'O 'Oe No* Paha Ia

'O 'Oe No* Paha Ia







 たぶん君かな、愛(の木)に茂る葉のようなあなた。
 なんとはなしに思い起こされたんだよね。
 (ここは)Inuwaiの風にはちょっと待ってもらおう。
 (そう、まずは)Ke*waiの湿った風が、高いところからやってくるものなのだから。

 'O 'oe no* paha ia, e ka lau o ke aloha
 'O ia no* paha ia kau mai nei ka hali'a
 Alia mai ho'i 'oe, ka pa* a ka Inuwai
 He Ke*wai ko uka e ko* ahe mai nei

 'Alalaua'eの風よ、やって来て、ぼくら二人を包んでほしい。

 E mai ke 'Alalaua'e i 'olu ka*ua

 気持ちのいい風が吹き抜ける場所で、いとしいひとの気配が思い起こされた瞬間から、不意に始まったとわずがたりみたいなものを思わせるところがある『'O 'Oe No* Paha Ia』。風にそよぐ木の葉のゆらぎに愛するひとの息づかいを感じるなんて、まずはその繊細さに驚かされますが、そのまなざしには、はるか遠く世界をみはらせるところにまで、じっと目を凝らしているような、ダイナミックななにかが備わってもいるようです。そう、空を見上げ、海を感じ、山はだを伝う風に身をまかせながら、大地の呼吸みたいなものを気流に感じている……そんな、精神がとき放たれたひとときにだけ許されるこころの道行きを、ともにたどっているような気分にさせられるところが、この歌にはあるように感じます。そしてなにより、風景と感情とが渾然一体となって語られる独特の詩的空間は、自然のエネルギーをからだ全体で感じることができる、ハワイならではの世界観に支えられているのかもしれないとも……。もしかすると、まるごと自然にいだかれた島の生活は、風景のそこかしこに、もうひとつの世界への入り口があったりするのかもしれません。

 次はぼくの気持ちが芽吹く番だね。
 それは泉の水のよう(にあふれる思い)。
 雲が広がろうとするのを、いったい誰がじゃまできるだろうか。
 天に昇る水こそが雨を降らせるのだから。

 'O ka lau a'e no* ia o ku'u aloha
 'O ia no* ho'i ia 'o ka wai puna
 Na wai la* e 'ole ke kau o ka 'o*pua
 'O ka wai o luna e kili iho nei

 どうしたら、ずっとずっと(この調和の世界が)続くだろう。
 Inuwaiの海風からはじまって(また次の雨へとつながる一方で)、
 山手はいつも(雲に)おおわれ守られているはず。
 (そんな)Ke*waiの風がおだやかさをただよわせる〈風景が思い起こされる〉。
 
 Pehea mai no* ia e mau loa ana
 'O ka pua a'e no* ia e ka Inuwai
 Aia paha i uka e malu mau ai
 'O ke Ke*wai no* ia e ho'ola'i mai nei

 風よそっとやってきて。
 やさしく雨を降らせよ。
 ふんわり空を舞いながら……。

 E ko* ahe mai nei
 E kili iho nei
 E ho'ola'i mai nei

 Inuwaiの風が海からの水蒸気をめいっぱい取り込み、山はだをかけのぼるKe*waiとなって、やがて雲を育てては山々をおおい、めぐみの雨を降らせる……歌の後半では、そんな自然の循環こそが、この世界の調和そのものであると歌われているようです*。そして、そんな自然のエネルギーともいえるなにかは、なにものにも妨げられることなく(na wai la* e 'ole)、永遠に続く(e mau loa ana)摂理でもあると……。ここで描かれている水の循環は、いわば命の源であり、大地に降り注ぐ愛でもあるわけですが、だからこそ、私の思い(ku'u aloha)が泉(puna)にたとえられたりするのかもしれません。そう、私の思いの果てしなさは、決してかれることのないわき上がる水のように、刻々と形を変えながら、愛そのものであり続ける……。
 この曲が収められているCDの解説によると、この歌の最初の2行は、古くから伝わるchantの最初のフレーズから引用されたものなんだといいます。元になったと思われるchantでは、同じように愛するひとの気配を感じ、愛の記憶を思い起こすところから語りがはじまるのですが、水の描写に重ねて思いがつづられていくところも共通しています。伝統的に、水から連想されるハワイのひとびとならではの思いというか、ネイティブだからわかるなにかがあるのかもしれないと思ったりもしますが、それでも、私なりになにかを感じ取りたいと思うんですね。ハワイで感じた、あのことばを超えて迫ってくるなにかを思い起こしながら……。そんなふうに、いつだったかの旅の記憶が、いまさらながらにいとおしく思い起こされたりもする、『'O 'Oe No* Paha Ia』なのでした。

lylics by Devin Kamealoha Forrest
music by Kealii Reichel

*:「Inuwai」は海風をあらわすことばで、文字通りの意味は「水」(wai)を「飲む」(inu)。一方、「Ke*wai」は、(のちに雲になる)水蒸気を含んだしめり気のある風。

参考文献
Emerson NB: Unwritten literature of Hawaii-the sacred songs of the hula. Honolulu, Mutual Pub Co, 2007, pp83-84 
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コメント

やよりん

Mahalo
有難うございました
この曲が益々好きになりました
感謝です

隙間のりりー

やよりんさま
やよりんさま

メッセージありがとうございます!
あくまでも私の解釈ですが、やよりんさんなりのイメージ作りの助けになればうれしいです。

また気軽にご連絡ください。

Loko

Kamakahikilani
初めましてLokoです。りりーさんのハワイアンソングブック愛読しています。大変勉強になります。
今、Kamakahikilani をレッスン中です。この曲はkuana がママアネの為に作ったと聞きました。リリーさんなりの歌詞の解釈を教えて頂けたら嬉しいです。

隙間のりりー

Kamakahikilani
Lokoさま

メッセージありがとうございます!
Kamakahikilani、素敵なうたですね。
リクエストありがとうございます。
チャレンジしてみます。

Loko

よろしくお願いします
ʻO ʻOe No Paha Ia ですが素敵な解釈ですね〜
前回のレッスン曲でした。inuwaiの風,ke*waiの風・・・
Hawaiiの風を感じながらおどりたいですね。
リリーさんのおっしゃる様に旅の思い出がよみがえり、またHawaiiに行きたくなりました。
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。