Hanohano 'O Maui

Hanohano 'O Maui







 バラのleiの(イメージで語られる)気高き島、Maui。
 その美しき景観は、ほかの追随をゆるさないといった雰囲気。
 
 Hanohano 'O Maui i ka lei loke
 A he nani hiwahiwa ku* ho'okahi

 明るく楽しげなメロディにのせて、Maui島のさまざまな表情がいきいきと描写される『Hanohano 'O Maui』。そのすばらしさのすべてを象徴することば、「ka lei loke」(バラのlei)で飾られたような晴れやかさで、島の魅力と旅の感動が、ひとつずつ数え上げられるように語られていきます。

 私ははじめて目にしたのです。
 'I*ao渓谷のひんやりした流れを……。

 'Akahi ho'i au a 'ike maka
 I ka wai hu'ihu'i a'o 'I*ao

 大小二つの島がくっついたような、ひょうたんにも見える形状が特徴的なMaui島。そして、ここに登場する「'I*ao」は、そのひょうたんの頭側にあたる西側中央部分に広がる渓谷です。「はじめて見たんです」('akahi ho'i au)なんてストレートな表現から、途方もない年月をかけて流れる水に刻まれてきた、その谷のある風景に向き合ったときのこころふるえる感動がビンビン伝わってくる、そんな雰囲気があるように感じます。また、「ひんやりした水」(wai hu'ihu'i)と語られるあたりは、山の奥まったところにみられる「清流」みたいなものを思い浮かべてもいいかもしれません。

 Puamanaでは、なんといってもささやくような波の音(がステキ)。
 (それは)Kananakaのひそかな楽しみを思わせるほど(魅惑的な)場所でもあって……。

 'O ka nehe a ke kai i Puamana
 Kahi o na* hana le'a a'o Kananaka

 Puamanaは、先に登場した'I*ao渓谷の反対側、Maui島がLa*nai島に向かって張り出しているあたりの海辺に位置する地域です。プライベートビーチがあって敷地も広く、お隣ともしっかり緑の茂みで隔てられている、そんな長期滞在向けのコンドミニアムが点在するPuamana。おそらくそこには、商業施設が立ち並ぶリゾート地とは違う、ゆったりと気ままなときを楽しむような、静かでおだやかな空気が流れているのではないかと想像されます。そう、Puamanaといえば、なんといっても「海のささやき」('o ka nehe a ke kai)といいたくなるような……。そして、その波の音が特別なものであることが、Hawai'iのとある伝説になぞらえて語られるんですね。その海のささやきには、Kananakaの呼び声を思わせるところがあると……。そう、Kananakaといえば、その魅惑的な声で男たちを惑わせ海に連れ込んでしまうという、人魚伝説のキャラクター。日が暮れたりすると、それこそ真っ暗で波の音だけが聞こえてきて、どこかへ連れ去られそうな気分になるほどの静けさに包まれる、そんなPuamanaなのかもしれません。

 Haleakala*は、なんといっても荘厳にそびえる(姿がすばらしい)。
 ひんやりする雨の刺激(もここちよく)……。
 
 Kuahiwi kilakila 'o Haleakala*
 Me ka ua hu'ihu'i koni i ka 'ili

 Haleakala*は、ひょうたんの大きい方にあたる島の東側にそびえる、Maui島の最高峰をいただく山。Keali'i Reichelが歌うCDのバージョンでは、このバースのところで転調するのと同時に、視界がぐっと広がる感じがあります。そう、やっぱりHaleakala*の眺めは格別なんですね。Hawai'i島からO'ahu島に向かう飛行機からみたHaleakala*が、その頂を雲からのぞかせていたことなんかを思い出しました。

 きみにもぜひ、来てみてほしいな。
 Ka*'anapaliみたいな温かさを感じるところにはね。

 E aho no* 'oe e komo mai
 I ka 'a*ina pumehana o Ka*'anapali

 Ka*'anapaliは、PuamanaからLahainaを越えて、さらに数マイル北にたどった海沿いにあるリゾート地。Puamanaよりもホテルやコンドミニアムも多く、旅行者向けの商業施設が立ち並ぶLahainaにも近いことからすると、波の音に耳をすませるような雰囲気ではないかもしれません。ですが、街の灯りが多いぶん、昼も夜もほどよい人肌の温かさがある場所(ka 'a*ina pumehana)……といったところでしょうか。

 Lele(とかつて呼ばれたLahaina)では、こころ落ち着く感じにホッとする。
 そのまちの灯りは、Kaua’ulaの風に吹かれても消えることはない……。

 Mehana ho'i i ka malu a'o Lele
 Pio'ole ke kukui i Kaua'ula

 この歌のテーマを、いまいちど歌いあげようと思う。
 Kamaの(時代から続く)Mauiは、ほかと比べようのない素晴らしい島なのです。 

 Puana ka inoa a'e lohe 'ia
'O Maui a'o Kama no* e ka 'oi
 
 現在は、そこを訪れるひとをもてなすべく観光地化が進んだLahainaの街。ですが、19世紀半ば、Kauikeaouli(Kamehameha三世)の時代に首都機能がO’ahu島に移るまでは、王族をはじめ政治の中枢を担うひとびとが暮らしていたのが、このLahainaでもありました。そして、その地が「Lele」と古の名で呼ばれ、歌の最後にはMauiの伝統を象徴する古代の王の名前も掲げられていることからすると*、ここでLahainaの灯りに重ねあわされているのは、かつてそこにあったであろう、古きよきHawai’iの暮らしだったのかもしれない……なんてことを思ったりもします。そう、伝統のともしびはいまもかがやき続けている。Kaua'ulaの風が、変わらずその地を吹き抜けていくように……**。「Hanohano 'O Maui」(誇り高き島Maui)という、なんとなく大げさな印象のタイトルのベースにあるのは、もう目にすることはない、でも確かにその地に積み重ねられている歴史を感じた、作者の特別な旅の経験だったのかもしれないと想像しています。

words: Kahikina DeSilva, music: Moe Keale

*:Kamalalawalu(Kama)は、Keawaikiに住んでいたという、古代のMaui島の偉大な王の名前。O'ahu島がKakuhihewa、Hawai'i島がKeaweとともに語られるように、Maui島の象徴として語られるときは「Kama」と略されるようです。
**:Kaua'ula はMaui島の西側の地域に吹く風。山から吹き下ろす風で、強く、激しい勢いがその特徴のようです。 

参考文献
※「Kama」について
Elbert SH: Selections from Fornander's Hawaiian antiquities and folk-lore. Honolulu, Univesity of Hawaii Press, 1959, p178
※Kaua'ulaについて
Nakuina M : The Wind Gourd of La‘amaomao (translated into English by Mookini E and Nakoa S). Honolulu, Kalamaku Press, p124, 2005
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。