'U*lili E*

'U*lili E*





KUANA TORRES KAHELE


 ごきげんに歌ってるね、'u*lili。
 海のそばに住んでるきみ。
 (まるで)Kekahaの岬で見張り番をしてるみたいだね。
 (いつみても)ゆらゆらとおだやかな海なんだけどさ。

 Hone ana ko leo, e 'u*lili e*
 'O kahi manu noho 'ae kai
 Kia'i ma ka lae a'o Kekaha
 'O ia kai ua lana ma*lie

 ねぇ、'u*lili(って呼びたくなる、そんな気分)。 
 だからさ、'u*lili(いったいなやってるの)。
 そう、'u*liliは海辺を走りまわるもの。
 ゆらゆらとおだやかな海辺をね。

 'Ulili e*
  'ahahana, 'u*lili 'ehehene,
  'u*lili 'ahahana
 'U*lili ho'i,
  'ahahana, 'u*lili 'ehehene,
  'u*lili 'ahahana
 'U*lili holoholo kahakai e*
 'O ia kai ua lana ma*lie

 軽快なリズムと楽しげなメロディが、なぜか聴いてるだけで、うきうきと弾むような気分を連れてくる『'U*lili E*』。'U*liliは、ハワイ各島の砂浜や岩場などの水辺に、広くみられるシギ科の渡り鳥*。まず、「Hone ana ko leo」(やさしい声で鳴く)と歌われていて、どんな声で鳴くのかが気になりますが、'u*liliというハワイ語名は、どうもその鳴き声からきているようです。そして、英語では「wandering tattler」(うろうろするお喋りさん?)とも呼ばれる'u*liliなのですが……「'U*lili holoholo kahakai e*」('u*liliは海辺を走りまわるもの)という描写からすると、きっといつもせわしなく走り回っている、そんな鳥ではないかと思われます。体長30cm弱と小柄ながら、写真で見ると足が長い感じはダチョウを思わせるプロポーションだったりする'u*lili。「Kekahaの岬で見張り番をしてるみたい」(Kia'i ma ka lae a'o Kekaha)と歌われているのは、なにをそんなにバタバタしてるの?!といいたくなるような、ちょっとコケティッシュなその動きのせいだったりするのかもしれませんね。そして、わけもなく忙しそうに動き回る姿とは対照的な、おだやかに広がる浜辺の風景……そんなこのコントラストが、この歌には描かれてもいます。これこそが、穏やかなハワイの日常ってところでしょうか。

 ほう、ko*leaちゃん、(きみも)歌ってるわけだね。
 (ところで)Kahikiはどんな具合? 
 えぇ、おかげさまで。
 緑生い茂るゆたかなところなんだよね。
 (そう)あまい香りで満たされているような、そんな島……。

 Hone ana ko leo, e ko*lea e*
 Pehea 'o Kahiki? Maika'i no*!
 'O ia 'a*ina uluwehiwehi
 I hui pu* 'ia me ke onaona

