La*'ieikawai

La*'ieikawai





 La*'ieikawaiは、あの山の奥深く、
 Paliuliの地にいる。

 Aia La*'ieikawai
 I ka uka wale la* o Paliuli

 美しく、比べるものもないほどの、Paliuliの女神……。

 'O ka nani helu 'ekahi o Paliuli

 その高貴な方がお出ましになるときは、
 鳥たちの羽ばたきにのってやってくるんだという。

 Kau mai la* ke ali'i
 I ka 'e*heu o na* manu

 抑揚の少ない、シンプルで風のささやきのようにも感じられるメロディが、聞く人の心を静かに満たしていくようなところがある『La*'ieikawai』。 曲名になっているLa*’ieikawaiは、14世紀ごろに実在したとも語られる伝説の主人公。といっても、世界各地で語られてきた民話や神話が、この世とあの世、人間の世界と神の領域といった、あらゆる境目のところでつむがれてきたように、La*’ieikawaiの物語には、人間の姿かたちを持ちながら植物や太陽の化身でもあるような、この世のものとは思えないキャラクターたちが登場するなど、なんとも不思議に満ちた物語空間が広がっています。なかでもLa*'ieikawaiは、とりわけ神的な存在として描かれていて、歌にもあるように、彼女がPaliuliと下界とを行き来するときは、鳥たちが彼女を運ぶと語られます。そうして、日々、彼女に仕える鳥たちは、彼女のためにlehuaの花の蜜を集めたりもする……そう、La*’ieikawaiの食事は、なんと花の蜜なんですね。この歌の、どこか遠い世界から響いてくるような感じは、そんなLa*’ieikawaiがまとう神秘的な雰囲気そのものなのかもしれません。

(あのとき彼女は)あまい音色を聞いたのかもしれない。
 そう、Maliʻoが吹く草笛の音を……。

 Ua lohe paha i ka hone
mai
 I ka pu* lau'i* o Mali'o

 いきなり登場するMali'oとその草笛ですが、ここには、La*’ieikawaiの運命を大きく変えることになる、ある重要なエピソードが語られています。歌詞にもあるように、その草笛を耳にしたことで彼女の身にあることが起こるのですが、まずはそこに至るまでの物語をざっとたどってみたいと思います。
 物語は、La*’ieikawaiがO'ahu島のある王族の娘として誕生するところからはじまります。男の子の誕生を望む王に抹殺される運命にあったLa*’ieikawaiは、母のはからいで難を逃れ、Wakaという魔女的な女性によって、人目にふれない場所で大切に育てられることになります。ですが、その高貴さゆえに、彼女がいるところには美しい虹がかかってしまう……そうして、いつかその存在が知られてしまうことをおそれたWakaが最後にたどりついた場所が、Hawai'i島の奥深くにあるPaliuliの地でした。それでも、彼女の美しさをうわさで耳にし、妻にしたいと訪ねてくる男性が現れたりします。ですが、Wakaは並大抵の相手では首を縦に振りません。La*’ieikawaiが、その高貴さにふさわしパートナーと結ばれることを願ってのことですが、そんなこんなで思いを遂げられなかった男性もいるなかで*、いよいよWakaのめがねにかなった相手と、La*’ieikawaiとの婚姻の儀式が執り行われることになります。
 このとき思いがけない事件が起こるのですが、それが「どこからかMali’oの奏でるティーリーフの笛の音がきこえる」と歌われるシーンです。La*’ieikawaiをねらうある素性のよくない男が、魔力を持つ自分の妹、Mali’oの力を借りて、La*’ieikawaiを自分のものにしてしまうんですね。そう、Mali’oが奏でる笛の魔力によって、La*’ieikawaiはそれと知らずに誤って別の男性、Mali’oの兄と結ばれてしまった……そして、この結婚はWakaの望むものではなかったことから、La*’ieikawaiはPaliuliの地を追われることになります。

 さぁ、もう一度、この物語のしらべに耳をすませてほしい。
 Kawai'a'alalehuaopaliuliとも呼ばれる、
 あのLa*'ieikawai(の気配を感じながら)……。

