Pua Tuberose

Pua Tuberose







 ふとよみがえるあの面影。
 わすれ得ぬtuberoseの、あまい香り(のせいだろうか)。

 E kau mai ana no* ka hali'a
 No sweet tuberose poina 'ole

 ふいにわきあがった思いにひととき身をまかせながら、いつだったかの遠い愛の記憶をたどっているような、なんともせつない気分を思わせる『Pua Tuberose』。「Poina 'ole」(忘れられない)のひとことが妙にこころに響くのですが、この誰かの大切な記憶の引き出しをあけたのは、ふとただよってきたtubaroseの、あまい香りだったようです。

 魅力的な香りでもって、私に語りかけてくる。
 それは、あの花とかわした、尽きることのない愛の交歓……。

 Me he ala no* e 'i* mai ana ia'u
 He welina pau 'ole me ia pua

 しずかに耳をすますと聞こえてくる、そう、あのひとが私を呼ぶ声が(e 'i* mai ana ia'u)……。思い出の香りに包まれて(me he ala)、思いはすっかり、あの日あのときの二人だけの空間にワープしているようです。それにしても、尽きることない(pau 'ole)と語られる、tubaroseのようなあのひとと交わした「he welina」*(あいさつ)って、いったいどんなやりとりだったのか……。というか、愛し合う二人にあれこれことばはいらないかもしれませんね。そう、相手の呼びかけに応える「yes」は、なにげない仕草だったり、ときにはやさしいまなざしだったりするもの……。そして、この誰かにとっては、永遠に続くかと思われるほどに空間を満たすtuberoseの香りこそが、そのしるしなのです。

 私のかぐわしいその花は、maileの葉とともに編まれ愛されて……。

 Aloha ku'u pua ala onaona
 I wili 'ia me maile lauli'i

 私の愛するかぐわしいleiが呼んでいる。
 さぁ、わたしたち二人、いっしょになりましょう、と……。

 Ke hea nei ku'u lei 'ala onaona
 E ho'i mai ka*ua la* e pili

 かぐわしい花(pua ala onaona)が愛されるとは、つまり、maileの葉とともに(me maile lauli'i)編まれること……。こんなふうにハワイ語の世界では、leiを作る作業が愛の行為(love making)のメタファーとして用いられることがよくあります。そしてここでは、白いtuberoseと緑のmaileの組み合わせなわけですが、いずれ劣らぬかぐわしさをからみあわせるように編まれるそのleiは、色合いや形の清楚な印象に反して、濃密な二人だけの夢の世界を思わせるところがあります。というか、ここまでを振り返ってみると、ほとんどtuberoseのにおい立つさまだけを歌ってるんですね。そう、いまにも行間からただよってきそうなくらい、この歌にはかぐわしさが充満している……。香りほど物質感をともなった記憶はないことを思うと、愛するひとの息づかいや感触までを、ありありと思い浮かべながら作ったに違いない……なんてことまで、つい想像してしまいます。

 私のこの熱い思いは、あなたのこころに響いたでしょうか。
 そう、私はtuberoseの花を愛したのです。忘れられぬほどに……。

 Ha'ina 'ia mai ana ka puan
 Ku'u pua tuberose poina 'ole

 あまくかぐわしい、ときにその強さでむせかえるほどの芳香をはなつtuberose。それは、控えめな外観からは想像できないほどインパクトのあるその香りでもって、いとしいひとをまるごとよみがえらせてもくれる、そんな記憶の入り口にある花なのかもしれません。そう、お互いの香りが渾然一体となるほど愛し合ったあのときに、二人が交わしたなにかを象徴するものでもあるような……。そんなふうにあれこれ思いめぐらせながら、あれはなんだったのだろう?と思うほどまたたくまに過ぎ去っていく夢うつつのときを、香りの輪郭でもってよみがえらせているような気がしてきた、そんな『Pua Tuberose』なのでした。

by Kimo Kamana(1928)

*:「Welina」は、あいさつ(greeting)の意味での「aloha」に近い意味をもつことば。

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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。