Ka Moa'e

Ka Moa'e







 お~い聞いてくれ、貿易風さんよ。
 (きみは)いつもぼくのあの子をつれてっちゃうんだよね。

 'Auhea wale 'oe e ka moa'e
 E lawe hele nei i ku'u aloha

 いつになったらきみは戻ってくるのかな?
 ぼくにとっては、忘れられないひとなんだよ。

 Ahea la 'oe ho'iho'i mai
 A he lei poina 'ole ia na'u

 軽やかに鼻歌でも歌うような雰囲気が、なんとなく楽しげな気分を感じさせる『Ka Moa'e』。ですが、歌詞をみてみると、「ku'u aloha」(大切なひと)と呼ばれる誰かは、「ka moa'e」(tradewind、貿易風)にたとえられているなにかによって、どこか遠くへ連れ去られているようです。物理的に離れているのか、心理的な距離があるのかはわかりませんが、ともかく、よろしくない状況であることは確かなようです。

 (きみは)ぼくのからだを飾るにふさわしいひと。
 いい感じに、しっかり絆で結ばれたひとなんだ。

 A he wehi ka*hiko no ku'u kino
 A he hoa i ke anu pili hemo 'ole

 かぐわしい香りでつながった愛。
 (でも)ぼくの愛するひとは、Konaのおだやかな海にいるみたいだな。

 He aloha i pili 'ia e ke onaona
 Ku'u ipo i ke kai malino a'o Kona

 そう、ぼくの愛するひとはね、
 Konaのおだやかな海にいるみたいなんだよ……。

 Ha'ina 'ia mai ka puana
 Ku'u ipo i ke kai malino a'o Kona

 ぼくのからだのための(no ku'u kino)、美しい飾り(he wehi ka*hiko)……そんなふうにたとえられる限りは、肌が触れ合うくらい近い関係にある、あるいはそうありたいひとに違いありません。でも、残念ながら風に連れ去られたっきり……と歌われたそのひとが、ここではKonaの「おだやかな海の中にいる」(i ke kai malino)と描写されているんですね。こころここにあらずで、こちらの熱い気持ちに気づかないほどクールなのか、あるいは、ホントにどこか遠くへ行ってしまって目の前にいないのか?……波風ひとつたたない凪の海のように、その姿ばかりか風の便りも途絶えてしまった、そんな状況なのかもしれません。真相はわかりませんが、「ゆるむことのない」(hemo 'ole)絆で結ばれているなんて自信ありげなところも、手応えのないひとり相撲でつい口をついて出た、むなしいセリフではなかったか……。そんな想像をふくらませるうちに、軽やかに響くメロディから、不在のひとを思う空虚さや、あきらめにも近いものがただよってくるような気がしてきた、ちょっとさびしい『Ka Moa'e』なのでした。

by Solomon Hiram

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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。