、彼自身の欲望そのものとして登場します。つまり、あの日あのとき、思いを寄せるあのひとを抱きしめたことなんかを思い起こさせる、そんな雨なわけですね。

 その丘は、こんなふうに丸いステキな形をしているんだ。
 そう、僕はそのまるいところをうっとりと楽しむのさ。
 僕の大切なお花は、においたつような魅力にあふれてもいる。

 Ka helena o ia pua i 'ako 'ia
 He popohe mai nei ia uka
 Ia uka ho'i a'u e walea ai
 Me ke 'ala onaona o ku'u pua

 う~ん、なんなんでしょう。その丘(ia uka)って……その丸い部分(he popohe)を自分のほうに引き寄せているようですが、「ia uka」ということばか重ねられるあたりには、繰り返し繰り返し、そのもり上がった部分(?)を愛撫する(e walea ai)ような、どこか官能的な雰囲気を感じます。しかも、そこには、その大切な花のうっとりするような匂い(ke 'ala)が立ち上ってもいる……。愛し合うふたりのあいだだけにある、ある親密な交流空間が、たった数行の歌詞にギュッと凝縮されている、そんな感じでしょうか。

 この私がずっとleiにして身につけていたい花、それがあなたなのです。
 そんな、私の大切なユリの花のかぐわしさ(に向けて、この歌をささげます)。

 He pua 'oe na'u i lei mau ai
 Ke 'ala o ku'u pua lilia

 こうして最後に、あなたは「この私が」(na'u)ずっとレイにして身につけておきたい花なのだと締めくくられます。レイといえば、なによりも特別な意味を込めて、誇らしい気持ちで身につけるものですが、これだけ「kaona」(double meaning)を駆使した歌ですから、もう少し想像力をたくましくしてもいいかもしれません。そう、丸く連なったレイの形が、パートナー同士が抱き合うときに、お互いのからだに腕をからませている状況を連想させることとか……。
 彼の記憶のフィルターを通して、限りなく魅力を放つ存在として描かれているこの女性、いったいどんなひとだったのか……細かい背景はわかりませんが、ともかく、彼にとっては、「lilia」(lily)そのものだったといえる、大輪の花のようなひとだったのかもしれませんね。そして、むせかえるほどつよく香るユリの花のように、なんども反芻できるほどに深く愛し合った、そんなひととの特別なひとときがあったのだろうと想像しています。

*:http://hiroesogo.blog.fc2.com/blog-entry-183.html

Alfred U.Alohikea
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。