Pua Mae'ole

Pua Mae'ole












 大切な、ホントにいとしい永遠の花。
 (そんな花のような)きみを、いつだってずっと思ってる。
 かわいらしくって、もう目に入れても痛くないって感じで。
 これからもずっと、ずっと(見守り続けるからね)。

 Ku'u pua ku'u pua mae'ole
 Nou mau ko'u li'a 'ana
 He nohea 'oe i ku'u maka la*
 A no na* kau a kau

 「Ku'u pua」が重ねられる歌いはじめを聴くだけで、思いを届けたい誰かのことを、どれだけ大切に思っているかがジンと伝わってくる、そんな温かい雰囲気に満ちた『Pua Mae'ole』。娘を大切に思う父親の気持ちが表現されたものだといいますが、ことば少なに語られるところなんか、なんとなく不器用なお父さんを思わせるところもあるように思われます。はじめて耳にしたときは、えっ?これだけ!?と思ってしまったほどのシンプルさですが、聴き込むほどになぜか味わいが増幅されてくる、そんな不思議なところがこの歌にはあります。余分なものがそぎ落とされて、ホントウに大切な思いだけが表現されているというか……そして、そんな真っ直ぐなところが、なによりこの歌の魅力ではないかと思ったりもします。

 うつくしく、若さみなぎる……そんな女性(に成長したんだなぁと思うと胸が熱くなる)。
 (いまでも)じいちゃん、ばあちゃんにとっては、この上ない宝物(なのだけれど)。
 
 Nani he u'i ka wahine la*
 A he lei wehi no na* ku*puna

 この短い楽曲のなかでも、メロディを変えて歌われるこの部分が、一番、盛り上がるところですが、なんといっても印象的なのは、高らかに歌い上げられている感じもある「ka wahine la*」。というのも、「ka wahine」の意味を考えると、ちょっとドキッとするからです。そう、幼いとばかり思っていたわが子が、いつのまにかりっぱな大人の女性(ka wahine)に成長していることを感じながら、このお父さんは歌っているはずなんですね。あんなに小さくてかわいらしかったきみ。いつもじいちゃん、ばあちゃんについてまわってたのになぁ、みたいな……。そんな、遠い昔の記憶をたどっているようにも感じられるのは、わが娘のことが祖父母を飾るレイになぞらえて語られる、「he lei wehi no na* ku*puna」が、このあと続くからかもしれません。幼いこどもが、抱っこされるがままに両腕を大人の首にからませているさまは、まさに瑞々しいレイのようでもあるなと……。そんな「he lei wehi」という表現には、宝石のようにも思われる大切な子どもを思わせるところもあり、ハワイ語で「玉のような子ども」を表現するとこうなるのかもしれないと思ったりもします。

 大切で、いとおしすぎる……そんなあなたが、
 いつまでもあなたのままでありますようにと願って、
 大切なこの歌を愛するきみに捧げます。

 Ku'u pua ku'u pua mae'ole
 Nou ku'u mele nei

 愛するわが娘のことを思いながら、なんども繰り返される「ku'u pua mae'ole」(色あせない花)。もしかすると、現実には決してありえないものを語るこのことばは、ほとんど祈りにも近い仕方で口をついて出た、娘の幸せを願う父親の思いそのものなのかもしれません*。それにしても、この歌がもともとは超個人的な思いを託したものであったことを思うと、多くのミュージシャンに愛され歌い継がれてきたこと自体が、もしかすると奇蹟でもあっただろうかと思ったりします。もっとも、父親であるJohn Kamana*の思いがもとになってはいるものの、ハワイ語の歌詞をつけたのは別人だといいますから、翻訳の時点で内容の厚みが増して、より多くのひとが共感できるものになった……ということもあり得るでしょうか。あるいは、大切な人をだれでもない花(ku’u pua)にたとえたりするハワイ語の修辞法のなかに、歌のメッセージを普遍的な価値に昇華させるヒケツがあったりなんかして……なんてことをふと思ったりもした、『Pua Mae'ole』なのでした。

by John Squeeze Kamana*

*:その娘さん自身の名前が「Ka-nani-pua-maeole」だったという記録もあるようです。
http://www.huapala.org/Pua_Maeole.html
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。