Kona Kai 'O*pua

Kona Kai 'O*pua




Weldon Kekauoha, Bryan Tolentino and Alika-Boy Kalauli IV


 Konaといえば(思い起こされる)、あの雲が海に映るほどに静かで、輝かしい風景。
 Hi*nanoの花を思わせる白い雲がぽっかり浮かび、刻々と形を変えていく。
 こんな場所はどこを探したってないと思う。
 そう、Konaといえば雲の海(Kai 'O*pua)……。
 (夕暮れの太陽は)水面を無数の色でそめあげるよう。
 そんな、どこまでも静けさに満ちた、Konaの海なのです。

 すばらしすぎる、このおだやかさ。
 雲が映るほど静かなKonaの海。
 Huala*laiの山が、そんなKona(の海を見下ろすよう)にそびえもして。

 Hanohano 'o Kona kai 'o*pua i ka la'i
 'O*pua hi*nano kau i ka ma*lie
 Pua'i na* wai i ka maka o ka 'o*pua
 'A'ole no* 'elua a'e like aku ai
 Me Kona kai 'o*pua
 Ke kai ma*'oki'oki
 Ke kai malino a'o Kona

 (hui)
 Ha'aheo i ka ma*lie
 'O Kona kai 'o*pua i ka la'i
 Kilakila 'o Huala*lai
 I ke kai malino a'o Kona

  静かな海辺にひとりたたずみ、気持ちのいい風を感じながら波の音を聴いている……。そんな、映画のワンシーンをみるように美しい描写が連なる『Kona Kai 'O*pua』。直訳すると「雲('o*pua)の海(kai)」となりそうな「kai 'o*pua」ですが、海に雲が浮かんでいる(?)ということは……そう、海が雲を映し出すくらい、おだやかに凪いでいるんですね。そして、いくつもの色に染められてもいる(ke kai ma*'oki'oki)*ようです。それにしても、「雲の表面から水が流れる」(pua'i na* wai i ka maka o ka 'o*pua)とは、なんとも不思議な表現ですが、おそらく、静かな海面に映り込んだ雲の、微妙な変化を表わしているのではないかと思われます。一瞬たりとも同じ姿をとどめることがない雲は、まるで鏡のように微動だにしない水面をすべるように少しずつ形を変えていき、一日のなかでも特別なその時間をいとおしむように、こちらになにかを語りかけてくる……みたいな、そんな感じを想像しながら訳してみました。
 ところで、凪といえば朝、夕の二回ありますが、とりあえず、夕闇がおとずれる直前の、静かに燃えるような光に包まれる時間帯をイメージしています。「Hi*nano」**の花のように白い雲という表現が、いま、まさにはじまろうとする夜の、密やかで特別な時空間を暗示しているのではないか(?)なんてことを思いながら……。

 KonaにはHawai'i島がほこるべき風景がある。
 雲にやどる(命の)水。
 Huala*laiは(あくまでも)高く、
 Konaを見下ろすようにそびえる。
 Konaはほんとに暑いところ。
 (でも)そこに吹く気持ちのいい風が'Ekaだったり、
 Ke*hauの風がさわやかさを連れてきて、
 だれもがその特別な空気に包まれるのです。

 Ha'aheo Hawai'i i na* Kona
 Ka wai kau i ka maka o ka 'o*pua
 Huala*lai kau mai i luna
 Ka heke ia o na* Kona
 He 'a*ina wela 'i'o no* na* Kona
 He 'Eka ka makani a'e 'olu ai
 'O ka pa* kolonahe a ke Ke*hau
 I ka 'ili o ka malihini

 「Hawai'i島はKonaを誇りに思っている」(ha'aheo Hawai'i i na* Kona)……直訳すると、ちょっとへんてこな感じですが、これはおそらく、「Konaにしかない美しい光景は、この島の宝物」くらいの意味ではないかと思われます。雨が多いハワイ島の東側では見られない、静かで、雲が映るほどおだやかなKonaの海。その背後にそびえるHuala*laiの山も、ときおり吹く心地よい風も、すべてがKonaにしかない、いとおしい風物なんですね。それに加えて、その土地独自のものといえば、そこで営まれてきたひとびとの生活や歴史があります。そして、そんな長いときを旅してきた記憶の痕跡のようなものが、まるで地層のように積み重ねられているのが、この『Kona Kai 'O*pua』でもあるようです。
 たとえば、hi**nanoの花のように白い雲と訳した「'o*pua hi*nano」。これは、「'o* pua hi*nano」と読むと、雲ではなく花(pua)を意味するフレーズになります。いわゆる「kaona」(double meaning)***ですね。また、『Kona Kai 'O*pua』には、歌詞もそれぞれ微妙に違うバージョンが記録されているだけでも十数曲あり、そのなかに、このhi*nanoの花をKamehameha二世(Liholiho)にたとえ、彼の恋物語をたどっているものがあるようです。しかも、さらにさかのぼって、彼の父、Kamehameha一世の求愛のチャントがもとになっているという説もあるといいます****。いずれにしてもあまりに古くて、オリジナルのチャント(chant、oli)については作者不詳なわけですが、王族の恋が、美しい風景に重ね合わせて語られていることは確かなようです。だとすると、鏡のような海やそこに映り込む雲が染められる風景は、いにしえのときに同じ風景をみたであろう選ばれしものたちの、燃えあがる恋心そのものなのかもしれない……。心象風景が、まさに風景として描写されているともいえるでしょうか。
 ここまでたどってみた『Kona Kai 'Opua』は、Henry Waia'uによるもので、彼の息子がKamehameha Schoolを卒業するにあたって作られたものなんだとか。恋愛のkaonaを含む歌が卒業のお祝いというのがしっくりこない気もするのですが、ハワイの伝統に輪郭を与え伝えてきたこの歌ように、ハワイ的価値が受け継がれることを、息子の未来に託したんだろうか……なんてことを想像しています。

by Henry Waia'u(1941)

*:「Ma*'oki'oki」は、「切り分けられた」(oki'oki)状態であることを表すことばですが、ここでは海(ke kai)がたくさんの色に色分けされている状況が描写されているようです。
**:Halaの雄木に咲く白い花で、その強い芳香が恋の媚薬的に語られることも多い。
***:ひとつのことばに複数の意味を含め持たせる、ハワイ語の修辞法。
****:Ki*hei de Silva(Ha*lau Mo*hala ‘Ilimaのkumu hula)が1996年に提出した「Merrie Monarch Fact Sheet」(コンペ出場にあたっての提出書類)参照。同じ『Kona Kai 'O*pua』がKamehamehaⅣ世(Liholiho)のエピソードを語るものに変わっていったという記録も紹介されていて、まるで出世魚(?)的に歌い継がれてきた、この歌の特異な位置づけがうかがえます。
https://apps.ksbe.edu/kaiwakiloumoku/kaleinamanu/he-aloha-moku-o-keawe/kona_kai_opua
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コメント

nao

いまMahai'ula/Kona kai 'opuaをフラで習っています。
コナの海の情景が目に浮かぶくらい詳しく解説を付けて下さってて
勉強になりました。
この情景をフラで表現できるよう頑張ります☆

隙間のりりー

naoさま
以前、リクエストいただいた曲ですよね。

参考にしていただけてよかったです。

習っておられる音源はメドレーなのかなと想像しているのですが、Maha'iulaのほうは歌詞がわからなくて……申し訳ありません。

また気になっているmeleがあったら、ぜひ教えてください。


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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。