Maunaleo

Maunaleo





 愛すべきMaunaleo。
 それは、ひそやかで霧のような雨にきらきら輝いて。
 まるで山はだを覆うために仕立てられた、美しいケープをまとっているよう……。
 その力強さでもってたたえられそこにある、愛おしさそのもの(というべきか)。
 大切な存在、そう、ほかにたとえようもなく、天にも届かんばかりの(その姿に、ただただ心がふるえるのです)……。

 He aloha no* 'o Maunaleo
 I lohia e ke kilihuna
 Kohu 'ahu'ao no ka uka
 He kamalani kamaehu kau i ka hano e*
 He kamalei, kamahiwa pa* i ka lani e*

 すっくと立ち上がる風景の荘厳さに圧倒されながら、しっとりと山肌を曇らせる霧の彼方に、この世とは別の世界を感じつつ歌われているような、独特の雰囲気に満ちている『Maunaleo』。Maunaleoは、ひょうたんに近いものを思わせるMaui島の、ちょうどくぼみにあたる地域にある山の名前。Maui島の南西部を海岸沿いに走るハイウェイが、山側に北上するあたりの高台にあります。そんな、海にも山にも近い地理的条件から、思わず見上げてしまう山々と、はてしなく続く大海原とを同時に見わたすことができるという、もう想像するだけで鳥肌が立ちそうな風景が、Maunaleoのあたりには広がっているようです。いわば大自然のジョイント部分にあたるその場所に立つと、ここではないどこかに通じているような、不思議な気分に包まれるのかもしれない……そんなイマジネーションさえかきたてる雰囲気が、このmeleにはあるようにも思ったりします。そう、たとえば、ときさえ忘れるある種の感動とともに、気持ちがまるごとどこかに連れ去られるような……。

 流れゆく雲にうっすらとおおわれ、
 そのやさしい心は美しく飾られているのですね。
 そう、山々によってしっかり守られている(ともいうべきか)。
 引き寄せ、抱きしめて……。
 この胸に、そう、慈しむように、そっと触れるように……。

 Po'ohina i ka 'ohu kolo
 Ka*hiko no ka poli 'olu
 Apo 'ia e na* kualono
 He hi'ina, hi'ialo, aloha e*
 Hi'ipoli, hi'ilei, hi'ilani e*

 先のバースで、「その力強さでもってたたえられている存在」(He kamalani kamaehu kau i ka hano e*)と歌われたMaunaleoの場所が、ここでは「そこに宿るやさしいこころもちを」(no ka poli 'olu)、「流れる雲が」(i ka 'ohu kolo)美しく飾るとされ、かなりしなやかでソフトな印象の描写が連なっています。また、「山々によってしっかりと守られている(取り囲まれている)」(apo 'ia e na* kualono)という表現には、その地があらゆることがらのかなめをなしているような印象もあります。そして、地理的にもMaui島の中心に位置するMaunaleoなのですが、そこには島全体をうるおす四つの水源があるといいます。このバースの後半で、「hi'i」(hold、carry)を含むことばが重ねられているあたりに感じられる、子どもをあやし慈しむような雰囲気は、まさに生命のみなもとともいえるMaunaleoそのものであると同時に、そのあふれる愛(aloha)への感謝の気持ちの表れなのかもしれません。

 私のあふれる思いを、いまこそ捧げようと思う。
 美しさあふれるMaunaleoに、
 そう、Ma*lieの風にやさしく包まれてもいるあなたに向けて。
 大切なひと、ほかにたとえようもなく、天にも届かんばかりの(その姿に、ただただ心がふるえるのです)……。

 Maunaleoに寄せるこの思いが、(こうして)深く、静かにわきあがってくる……。

 Eia ku'u lei aloha
 No Maunaleo i ka nani
 'Ohu'ohu i ka Ma*lie
 He kmalani kamaehu kau i ka hano e*
 He kamalei, kamahiwa pa* i ka lani e*

 No Maunaleo ke aloha ku* i ka la'i e*
 Aloha e*, aloha e*

 この最後のバースには、「これが僕のalohaを込めたleiなんだ」(eia ku'u lei aloha)と、目の前にいる大切なだれかに、大切に思いを込めて編んだleiを捧げているような雰囲気があります。そして、そのleiは、「Maunaleoのための」(no Maunaleo)と歌われるのですが、実はこの歌、作者であるKeali'i Reichelが、その母、Lei Reichelを思って作ったものなんだといいます。そして、CDアルバムの『Maunaleo』の歌詞には、次のような熱いことばが添えられていました。「愛すべきMaunaleoが、嵐のときも、おだやかな日にも、それまでに見たこともないほど強く、よりしなやかに、より美しく、まるですべてを守るべく現れる姿に、母の精神的な部分と共通するものを感じた」(訳は筆者)。う~ん、なんだかすごいですね。このことば通りのお母さんなんだとしたら、泣く子も黙るゴッドマザーって感じですが、単に個人的な思い出というよりも、母という存在に含まれる、ある普遍的な価値みたいなものが表現されているという見方もできるでしょうか。あるときは強く、あるときはやさしく、そして、どんなときにも無条件に守ってくれるという信頼感でもって、生きる勇気を与えてくれる、そんな存在―そうしていつのまにか、いくつになっても超えられない私自身にとっての母を思いながら、Maunaleoを見上げたときの作者の気持ちが少しわかったような気がしてきた、そんな『Maunaleo』なのでした。
 
by Keali'i Reichel(music), Puakea Nogelmeier(words)
 
 
 
 

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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。