Ha*ma*kua Kihi Loa

Ha*ma*kua Kihi Loa








 Ha*ma*kuaの長く連なる土地(をたどってみると)
 (たとえば)ぐっと高く突き出たような場所があるんだ。
 そして(その上空を)'iwaの鳥たちが飛んでたりもする。
 そう、ゆったりと舞うように……。
 
 'O Ha*ma*kua kihi loa
 'A*ina i ka wakawaka
 Kahi o na* manu 'iwa
 E ho'ola'ila'i ai

 気持ちよく晴れた日に、ゆったり思いのままにドライブしたあの日。ホント楽しかったよなぁ……なんて感じで、旅の思い出をひとつひとつ思い起こしているような雰囲気もある『Ha*ma*kua kihi loa』。軽快に、でもミディアムテンポで歌われる感じが、歩く早さで移り変わる風景を思わせる、そんな臨場感もあります。
 歌の舞台、Ha*ma*kuaは、Hawai'i島のやや南寄りの内陸部に位置するMauna Loa(約4,170メートル)の山頂から、その北側のMauna Kea(約4,200メートル)を突き抜けて太平洋にまでいたる、南北に長く続く地域を指します。そして、その海沿いに長くゆるやかにカーブを描いているのが、この歌でも描かれている地域を含むHa*ma*kua Coast*。旅行ガイドをみると、Ha*ma*kuaの隣に位置するHilo北部、Honomu*のまちも含めたあたりから、Waipi'o渓谷までを2日でたどる、約40マイル(約65キロメートル)のモデルコースが紹介されていました。そして、そのルートが、ちょうどこの歌で描かれている場所と同じだったりするのも、もしかすると単なる偶然ではないかも!?……そう、この『Ha*ma*kua Kihi Loa』には、Ha*ma*kuaといえば、まずここ!的なスポットが選ばれているのではないかと思うんですね。そう思って読むと、旅するひとのウキウキした気分が、なんとなく伝わってくるようなところもあります。
 そうしてたどられる海沿いから山側に目をやると、背後にそびえるMauna Keaから続く山肌が、海に向かってなだらかに続く風景が見えるはず……'a*ina i ka wakawaka(高く突き出た土地)と歌われるのは、おそらく天気がいい日には見えるであろうMauna Loaの山頂や、そこから連なる山々ではないかと思われます。そして、その上空に、「ゆったりと」(e ho'ola'ila'i ai)グライダーのように滑空するさまが美しいことで知られる鳥、’iwaの姿がみられることも**……。こんなふうにたどると、たった数行の歌詞にも、Hawai’i島のスケール感がギュッと凝縮されているように思えてきます。

 美しい風景に目をやると、
 そこにAkakaの滝があったりするんだ。
 そう、旅するひとがよく訪れるとこだよね。

 E 'ike aku i ka nani
 Kahi wailele o Akaka
 Ma*ka'ika'i mau 'ia
 E ka po'e malihini

 Hakalauもよく知られてるかな。
 うっとりするような空気に包まれててね。
 おだやかに波が行ったり来たりする海岸に、
 砂がかすかな音をたているような、そんな場所……。

 Kaulana no* o Hakalau
 Noho mai i ke onaona
 Ke kai ne'e malie
 Nenehe i ka 'ili'ili

 Hilo湾沿いの市街地から、10マイル(16キロメートル)ほど北上したあたりにあるのが、Ha*ma*kuaの南に隣接するHonomu*のまち。そして、そこから少し山側に向かったところに、「kaulana」(有名な)と歌われている滝、「Akaka falls」(約420フィート、128メートル)があります。緑におおわれ、垂直にそびえる絶壁を、水が勢いよく落ちたたきつけられているさまは、写真でながめているだけでも、轟音に包まれる風景の迫力を感じさせるものがあります。一方、これに続いて歌われるHakalauは、同じくHonomu*に位置する海辺のまち。Honomu*の文字通りの意味は「静かな湾」(hono-mu*)***ですから、歌詞にもあるように、ゆったりと穏やかな海が広がっていることがうかがえます。それにしても、とどろきが響きわたる滝と、砂が波に歌うような海辺とが目と鼻の先にあるなんて、なんだか不思議……。というか、それこそが、Hawai'i島のダイナミックな自然の豊かさなのかもしれませんね。

 Umaumaは、いつも深い緑に沈む、そんな場所。
 もくもくと霧につつまれ、なんだかまどろむような、そんな雰囲気。
 そう、そこでね、ぼく、みつけたんだ。
 その山のほうにmaileが育っているのを……。

