La*na'ikaula

La*na'ikaula





From his debut solo CD, Kaunaloa. Kuana Torres Kahele Band perform Lana'ikaula live from Chiba, Japan.
Co-written with his friend Kellen Paik, the song speaks to the beauty of the island of Lana'i.



 (見わたすと)まずはその美しさに圧倒される場所、La*nai。
 (それはなによりも)この土地に暮らすひとびとの目には(特別なものであるはず)。

 He nani ka 'ikena ia* Lana'ikaula
 Ma o na* maka o na* kupa 'a*ina
 
 開口一番、まずは「その美しさ(に圧倒される)」(he nani ka 'ikena)と歌われ、Lana'i島の風景を目にしたときの感動が、ひとつ、またひとつと語られていく『La*na'ikaula』。「La*na'i」は島の名前ですが、そのあとに続く「kaula」は、弧を描くような地形をあらわすことば。写真や地形図から想像するしかないLa*na'iですが、ゆったりとカーブしながら海にも空にも広がる風景を思い浮かべつつ、「見わたすと」と訳してみました。それにしても、やや唐突な印象を受ける「地元のひとの目には」(ma o na* maka o na* kupa 'a*ina)というフレーズ、いったいどういう含みがあるんだろう?と気になっていたところ、CDアルバムのブックレットに、次のようなエピソードが記されていました。「2009年、尊敬すべき地元のひとや、歴史研究家であるKepa* MalyとともにしたLa*na'iの旅には、特別な経験になるだろうなという予感がありました。(作詞担当の)Kellenと(作曲担当の)僕は、La*na'iじゅうを見て回ったのですが、きっと島のことを歌にするためのインスピレーションが得られるだろうなと……」(by Kuana Torres Kahele)。なるほど、この歌には、いわば旅日記的な内容が盛り込まれているわけですね。しかも、観光客としてではなく、「土地に暮らすひとびとの」(o na* kupa 'a*ina)目に映るLa*na'i島に出合えるかもしれないと、期待に胸ふくらませてめぐった旅の記憶が……。

 そこに住まうひとびとはみな、パイナップル(で栄えたその大地)を誇りに思っている。
 Kauna'oaがその象徴でもある、愛すべき島(のすべてを)。

 Ha'aheo na* kama'a*ina i ka pine'apala
 Me ke kauna'oa o ka 'ailana hiwahiwa

 Maunaleiは雲をいただく場所。
 (その姿は)まるでleiで飾られてもいるよう。
 そしてそこは(かつて)、カウボーイたちが行き交ったところでもあって……。

 'Ohu'ohu'o Maunalei i ka lei 'o*pua
 Kahi o na* paniolo i hehi mau ai

 Maui島の西側に位置し、人口約3千人、360平方キロメートル*ほどの小さな島、La*na'i。その名を耳にしても、まったくイメージできるものがないほど馴染みのない島なのですが、まずはこのバースに登場する「パイナップル」と「カウボーイ」にかかわる島の歴史を少したどってみたいと思います。
ハワイに米国の資本が盛んに進出したころ、La*na'i島にも、島のひとびとの生活を変える時代の波が次々と押し寄せ、その風景を大きく変えていきました。19世紀末までは砂糖きびのプランテーション、20世紀に入ると牛の放牧が盛んに行われたようですが、1922年には、牧場も「Dole's Hawaiian Pineapple Company ltd.」に買い上げられ、世界最大のパイナップルプランテーションに姿を変えます**。そして、「そこにかかる雲がleiのように美しい」と歌われる、島の北東部にあるMaunaleiは、そんな島の激動の歴史の舞台だったところでもありました。パイナップル(pine'apala)が歌われているバースには、もうひとつ、La*na'i島の象徴として愛されている植物、「kauna'oa」***が登場します。島が姿を変え、そこでの暮らしが変わっても、そのすべてを見届けながらその地に根を張るkauna'oa……島の変遷を知るひとにとっては、特別な感慨でもってながめてしまうような、そんなkauna'oaのある風景があるのかもしれません。
 牧場の多くがパイナップル畑に転用されてからも、牛の放牧は行われていたようですが、1951年にDole社が2500頭の牛を売り払ったのを最後に、大々的な牧畜はLa*na'i島から姿を消します。「paniolo」(カウボーイ)が行き交った場所という表現は、そんなかつてあった島の風景を思いながら歌われたのかもしれませんね。

