Rain Li'ili'i

Rain Li'ili'i




performed by Halau O Ka Ua Kani Lehua


 いとしいひと、Kepolaよ、あなたはtuberoseの香りに包まれているよう(なひとなのかな)。
 色あせることのない花のように、永遠の美しさをたたえているような……。
 (そんなあなたの姿が)私のからだの特別なところをとびきり感じさせる。
 (きっとあなたは)、あまい香りのようなひとなんだと思う。そう、美しい雨のなかで、(ふいにその気配を)感じるような……。

 Ku'u ipo, Kepola, i ke 'ala tuberose
 Pua mae 'ole o ka nani mau loa
 'Olu'olu nui i ko'u kino 'ihi'ihi
 He 'ala onaona 'oia i ka ua nani

 明るく弾む陽気な感じが、フォークダンスを踊るような軽やかさを思わせる『Rain Li'ili'i』。いきなり「ku'u ipo」(私の愛しいひと)からはじまって、立て続けにそのひとをたたえることばが連なっているあたり、かなり直球で思いを投げ続けているような雰囲気もあります。それにしても、「He 'ala onaona 'oia」(彼女は香りのようなひとだ)とも歌われ、ことばを尽くしてその美しさが語られているこのKepolaという人物、いったいどういうひとだったのかが、まずは気になるところ……。
 親しげなことばの調子から、自分の恋人のことを歌っているのかと思いきや、この歌の作者であるDennis Kamakahiは1953年生まれ、一方、Kepolaは18世紀末から19世紀半ばに生きた、Kaua'i島最後の女王という立場にあったひとだといいます。どういうこと?!って感じですが、Dennis Kamakahiは、彼女の肖像をみてこころうたれたときの、ある特別な思いをこの歌に託したようです。そう、自分のからだのある大切な(秘められた?)部分に(i ko'u kino 'ihi'ihi)、やすらぎが満ちてくる('olu'olu nui)のを感じながら……。Kamakahiが、はたしてKepolaのどんなところにグッときたのかは知る由もありませんが、彼の想像力(妄想力?)が、半端なものではなかったことだけは確かかもしれませんね。

 繊細でひそやかな雨(のようなひと)、(あなたは)Li*hu'eの山側をぬらす(あのしずくのようだ)。
 天の恵みでもあるそれは、緑もえるその場所からもたらされる。
 そしてそこは、(あの)妖精たちが無数にすまう森(でもあるのですね)。
 (こうして)あなたの白いすずしげな肌が、(私を)ドキドキさせる(のはそういうことなのだと思う)。

 Rain li'ili'i i ka uka o Li*hu'e
 Noenoe lani mai uka uluwehi
 I laila i ka wao o ka lehulehu nui
 Hu'i konikoni i kou 'ili hau kea
 
 Kaua'i島南東部の海沿いの街、Li*hu'e。Dennis Kamakahiは、その山側にひろがる雨の風景に、Kepolaの印象を重ねたようです。そう、その山の頂きを白くおおう、やわらかで霧のようでもある雨のひそやかな感じを思い浮かべながら……。
 それにしても、彼が目にしたKepolaの姿って、いったいどんな感じだったのか……このあたりは、彼の描写から想像するほかはないのですが、少なくともその肖像は、その時代背景から考えると、写真というよりは、まさに「肖像画」と呼ぶべきものだったのではないかと思われます。というのも、Kepolaは、あのKamehameha一世と同じ時代を生きた人なわけですから……。
Kamehameha一世といえば、よく見かける、あの妙に存在感のあるのっぺりとした肖像画が目に浮かびますが、絵のタッチはともかくとしても、「kou 'ili hau kea」(あなたのすずしげな白い肌)といっても、ホントウに白いかどうかはわからなかったのではないかと思ってみたり……少なくとも、写真を参照するようにはいかなかったはずですね。それでもそこから、なにかビビッとくるものを感じたということは、その容姿以上に、彼女の人柄や人生を感じさせるような肖像だったのかもしれません。というか、ひょっとするとKamakahiは、Kepolaにまつわるエピソードをある程度知っていたのでしょうか……。

 (せめてこの思いに)応えてくれないか、うるわしく気品に満ちたあなた。
 (あろうことか、そんなあなたの)若々しい姿にグッときてしまった私……。
 キスなんかしようものなら、(もう天にも昇るような気持ちになるであろう)その美しさ。
 (そして、あいかわらず)私のこころのなかに、ひっそりと心を湿らせる雨(は降り続くのです)。

 'Auhea wale 'oe , e Wahine Kehakeha
 Li'a au no ke ala o ka wahine 'o*pio
 Nani wale no* ia e honi ika ihu
 Ka ua li'ili'i o ku'u pu'uwai

 高貴な血筋に生まれたうえに、光輝く美しさにも恵まれ、おそらく当然のようにKaua’i島の王、Kaumuali'iに見初められたのでもあろうKepola。ですが、Kaua’i島最後の女王と語られることからもわかるように、その生涯は、幾多の苦難を運命付けられたものでもあったようです**。軽いノリで歌われているような印象がありますが、実は、そんなKepolaの悲しみから逆境に耐える底知れぬ強さまで、一切合切が昇華されたような、そんなmeleだったりするのかも―そうして空想のなかでよみがえる彼女は、もはやこの世のものとは思えない姿でイメージされるのかもしれませんね。「(あの)妖精たちが無数にすまう森」(i laila i ka wao o ka lehulehu nui)からやってくる、「天の恵みの雨」(noenoe lani)にもたとえられるような……。
 そして、こんなふうにmeleをたどりながら思うんですね。一日観光で訪れるだけでは出合えない、そんなKaua’i島があるんだなと……。地上の存在を超えたなにかにふれたような思いをいだかせるどこか幻想的なところが、Kaua’i島の雨の風景にはあるのかもしれないと想像しています。

by Dennis Kamakahi

*:彼女の正式な名前はDeborah Kapule Kehaiha'aku*lou。
**:Kamehameha一世に降伏しKaua’i島がその支配下となったのち、Kepolaは夫であるKaumuali'iと引き離され、生涯ともに暮らすことはなかったようです。しかも、その後に再婚した相手も、Kamehameha一世の妻、Kaahumanuに連れ去られたんだとか。そんな理不尽なことが許されていいのか?!と思ってしまいそうですが、王族という特別な地位にあることで、個人として生きることよりも、まずは公人というか島の象徴であることを強いられた、そんな時代だったのかもしれません。

※Kepolaにまつわるエピソードについては、以下を参照しました。
http://freepages.genealogy.rootsweb.ancestry.com/~forestforthetrees/documents/lastqueen.htm
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コメント

なお

ありがとうございます
リリーさん、早くにリクエストに応えて頂いてたのに、確認が遅くなりすみません。

作者のことや時代背景も書かれていて、とても参考になりました。
3日後に控えるホイケ前に、訪れて良かったです。
この歌詞を踏まえながら、楽しく踊ります!

隙間のりりー

なお様
参考にしていただけてうれしいです。ノリのいい歌だなと思って聞き流してしまってましたが、おかげでじっくり読む機会がもててありがたかったです。
ホイケですか、ドキドキですね。せっかくの晴れ舞台、精一杯楽しんでくださいね。
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。