 Uliuli mau 'o Umauma
 Heha i ka noe polohina
 I laila au e 'ike ai
 I ka maile a'o ia uka

 Umaumaは、Honomu*の少し北にある山側の地域。Umauma fallsや、botanical garden(植物園)****なんかも近くにあったりするところからすると、野生のmaileにも出合えたりする、そんな緑豊かな場所なのだと思われます。

 もうなんてったってWaipi'oは別格だよね。
 Wa'awa'ahiaの雨にぬれるその姿(のすばらしさといったらない)。
 (そして)Hi'ilaweの滝から続く川の流れのあの美しさ。
 あれは(ひとめ見たら)忘れられない光景かも。

 Hanohano ho'i Waipi'o
 I ka ua Wa'awa'ahia
 Po*hihi mai 'o Hi'ilawe
 He nani poina 'ole

 さぁ、いよいよ旅のメインイベント、Waipi'oに到着!って感じでしょうか。Ha*ma*kuaの最北部に位置するWaipi'oは、その背後のKohalaの山々から集まった水が、600メートル級の滝から流れ落ちるのを出発点に、海までの約6マイル(約10キロメートル弱)ほどの土地を刻みつつ流れる渓谷です。そのほん近くにはHi'ilaweの滝もあり、この地域の水量の豊かさがうかがえます。

 その情景が思い浮かんだでしょうか。
 Ha*ma*kuaに連なる風景の美しさが……。
 'Iwaたちもゆったり空を舞うその場所(のことを、ぼくは伝えたかったのです)。

 Ha'ina mai ka puana
 'O Ha*ma*kua kihi loa
 Kahi o na* manu 'iwa
 E ho'ola'ila'i ai

 Hiloa湾からWaipi'o渓谷まで続くHa*ma*kua Coastは、もともと、その豊かな水資源を活かした、タロイモ(kalo)の水田が広がる地域だったようです。19世紀末以降、ネイティブハワイアンたちの農地がサトウキビ農場に取ってかわられ、しかも私たちがいま目にできるのは、サトウキビ産業さえすたれたあとの風景だったりするわけですね*****。なにも思わずにながめると、ただただ美しい自然が広がっているようにしか見えなかったりもするのですが……。そう、失われたものは、知ることでしか見えてこない。そんなことを思いながら、歴史を知ることの大切さをあらためて考えさせられた、『Ha*ma*kua Kihi Loa』なのでした。

*:タイトルにある「Ha*ma*kua kihi loa」(文字通りの意味は「長く続く縁のようなHa*ma*kua)は、この海岸沿いの土地を意味することばでもあると思われます。
**:体長1メートル、羽を広げると2メートル強もあります。魚類を好むことから海辺でみられることも多い鳥ですが、行動範囲は半径80キロメートルとかなり広く、山側の土地に巣作りをするようです。
***:Honomu*には「hono」(湾)、「mu*」(静かな、ものいわぬ)という意味があります。
****:ハワイの「botanical garden」は、植物園といっても、花壇のある庭のようなものではなく、軽いトレッキングを楽しんだりもしながら、山中などに植物が自然に育つ環境を体験するようなものをイメージしたほうがよいようです。
http://www.worldbotanicalgardens.com/
*****:タロイモの水田とサトウキビ農場の違いは、単なる作物の違いではないことも重要だと思われます。そのあたりのことがよくわかる、次のような記録をみつけました。「(Hilo地域北部の川沿いにある)風上側の斜面は、かつてはククイの木が生い茂る場所でした。そして、その森が切り開かれてサトウキビ農場になったのが、19世紀末から20世紀にかけてのこと。その昔、それらククイの森にはタロの水田があって、森の木々の葉や幹、枝などが落ち、土に戻って養分となったおかげて、作物が豊かに実ったといわれています」(Handy ESらによる 『Native Planters in old Hawai'i』からの引用、訳は筆者)。その土地の自然のサイクルを活かした水田と、そのサイクルそのものを取り除いて作ったサトウキビのプランテーションとでは、自然との向き合いかたがまったく異なるといえそうです。

参考文献
Valentin KM: Hilo-images of America. Charleston,Arcadia Publishing, 2014, p10
*訳出して引用した箇所は、以下の文献からの引用。
Handy ES et al: Native planters in old Hawai'i-their life, love, & environment. Rev. ed. Honolulu, Bishop Museum Press, 1991

by Kuana Torres Kahele
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。