 La*na'ihaleよ(あなたを見上げると)、
 (なぜだか)リスペクトする気持ちがわきあがってくる。
 そこには、訪れる旅人たちをもてなす場所もあって……。

 Mahalo aku ia* 'oe e La*na'ihale
 He hale kipa 'olu i na* malihini

 La*na'ihale(3,379フィート)は、島のなかほどにあるLa*na'i島で最も高い山。そこからクレーターのように峰が続いていて、島の約2割ほどの土地を丸く囲み、壁のように連なっているといいます。そんな高度のある島の中心部分からなだらかなスロープが四方に広がっているのですが、そこは牧畜が盛んだったころ、牧草地として利用されていたエリアでもありました。やがて放牧も行われなくなり、70年間続いたパイナップルプランテーションの歴史も幕を閉じるわけですが、その100年ほどの間に、島では深刻な環境破壊が進んでいました。なんと、かつて飼われていたヤギなどの家畜が野生化して繁殖し、人間の手に負えないほど増えすぎてしまったというんですね。緑豊かだった土地も、彼らに食い尽くされて乾燥化が進み、どんどん荒れ地と化していったようです。19世紀なかばに西洋式の土地の個人所有が始まって以降、外国資本による開発が進む一方で、土地に根ざした暮らしを営んでいたハワイのネイティブのひとびとが減ってしまっていたことも、土地の荒廃を加速したようです。

 La*na'ikaulaのこと、僕のその場所に寄せる思いは伝わったでしょうか。
 そこは、あの島に暮らした祖先たちの深い思いが層をなしているような、そんな特別なところなのです。

 Ha'ina mai ka puana ia* La*na'ikaula
 Punia i ke aloha nui o na* ku*puna

 かつてそこに暮らした「祖先たちの深い思い」(ke aloha nui o na* ku*puna)が、島の「そこかしこに充満している」(punia)……冒頭のバースで、「地元のひとの目には」と表現されていたのは、いまを生きるひとに限らず、もっと長いスパンで、La*na'iをいつくしみ守り続けてきたひとびとのことがイメージされていたようです。
 KuanaさんたちがLa*na'iをともに旅した歴史学者、Kepa* MalyらによるLa*na'i研究をまとめたレポートには、La*na'iに伝わる古い民話や欧米化以前の島の暮らしから、新しい産業によって変わっていった島の歴史、そしてLa*na'iの現在の姿までが、歴史的資料および考古学的なフィールドワークの記録とともにまとめられています。そのレポートの冒頭にあるサマリーの部分に、こんな一節がありました。「この研究を進めるにあたってできることは、かろうじて残された歴史の断片をなんとかつなげ、島の物語をつむぐことなのだが―そのためには、土地のひとびとをその環境に結びつけるのと同じくらいに精神的(spiritual)、かつ多面的な情熱と、土地への深い思い(aloha)が求められるのです」。おそらく、旅の道中、KuanaさんとKellenさんは、ことあるごとに、Malyさんたちと語り合ったであろうと思われます。そう、La*na'iの過去、現在、そして未来について……。そんな貴重な体験を通して、Kepa* Malyらのことば通りの情熱で歌われたのが、この『La*na'ikaula』であるといえそうです。

Kellen Paik & Kuana Torres Kahelle

*:種子島の8割くらいの広さ。
**:そんな歴史的経緯から、La*na'iはいまも「Pineapple Isle」(パイナップルの島)とも呼ばれるようです。
***:Kauna'oaは、細いオレンジ色のツル植物。アサガオに近い種のようですが、葉がなくほかの植物に寄生するという、ハワイ固有の植物種です。

参考資料
Kepa* Malyらの研究レポート
http://nebula.wsimg.com/70897503c8d308a5989ee319683b08b5?AccessKeyId=28B6B9B521ECBFB5989C&disposition=0&alloworigin=1
Kepa* Malyらの活動がわかるサイト
http://www.kumupono.com/
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。