Lily of the valley Provider and friend He was yesterday He'll be tomorrow The beginning and the end
彼は過ぎた日であり、明日(への希望)。 (つまり)未来永劫よみがえる、そんな存在なのです。
'O ia i nehinei 'O ia 'apo*po* Ua ho'i a mau loa
高らかに歌い上げられる厳かな雰囲気に、思わずいずまいを正されるような気がする『I Call Him Lord』。ところどころに響く「Jesus」(イエス)から、宗教的な内容が歌われていることがわかってくると、もう次の瞬間には、天にも届きそうなハーモニーの美しさとともに、記憶のなかにある教会のたたずまいや、いつかみた宗教画が目に浮かんだりもして、音楽の力ってすごいなぁと思ってしまいます。と同時に、これは生半可な知識では訳せないなと、いつになく足がすくんでしまうところもある……というのも、「bright morning star」とか「lily of the valley」といった、中学英語で訳せるようなフレーズも、聖書に登場するイエスをあらわすことばだったりするからです。それに、イエスは「昨日であり、明日でもある」とか、「始まりであり終わりでもある」なんて謎解きみたいな歌詞も、とてつもなく深いなにかが表現されている予感がしますし……。そして、終わりから始まるといえば、イエスの復活というのもありますね。「Ua ho'i a mau loa」(永遠に戻ってくる)というあたりが、この信仰について語られている部分でしょうか。 人間の罪をあがなうべく選ばれた存在(master redeemer)とされるイエスは、創造主(provider)であるとともに友(friend)でもある……そう、特別な存在でありながら、彼もまた固有名をもつひと、いわば「イエスという男」でもあるわけです。そんな、同時に持ち得ない属性を備えている彼だからこそ、「昨日であり明日」「始まりであり終わり」でもあるような、そこからすべてがはじまる世界の結節点足り得る、ということではないかと思ってみたり……。
Pua'i 'o ia ala No ka wai ola He malo'o 'ole kena wai
救いを求めるひとびとの思いを乾きにたとえ、それを満たすものとしての教えを水に、そしてイエスの導きを泉からわきだす永遠の流れにたとえているあたりは、水の循環がKa*ne(ハワイの四大神のひとつ)の物語として語られる、ハワイ古来の神話にも通じるように思ったりします。そんな土着の神々への信仰に上書きされる仕方で、約200年の間にキリスト教的な価値観が浸透するに至ったハワイ。ハワイ独特の受容があったと思われるうえに、そもそも信仰としてのキリスト教をちゃんと理解していないことが、ここまで書き進めてもなお引っかかっています。それでも、なんだかわからないとてつもない迫力に、父、子、聖霊という別々の実体(と考えられているもの)を、エイヤ!でひとつにしてしまう、三位一体にも似た有無をいわせぬ雰囲気を感じた、『I Call Him Lord』なのでした。
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