Kaua'i Beauty

Kaua'i Beauty







 いいところなんだ、Kaua'i……といえば、Manokalanipo*の島。
 花園のようなこの場所のことは、だれもが知るところ。

 Hanhano Kaua'i, Manokalanipo*
 Ki*ha*pai pua, ua kaulan

 こころのひきだしにそっとしまってあるような大切な思い出を、繰り返したどっているときのやや夢見心地な気分を思わせる『Kaua'i Beauty』。「Ki*ha*pai pua」(花咲く場所)として有名な(kaulana)ほど緑豊かなその島には、Manokalanipo*が治めた時代からの豊かさが保たれ、いまも訪れるひとの目を楽しませてくれる……*。
 そして、このあと、その美しいKaua'i島の姿が、記憶の底からたちあがるように描かれていきます。

 (その島は)森のmaileに飾られて、
 (あの)Mokihanaの香りに包まれてもいる。

 'Ohu'ohu i ka maile a'o ka nahele
 I ke 'ala onaona o ka mokihana

 そう、あの小さなmaileの葉と(mokihanaが)一緒になると、
 (それは)旅人にとって、忘れ得ぬ思い出の香り(となるのです)。

 I wili 'ia me ka maile lauli'i
 Ke 'ala ho'oheno o ka malihini

 森の奥深くに住まう「maile」、そして、小さな緑色の実がleiに用いられることが多い「mokihana」。えっ!?それだけ?……と思ってしまいそうですが、この情報量のあまりの少なさにとまどう前に、こうしてことば少なに語られるKaua'iこそがKaua'iなのだ、ととらえるべきなのかもしれません。あるいは、この起伏のなさからなにかを読みとるには、かすかな気配も見逃さない繊細さと、静かに耳をそばだてるこころの穏やかさみたいなものが求められるのかも……そう、注意深く読むと、「maileに飾られ」('ohu'ohu i ka maile)、「mokihanaの香りに包まれて」(i ke 'ala onaona o ka mokihana)に続く箇所では、mokihanaとmaileがleiに編まれる(wili 'ia)とされていて、あるかなしかの展開があったりするんですね。そして、そのleiは、それをはじめて手にするひとなら(ka malihini)、だれもがいいなと思ってしまう、そんな香りを放つと……。このleiは、最後のバースでは「忘れ得ぬ(poina 'ole)」とも描写されていて、だれもがそれぞれに大切な思い出を持ち帰る、そんなKaua'i島であることがうかがえます。

 この思いをもう一度感じてほしい。
 私の大切なmokihanaのleiが、風にのって香ってくるような感じで……。

 Ha'ina 'ia mai ana ka puana
 Ku'u lei mokihana e moani nei

 そう、あのKaua'iの思い出は、
 (いまも)忘れ得ぬmokihanaのleiとして、こころの引き出しにしまってあるのです。

 Ha'ina 'ia mai ana ka puana
 Ku'u lei mokihana poina 'ole

 風にのって、ふんわりと香ってくるmokihanaのlei……それは、からだ全体で島の空気を呼吸した、あの旅の記憶そのものを呼び覚ますものなのかもしれません。個人的には、夕暮れに包まれはじめた島が、人工物にさえぎられることなく、ただただかなたに続いていた風景が目に浮かぶのですが、そんな記憶の入り口のようなところが、この歌にはあるように思ったりします。そして、なによりも、ゆったりと繰り返されるリズムにのせて、まるでKaua'i島の空気がmokihanaの香りとともにいまここに届きそうだなと……そんなふうに、聞くたびに旅の思い出を反芻させてくれる、『Kaua'i Beauty』なのでした。

by Henry Waia’u(1929)

*:Manokalanipo*は、Kaua'i島の首領として、いまも名を残す人物の名。彼が生きたとされる15世紀ごろは、灌漑や道路などのインフラ整備が進み、島の人口も増えた時代とされているところから、欧米化する以前の、Kaua'i島が島独自のよさを発展させた時代とともに思い起こされるキーワードが、この「Manokalanipo*」ではないかと思われます。
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コメント

Katsu 884

ISRAEL のKaua'i Beauty とてもしっとりとしていい曲ですね。
私もISRAELの大フアンなんです。
いい曲 紹介してくださって 本当に有難うございます。
ハワイ語の話 今後も頑張って続けてください。神戸から応援
してます 

隙間のりりー

Katsuさま へ
Katsu さま

隙間のりりーです。
ISRAELの歌は、ほんとにこころにしみますね。
私も大好きなのですが、ハワイのひとにはわかる、微妙なニュアンスとか、その土地を体験してこその表現があるよなぁ……と思うにつけ、知識で補えないところが手ごわくて、あまり取り上げてこなかったところがあります。
そして、ようやくこの『kaua'i Beauty』については書けそうな気がして、あらためて読んでみたんですね。
そしたら、思いがけえずコメントいただけて……ホントウにうれしいです。
『ハワイ語のはなし』もがんばります。
また、感想とか聞かせてくださいね。
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。