 ここに登場するko*leaも、'u*liliと同じ渡り鳥の一種**。そして、「Kahiki」は「タヒチ」を指すことばなのですが、ko*leaが帰っていく方向は、ハワイからするとタヒチとは逆なので、ここでは「外国」という意味で用いられていると解釈してみました。それにしても、「お国はどうだい?」(Pehea 'o Kahiki?)、「えぇ、おかげさまで」(Maika'i no*!)なんて、鳥とあいさつを交わしているような歌詞がユーモラスですね。
 そしてハワイには、ko*leaが擬人化されている次のようなことわざも、いろいろとあったりするようです。「Ko*leaは(太って)胸の毛が濃くなると、Kahikiに戻って子どもを生むもの」。この歌にもあるko*leaの生態そのものですが、そのこころは、「ハワイに来て稼ぐだけ稼いだら、国へ帰ってしまう外国人」みたいな、刹那的な異邦人を揶揄することばのようです。一方、先に登場した'u*liliについても、やたらといばるひとの態度を'u*liliがうろうろする動きにたとえたり、「'u*liliは波のしぶきだって追いかける」(小さなことにジタバタするひとのたとえ)といった表現があったりします。「'U*liliが鳴くのは誰かが近づいてくる前ぶれ」みたいなことわざもあって、最初のバースの「見張りをしてるみたい」に通じるものも感じられます。Ko*leaにしても'u*liliにしても、「なんかへんなやつらだよね~」みたいな、でも気になって仕方ないみたいな、ちょっと微妙な感じなんでしょうか……少なくともハワイのひとびとにとっては、その存在を無視できな気になるあいつ(?)的な鳥たちなのかもしれません。
 ここまでがもとからあった歌詞なのですが、これらに続ける仕方で、Kuana Torresが2バースを付け加えています。CDの解説にあった彼自身のことばによると、それらは旅に生きる鳥たちの一年の、元の歌にはない残りの部分を語るものだといいますが、ともかくその内容をみてみると……

 グッグッって体を持ち上げてみたりしてさ、'u*lili。
 ニイハウの浜辺で、気持ちよく踊ってるってわけだね。
 上へと思ったら下へ……(ってなんだかせわしない踊りだよね)。
 (ぶるぶるって)頭のところを地面にくっつけたりしてさ。

 Huhuhulei, e 'u*lili e*
 Ha'a 'olu i ke one a'o Ni'ihau
 I luna a i lalo e ha'a mai 'oe
 Ke 'oni'oni nei, lae honua

 う~ん、いったいなんなんでしょう?この奇妙な動き……前半で語られた走り回る様子に、負けず劣らずの落ち着きのなさですね。長旅に備えて、鳥たちはしっかり脂肪をため込むようなので、もうすばしっこい走りを見せることはなかったりするんでしょうか……そして、場所はなぜかニイハウ島。そう、ハワイのおもだった島のなかでも、一番北西に位置する島ですね。もしかすると、そろそろ北方向へとハワイを飛び立とうとする、そんな状況なんでしょうか。だとすると、なんとも意味不明な'u*liliたちの動きも、彼らなりの武者ぶるいってところなのかもしれません。

 そしてko*lea、きみは進む、猛スピードで。
 ごくたまに、ちょこっと休憩するだけなんだよね。
 ゆったりと、楽しんでるじゃん……って、ご機嫌に滑空してる姿をみてると思うよね。
 気持ちのいい風をきって、ビュンって飛んでいくんだもんね。

 Holoholo,ka'aholo, e ko*lea e* 
 E luana iki wale mai ana no*
 E nanea, e walea ka manu ki*kaha
 E uhaia*holo ana i ke aheahe

 「どんどん進む、猛スピードで」(holoholo, ka'aholo)……いよいよ鳥たちは旅だったようです。「ごくたまにしか休んだりしない」(e luana iki wale mai ana no*)と歌われていますが、太平洋を横断するのに、いったいどれほど飛び続けるんだろう?と思うと、もうそれだけで気が遠くなりそうです。そして、その昔、渡り鳥さながらに、南太平洋の島々から(ハワイのある)北に向かったハワイのひとびとの祖先たちも、星のまたたきとともに、旅する渡り鳥を頼りにしたはず……そんなことをあれこれ思いめぐらせながら、ハワイのひとびとにとっては、海を渡る太古の夢そのものでもあるような、そんな'u*liliでありko*leaなのかもしれないと想像しています。

*:'U*lili、および後半に登場するko*leaは、8月ごろから翌年の4、5月までをハワイで過ごし、夏の間はアラスカやカナダに戻る。子を産み育てるのは夏季。
**:「ko*lea」はチドリ科。

参考文献
Pukui MK: Olelo No’Eau-Hawaiian Proverbs and Poetical Sayings. Honolulu, Bishop Museum, 1983

by George Keahi & Harry Na*'ope
additional lylics by Kuana Torres Kahele 


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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。