Ka ua 'eo i ka nani e Ka ua Kanilehua a he nani no*
「Ke ua nei」(雨が降っている)というタイトル通り、超ご機嫌にひびいてくるウクレレの音が、降り続ける雨音のようにも聞こえてくる『Ke Ua Nei』。いろんなタイプの雨を描写するのにあわせて、メロディも微妙に変えてあるあたり、まさに音色そのものが雨の表現なのかも……なんてことを思いつつ1番を読むと、まず登場するのはHawai'i島Hiloに降る雨「Kanilehua」。Lehuaの花が、雨のしずくにしっとりとぬれている様子が思い浮かぶとともに、「kani」に「音(をたてる)」という意味があることから、lehuaがかなでる雨音を連想させるところもあります。もっとも、Kanilehuaは、たとえトタン屋根の上に降っても音をたてるような雨ではなく、細かく繊細で、でも霧とも違っていて、その雨粒が風に舞うさまは、降るというよりも空間を満たしているような、そんな感じがあります。そして、雨の多いHiloのまちを象徴するのがこのKanilehuaでもあるわけですが、もちろん、そんなやさしい雨ばかりではないんですね。というわけで、2番をみてみると……。
Ku* ka ua, he ua i ka nui e Ho'olohe i ka ma 'eu ho'i ko'u 'oho
「Ku*」には「現れる」(appear)という意味がありますが、遅刻しそうな学生が学校に走り込んでくるような状況もあらわすようなので、「うっわ、降ってきた」と訳してみました*。また、「いたずらな」様子をあらわす「'eu」には、「ho*'eu」だと「まき上げる」(stir up)という意味にもなるので、なんとなく風が吹きまくっている感じもあります。そんな雨風が吹き抜けるときに(i ka ma )、私の髪の毛(ko'u 'oho)をぐちゃぐちゃにするんだから、もうまったく……ってところでしょうか。また、その雨を「ho'olohe」(聞く)と歌われるところには、「(いわれることを)聞く、したがう」という感じもあって、もう雨風のなすがままに任せるしかないみたいな、そんな雰囲気もあります。
Ua Lanipili no* ka ua li'ili'i e Aka* no* ho'i ia 'oe e kupu 'eu
Ua Lanipiliは、'Oahu島、Honolulu東部の山側、Papako*leaに降る雨の名前。「Ka ua li'ili'i」(小さな雨)という描写の通り、雨なのか?霧なのか?というか、そもそも降ってるのかどうかもにわかにはわからない……そんな感じが、「aka* no* ho'i ia 'oe」(あれまぁ、あなた、いたのね!?)からうかがうことができますが、しばらくしてなんとなく服がぬれてるのに気づく(?)みたいな感じなんだとしたら、存在感があるんだかないんだかもよくわらない、不思議な雨なのかもしれません。もしかすると、「lani-pili」(天に近い)なんて、ちょっと神秘的な雰囲気の名前は、そんな得体の知れないところに由来するのかも?なんてことも思ってみたり……。
Ha'ina mai ana ka puana Ka ua Kanilehua a he nani no*
この歌の作者、Kehau Tamureさんによると、一連のさまざまな雨の描写は、ひとの性格にもいろんなタイプがあることを表現するものでもあるようです。雨が多いHiloに暮らすKehauさんにとって、おそらく雨は日常そのものではあるけれど、Kanilehuaのように気にならない雨もあれば、急に降ってきてビックリする雨もある。一方、人間関係も同じことで、空気みたいに自然につき合えるひともあれば、押しが強くて困ってしまうひともある。でも、そんなあれやこれやも含めての日常なわけですね。そして、雨には慣れているはずのKehauさんも、なじみのない雨(Ua Lanipili)には「なんなの?!」と違和感を持ってしまう……といったところでしょうか。そんな、人間の気持ちの微妙な感じが、雨の描写に重ねて語られているように思う『Ke Ua Nei』。自然を擬人化するというよりも、雨とのつきあいが人付き合いと同じレベルで取り上げられているところに、ハワイのひとびと独特の感性をみたような、そんな気がしています。
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