Kananaka(Ale'a version)

Kananaka





Ale'a


 なんて月がきれいなんだろう……。
 (こんな夜は)li*poaの香り、そう、Kananaka(のたくらみ)にはくれぐれも気をつけて。
 忘れるんじゃないよ、いっちまったが最後、
 海に連れ去られて(おだぶつさ)。

 Nani wale a ka mahina
 O ka li*poa o Kananaka
 Poina 'ole a'e hele ana la*
 Hali hali hali o ke kai

 えっ?なにそれ!?……なんだかさっぱりわからないのに、なぜか好奇心だけはムクムクとふくらんでしまう、そんな楽しさとあやしさが充満している『Kananaka』。とにかく話の続きを聞かせてよって感じですが、このmeleはハワイの人魚伝説、Kananakaにまつわるお話がもとになっているものなんだとか。そう、月夜の海にはくれぐれも気をつけて。Li*poa*の香りがただよってきたら、それはKananakaにねらわれてるサイン……というか、海に連れ去られてしまったら(hali o ke kai)、いったいどうなってしまうんでしょうか……。

 うっわ、やばい、うっわどうしょう。
 君ったらもう、からだのそこんとこが石みたいになってるよ。

 Hui
 Io*e*, io*e*, io*e* la*
 Io*e*, io*e*, io*e* la*
 Ua pa'a 'oe i ka po*haku
 A ke kanaka

 だれの仕業だい?
 燃えるようだよ……。
 つんつんとがってるみたいだし……。
 なんだかパンパンなんだけど……。
 あれっ、やっちゃった。
 そこんとこが石みたいになってる(のは、もうごまかせないもんね)。

 Na wai ka hana
 A i ka 'a* 'ana, a i ka pahu 'ana,
 A i ka pehu 'ana, a i ka push 'ana,
 A i ka po*haku
 A ke kanaka

 なんだか熱いし(i ka 'a* 'ana)、つんつんとがってるし(i ka pahu 'ana)、はれ上がってるみたいだし(i ka pehu 'ana)……。ことばだけたどっていると、どう考えても非常事態っぽいですが、あくまでも軽くおかしみのある雰囲気で、深刻さはまったく感じられません。そして、最後はなにかが押し出される(i ka push 'ana)と英語(push)が含まれるあたり、数あるKananaka伝説をもとにしたmeleのなかでも、現代風にアレンジされたバージョンではないかと思われます**。それにしても、からだのある部分が石みたい(i ka po*haku)に硬くなっている(?)というのに、「na wai ka hana」(だれがやったの?)なんて、わかってないんだかとぼけてるんだかわからないところもあります。というか、自分のからだが意思とは別のなにかにあやつられているような、そんな状況なんでしょうか。あるいは、Kananakaの企みにはまるとはそういうことなのか?……まぁ、人魚に誘惑される話ですから、男性ならわかるある事情(秘め事?)があるのかもしれません。

 美しい月の光が煌々とさして、
 静かな夜をおだやかな空気で満たす(ような、そんな状況がくせものなのさ)。
 なんというか、からだの奥の方からドキドキしてくるっていうのかな。
 (そうなったら、まず)海に連れていかれちまうものさ。

 'O ka pa* ko*nane a ka mahina
 Ho'ola'ila'i ana i ka po* la'i
 Konikoni ana i ka iwi hilo
 Hali hali hali o ke kai

 月の光が美しい夜、おだやかな夜の風景とはうらはらに、熱い胸さわぎがドキドキとまらない(konikoni ana)……そして、そのドキドキがやってくるとされる「i ka iwi hilo」(股orももの骨のところ)は、比喩的には「からだの奥深く」ということなので、もう心臓の鼓動が全身をふるわせているような、そんな感じではないかと思われます。というか、そんな衝動の震源地は、もしかすると文字通り足の付け根のところにあったりするんでしょうか……。


 もうわかったね、li*poano香り、
 (あれは)Kananakaだと思って気をつけるんだ。
 忘れるんじゃないよ、いっちまったが最後、
 海に連れ去られて(おだぶつさ)。
 
 Ha'ina mai ka puana la*
 O ka li*poa o Kananaka
 Poina 'ole a'e hele ana la*
 Hali hali hali o ke kai

 ここまでたどってみて、表向きは「Kananakaには気をつけろ」という警告であるKananaka伝説が、もしかすると、日本語の世界では口にするのもはばかられるような、超プライベートな事柄を表現するものではないかという気がしてきました。というわけで、ハワイ語の世界に含まれるからっとしたユーモアと、おおらかな表現を思う存分楽しめる『Kananaka』。その豊かな表現世界を支えているであろう人間観、あるいは倫理観に思いをはせながら、じっくり味わいたい一曲です。

*:海藻の一種。茶色で特徴的な香りを放ち、ハワイの島々で珍重されてきたようです。
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。