 Ha'ina 'ia mai ana ka puana
 O Kawai'a'alalehuaopaliuli

 そこまでしておきながらどうなんだろう!?と思いますが、Mali’oの兄も、結局、La*’ieikawaiを捨てて行方知れず。夫を失い、La*’ieikawaiは孤独にうちひしがれるのですが、そんな彼女を守り、ふたたび未来を取り戻すべく大活躍するのが、Paliuli時代から苦労をともにしてきたMaile四姉妹とその末の妹、Kahalaoma*puanaです。とくに、Kahalaoma*puanaは、たったひとりでLa*’ieikawaiに見合った男性を探す旅に出たりもします。そうして、ようやく高貴な男性と結ばれるLa*’ieikawaiなのですが、その夫にも自分の双子の妹と浮気されしまうんですね。そんな、La*’ieikawaiにとっては不運続きのストーリー展開なのですが、La*’ieikawaiを裏切った夫には天罰が下り、彼女自身は妹とともに生きるべくこの世を離れ、最後は「トワイライトの女神」と呼ばれるにいたる……というところで物語は閉じられます。
 La*’ieikawaiという主人公はにはそれなりの魅力があるにしても、ストーリーそのものになんらかの意味を求めようとするとはたと困ってしまうような、なんともえたいの知れないところがこの物語にはあるように思います。と同時に、固有の人格をもつキャラクターとしてLa*’ieikawaiをとらえるのではなく、ハワイのひとびとが大切にしてきたあることがら、たとえば理想の女性性みたいなものに形が与えられていると考えると、また別のものがみえてくるのではないかと思ったりもします。そして、そのあたりを探る手がかりは、ストーリー展開よりも、むしろ物語の細部にあるのではないかとも……。たとえば、「La*’ieikawai」という名前の「La*’ie」は、lau ‘ie('ie leaf)のことなのですが、この「'ie」は、Samoaでは女性の処女性を象徴するとされてきた植物だったりするようです。また、La*’ieikawaiがいつも鳥たちにともなわれていることは、おそらく彼女自身が花に囲まれ、いい香りを放っていることを暗示していると思われますが、この香りのする花についても、同じく処女性の印としてもちいられる風習がTahitiあたりにあるようです。ハワイの文化的伝統がポリネシアの地にあることからすると、そういったアナロジーを参照することには、それなりの根拠があるように思われます。
 ただし、そこから『La*’ieikawai』の物語は処女性を最高の価値として描くものであるとただちに結論づけてしまうことにも、ある慎重さが求められるようです。というのも、現在わたしたちが接することのできる『La*’ieikawai』は、欧米化が進む19世紀のハワイにあって、多分にキリスト教的な価値観のもとで書き記された可能性もあるからです。仮にそれが、失われつつあるハワイの語りの伝統を残そうとする試みであったにせよ、まなざしが変わることで別の意味合いで語られてしまう可能性もあるわけですね**。
 そんなことを考えながら思うのは、ストーリーを線的にたどるよりも、まずはこの楽曲の独特の雰囲気を感じ取ることが大切なのかもしれないということ。なかなか姿をあらわさないLa*’ieikawaiは、彼女を恋いこがれる男性にとっては、物語の前半部分では夢の中でしか出会えないひとだったりするのですが、この「夢の中で出会う理想の異性」というモチーフは、伝統的なハワイの物語空間によく登場するものだったりします。この世界のどこでもないと同時に、目を閉じるといつもそこに手が届くようななつかしさをともなってもいる、そんな特異な異空間につながるチャンネルが、ハワイの伝統には存在するのではないかと想像しています。

by Kawaikapuokalan Hewett

*:‘Aiwohikupua(カウアイ島の王子)が、贈り物を携えてLa*’ieikawaiのもとを訪れ、彼女にプロポーズしようとして失敗に終わるエピソードは、この物語の前半部分に含まれる主要なエピソードの一つでもあります。
**:La*’ieikawaiの物語がはじめて活字になったのは1860年代、ハワイ語の新聞の連載としてでした。それが1863年に書籍化され、これと同じバージョンが英語に翻訳されたのは1919年。

参考文献
1)Beckwith M: Hawaiian Mythology. Honolulu, University of Hawai’i Press, pp526-538, 1970
2)Kalakaua: The Legends and Myths of Hawaii. Tokyo, Chales E Tuttle, pp453-480, 1972
3)Hale'ole SN: La*'ieikawai. Honolulu, Kalamaku* Press, 2006
4)Loebel-Fried C: Hawaiian legends of dreams. Honolulu, University of Hawaii press, 2005
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。