He mele ke*ia no ka lei kaumaka kama‘a*ina Maluhia i ka pu*hala hi*nano o Kapunahou Hi‘ilei aloha a he milimili na ka hulu kupuna Ua ha*nai ‘ia a pa‘a me ka ‘ike ku*pono
(Hui) Hanohano Hawai‘i i ka lono Ua kau e ke kama i ka ni‘o O Maleka ‘Ailana
ハワイアンにはめずらしい短調のしらべ、そして力強くきざまれるリズムが、なにか重大な出来事と大きな感動を伝えているような、ただならぬ雰囲気を感じる『Ka Ni'o O Maleka 'Ailana』。CDアルバムには、政治家の演説と聴衆の大歓声のようなものも一緒に録音されていて、はじめて耳にしたときは「なにこれ?!」と思ったのですが、よく聴いてみると「オバマ、オバマ」の大合唱……。そう、この歌は、ハワイの地にゆかりのあるBarack Obama氏が、合衆国の頂点に立った(kau i ka ni‘o o Maleka ‘Ailana)、つまり、大統領に選ばれたときの歓びがうたわれているんですね。 Obama大統領は、1961年Honolulu生まれ。ヨーロッパにルーツのあるカンザス州出身の母Ann Dunhamと、ケニア出身の父Barack Hussein Obamaの間に生を受けます。ともにハワイ大学マノア校の学生だった両親は、結婚後もそれぞれに勉学を続けて別々の大学に進学、幼かったObama大統領は、母親とともにメインランドに渡ります。その後、再びハワイ大学大学院に進んだ母とともに、Honoluluに戻ったのが1971年のこと。以来、Obama大統領はハワイで教育を受け、人類学を研究していた母親がフィールドワークのためにインドネシアに移住するときも、母方の祖父母とともにHonoluluに残り、Punahouにある高校に進学します。歌詞に登場する地名「Kapunahou」は、このPunahouの古い呼び名で、彼が多感な年ごろにハワイで育ったころのことをイメージしながら、歌われているのではないかと思われます。ハワイとはいえ合衆国ですから、二つのルーツを持って生きる困難は多分にあるはずで、それでもまっとうに道を誤らずにこれたのは(me ka ‘ike ku*pono)、彼を大切にalohaでもって育んでくれた祖父母がいたから(hi‘ilei aloha a he milimili na ka hulu kupuna)……。その後、大学に進学し、政治家としてのキャリアをスタートさせてからは、メインランドで活躍していくわけですが、ハワイのひとびとにしてみたら、Obama大統領を生んだのはハワイの土地だ!という思いがあるのかもしれません。
Ua ‘alo i ka hao nui mai a ka makani kiu Me ke anu ko‘eko‘e ma*‘e‘ele o na* lihi ‘a*kau I ho‘opumehana i ka pu*liki o ke aloha Me na* lei u‘ilani makamae i ka pili ‘ao‘ao
「強い風のような大きな障害」(ka hao nui mai a ka makani kiu)、北の土地の「さむざむとした空気」(ke anu ko‘eko‘e)……ハワイからみると、北米大陸といえば、まずは寒さとともに思い起こされる土地のようですが、ここではその気候以上に、Obama大統領がそこで闘ってきた、政治の世界の厳しさの描写でもありそうです。でも、そんな彼のそばには、いつも輝かしいleiのような存在が寄り添っている……といえば、Michelle夫人と二人の娘さんでしょうか。
Hiehie lua ‘ole ke ku*lana o ke alaka‘i He ali‘i nui leo ‘olu‘olu wale mai no* Ua kau kehakeha i ka welelau o ka honua Na ke Akua lani e kia‘i a ma*lama mau
(Hui) Hanohano Hawai‘i i ka lono Ua kau e ke kama i ka ni‘o Ha‘ina ke aloha no Obama Ka pelekikena e kaulana nei O Maleka ‘Ailana
こんなふうに、ハワイ出身の初の大統領(ka pelekikena)の誕生をこころから歓び、その前途を祝して高らかに歌い上げられている『Ka Ni'o O Maleka 'Ailana』。アラスカに次いで新しいハワイ州ですが、合衆国に併合されたのが1898年。その後、合衆国の州になるのは1959年のことで、半世紀以上もの間、連邦政府に対して州としての権限はありませんでした。その間に先の大戦があり、すでに軍事上の重要拠点としての役割も担っていたことを考えると、複雑な思いにならざるを得ないところがあります。そのハワイで、州権獲得後さらに60年を経て大統領を輩出したことは、多くのハワイのひとびとにとって、おおいなる希望と誇りに満ちた出来事だったのかもしれません。それに加えて、各国から移民を大量に受け入れた歴史のもと、複雑な人種問題もかかえてきたハワイであってみれば、米国史上初のアフリカ系大統領を生んだことにも、大きな意味があったはず……。こんなふうに近現代史のアウトラインを概観しながら、メディアにはなかなか上がってこない、ハワイ語で語られる世界へのまなざしみたいなものがあるようにも思えてきた、そんな『Ka Ni'o O Maleka 'Ailana』なのでした。
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