Kaeo Hula

Kaeo Hula





Kuana Torres Kahele



 誇らしくみとれてしまうKaeo。
 それは美しく荘厳で(特別な)場所なのです。

 Hanohano Kaeo i ka'u 'ike
 Kilakila i ka nani o ka 'a*ina

 Ni'ihauといえば、夕日に(美しく)照らされる島。
 Nauluの雨にやさしく包まれたりもするような……。 

 'A*ina Ni'ihau i ka la* welo
 Ho'oheno 'ia nei e ka Naulu

 19世紀なかばに私有地になって以来、ハワイのほかの島々とは別の歴史を歩んできたNi'ihau島の、Kaeoと呼ばれる場所について歌われている『Kaeo Hula』。Ni'ihau島に暮らすEmily Wailiulaによる歌詞に、Kuana Torres Kaheleが曲をつけたもので、軽快でポップな雰囲気が、ウキウキと気持ちを盛り上げてくれる感じがあります。ですが、舞台はNi'ihau島。そう、いまもハワイ語を母語とするひとびとが、水道や電気のない生活を続けている島……とくれば、華やかさとは無縁の、でもひとびとの温かさだけはそこかしこにあふれているような、素朴で静かな日常を思い起こすべきでしょうか。

 あぁいいなぁと思う気持ちがふくらんでくる。
 さとうきびの収穫なんかを見ていると。

 Ulu a'e ka manao me ka makemake
 E 'ike i ka nani o ke ko* eli

 砂山のところでまったりしようかな(と思ってみたりする)。
 Halaliiの広く開けた場所で。

 E ho'oipo ala me ka pueone
 I ke kula laula* o Halalii

 「掘り起こしたサトウキビの美しさ」(ka nani o ke ko* eli)ってなに?!って感じですが、ここでは、つつがなく続く日常への感謝とか、そこにある穏やかなこころもちが歌われているのではないかと想像してみました。そう、日々の生活こそが美しい……きちんと積み上げられた収穫物を前にしたときの気持ちだろうかと思ったりしますが、通りすがりの人間にはまず感じ取れない、生活者ならではの感性かもしれません。それにしても、砂山といっしょに「愛し合う」(e ho'oipo ala)とは、どういうことなんだろう……とりあえず、「まったりする」と訳してみましたが、「Halalii」という場所に、なにか物語が隠されているのかもしれないと思ってみたり……。

 特別な誰かが、(まるで)鳥に運ばれてきたみたいに現れて。
 平らな砂浜にしげるuluの木陰でくつろいだり(しそうな、そんな場所なんだよね)。 

 He ali'i e ka manu kau mai luna
 Noho i ka malu ulu i ka hapapa

 先の「Halalii」のくだりに続いて、ここも文字通りの意味をたどると?な感じです。なにか伝説でも残されている場所なのか?あるいは恋人たちのデートスポットだったりするのか……。とりあえず、お昼寝するには最高の、気持ちのいい木陰がそこにあるとだけ想像しておきたいと思います。

 Kaunuokalaといえば私が愛してやまない土地。
 Kawaihoaの頂上なんかをみると、もうほれぼれしてしまう。

 Kaunuokala ka'u aloha
 Ha'aheo i ka luna o Kawaihoa

 あなたを呼んでみる、応えておくれと。
 いつだって素敵で、おだやかにそこにある(その場所に向けて)。

 E hea aku au o* mai 'oe
 O kau ka 'iwa a'u i ka ma*lie

 もう一度歌のメッセージを繰り返してみよう。
 Kaeoがそこにある姿には、見るものを感動させるなにかがある。

 Ha'ina 'ia mai ana ka puana
 Ua nani Kaeo a'e ku* nei

 1967年に、調査研究のために船でNi'ihau島を訪れたというRuth M. Tabrahの記録によると、波が荒くてひどい船酔いで大変だったこと、きちんと整備された港があるわけでもなく、砂ぼこりが舞い上がるでこぼこ道が続いていたことなんかが記されています。隣のKaua'i島は雨の多い緑豊かな島なのに、なぜ?と思いますが、Kaua'i島に雨を降らせたあとの乾いた空気が流れ込むため、Ni'ihau島は雨が少なく、昔から農業よりも牧畜などが行われてきたようです。また、「ua nani Kaeo a'e ku* nei」と、山がそびえている様を表現したりすることもある「ku*」(立ち上がる)が用いられていますが、Ni'ihau島にはそびえ立つような場所はなさそうなので、「そこにある」と訳してみました。それでも、気持ち的には思わず見上げたくなるような、特別な思いでながめるKaeoに違いない……なんて書きながら、いまち情報不足でイメージがふくらみませんが、部外者がみると「なにもない」と思ってしまいそうな風景にこそ、島の魂がやどっていることだってあるに違いないと思うにいたった、『Kaeo Hula』なのでした。

参考文献
Tabrah RM: Ni'ihau, the Last Hawaiian Island. Kailua, Press Pacifica, pp3-4, 1987
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。