Na'u 'Oe

Na'u 'Oe




Kainani Kahaunaele



 あなたは私のもの、大切なひと、愛するあなた。
 Nawiliwili生まれのこの私のための……。
 あなたと私は、そう、夜ふけまでともに過ごした間柄。
 Kalihiwaiの海辺で、波のささやきも聞こえるほど(静かな夜だった)……。

 Na'u 'oe e ku'u lei e aloha
 Kahi pua no Na*wiliwili
 'O 'oe a'o wau i ke kulu aumoe
 I ka 'oe* a ke kai i Kalihiwai

 とろけそうなほどにあまくささやかれる熱い思いが、夕暮れの雰囲気が似合うメロディにのせて歌われる『Na'u 'Oe』。歌声が吐息にも思えるほどのまったり感にあふれていますが、「na'u 'oe」(あなたは私のもの)なんて言い切ってしまうあたりの真っ直ぐさが、なにより心地よくこころに響くmeleだと思います。それにしても、波のささやき(ka 'oe* a ke kai)だけが聞こえる夜更けのKalihiwai*の海辺で、二人きりで過ごした……なんて表現が、なんとも艶めかしいですね。
 
 大切なleiのようなあなたは、ずっとずっとこの私を(抱きしめ)飾ってくれる。
 (そんなあなたのことを)誇らしく思うわ。
 あなたがいてくれると、私は強くなれるというか……。

 I lei no'u e lei mau ai
 E kau kehakeha i luna
 'O 'oe ku'u mea e koa ai au

 思いを込めて編まれたLeiは、なによりもその思いの象徴であり、ときにその思いを捧げる大切なひとの比喩だったりもすることば。そして、このmeleでは、愛するひとそのものであるleiをずっと(mau)身につけ、天高くかかげる(e kau kehakeha i luna)とも歌われます。なんというか、相手に対する信頼感が半端じゃないって感じですが、そんなあなただからこそ、「私を奮い立たせてくれるひと」(ku'u mea e koa ai au)でもあるわけですね**。そう、愛される喜びは、なによりも生きる勇気を与えてくれる……あるいは、leiがまずは身につけるものであることを考えると、私のための(no'u)lei(のようなあなた)がいつもそばにあることは、なによりも大きな安心感を与えてくれるという意味でもありそうです。そして、これ以上近づけないところまでいってしまった二人であってみれば、たとえばleiは、そっと引き寄せ抱きしめてくれる相手の両腕でもあって―そう、愛し合うふたりは、もうそれだけで美しい。愛するひとを(美しく身を飾る)leiにたとえたくなる気持ちが、なんとなくわかったような気がしてきました。

 ふいにあなたのことを思い出したりするの。
 赤いハイビスカスを付けている姿とか……。
 つながりのあるひとたちみんなに愛されて、
 Kalaleaの土地では一目置かれているような、そんなあなたなのね。

 Ha*li'a li'a ku'u mana'o ia* 'oe
 I ke kau pua aloalo
 Aloha nui 'ia 'oe e na* mamo
 E waiho nei i ka poli o Kalalea

 あなたのことが(ia* 'oe)、ふいに思い起こされる(ha*li'a li'a ku'u mana'o)ではじまるこのバースでは、思いの限りが熱く語られる前半とは異なり、愛するひとのことを少し距離を置いて眺めている雰囲気があります。そうして、その大切なあなたが、私ではない周囲の目にどんなふうに映っているのかが語られるわけですが……つながりのあるひとびと(e na* mamo、子孫)にもうんと愛されて(aloha nui 'ia)なんて表現が、あなた(と呼びかけられるひと)の人柄のよさを感じさせるように思われます。しかも、Kalalea(のひとびと)のこころのなかにいつもある(e waiho nei i ka poli o Kalalea)ですから、おそらく「一目置かれる存在」ということではないかと思うと、もうこれ以上にない、最高のパートナーって感じでしょうか……***。

 (こうして語ってきた)あなたの名を、誇らしく声に出してみようと思う。
 その名は……そう、Kananiっていうの。
 あなたのなにもかもが美しく、ホンモノの輝きを放っている。
 あなたは私のもの、抱きしめて、あなた、いつまでもずっと、永遠に……。

 Puana 'ia kou inoa hanohano
 Kou inoa 'ala 'o Kanani
 He nani maoli no* mai ke po'o a ka hi'u
 Na'u'oe e ku'u lei e aloha a mau loa

 ハワイ語で歌われていることを除けば、歌の構成からメロディやアレンジまで、すべて現代風といっていい『Nau' 'Oe』。ですが、最後のバースは、歌のテーマ(ka puana)を再確認するために歌われていて、古代のchant(oli、詠唱)の流れが意識されていることがわかります。しかも、ずっと語られてきた大切なあなたの名前(kou inoa)が登場してもいるあたり、たとえば王や高貴な人物を讃えるべく歌われた、「he mele inoa」の伝統をふまえているようでもあります。楽曲という器はコンテンポラリーですが、ハワイ語で表現されているという時点で、その中身というか精神的な部分には、古代から続くハワイ的なものがあらわれているのかもしれませんね。そういえば最初のバースでも、自分自身のことについて「kahi pua no Na*wiliwili」(Na*wiliwili生まれの花)と歌われていて、Kaua'i生まれであることが強調されていたりするところにも、土地に根ざした生き方をよしとする、伝統的なハワイの価値観があらわれているようでもあります。そして、この最後のバースでは、あなたの名(kou inoa)が 「'ala」(香しい)と形容されている―そう、香りを放つことは、ハワイ語の世界ではなによりも魅力的であることのメタファーであり、ときに影響力の象徴でもあるんですね。こんな風に、ハワイ語特有の思考様式が、ギュット凝縮されているように思われる『Nau' 'Oe』。ムード満点のラブソングというだけにとどまらない、奥行きのあるハワイアンソングと言えそうです。 
 
*:Kalihiwaiは、Kaua'i島北部、Hanaleiにある海辺の町。 
**:「Koa」には、「勇気のある」「おそれを知らない」「勇ましい」といった意味があり、ときに「勇者」「戦士」「武人」として用いられることもあることば。
***:KalaleaはKaua'i島の北東部にある町の名前。 
 
by Kainani Kahaunaele
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。