I Ali'i No* 'Oe

I Ali'i No* 'Oe





 あなたが偉いひとみたいなもんだとしたら、私はフツーのひとってとこかしら。
 私が(こうして)あなたの言う通りに従ってること(をどう思ってるの?!)。

 I ali'i no* 'oe i kanaka au la* 
 Ma lalo aku au a i ko* leo la*

 私は(いつも家に)いて、あなたのために食事なんか作ってるわけ。
 あなたのそのバカでかい体を世話するためにお仕えしてるようなものよ。

 I noho aku au a i kuke na*u la*
 I kuene ho'i no ko* nui kino la*

 あなた偉い人、私フツーのひと……そんな、いきなりドキッとするフレーズではじまる『I Ali'i No* 'Oe』。ハワイ語で「ali'i」といえば、「chief」(ひとの上に立つひと)。円満な上下関係もあるとは思うのですが、自分のことを「kanaka」(フツーのひと)なんて自虐的な呼び方をしているこのひと、命令されるたびに(i ko* leo)その支配下に置かれる(ma lalo)ことに、どうもがまんならないようです。行きたいところにも行けず家にいるのも(noho aku)、あなたのために料理をしなくちゃならないから(kuke na*u)。これじゃあまるで、あなたのバカでかい体を維持するためにお仕えしてる(kuene)みたいじゃないの……*。「あなたの体の大きいこと」(ko* nui kino)なんて表現が、もう相手のことを家畜みたいにしか思えない、そんな殺伐とした心境をあらわしているのかもしれません。

 あなたってホント、愛のかけらもないひとなんだから。
 こんな私に向けてウインクしたこともあったのに……。
 
 He keu 'oe a* ke aloha 'ole la*
 I ne*ia mau maka 'imo aku nei la*

 ちょっとはやさしいところを見せてくれないかしら。
 あなたのʻamakihi(みたいな私)は、か弱い存在なのよ。

 Hō ‘ike mai no* a he palupalu la*
 A he ‘iwi ha’i wale ko* ka ‘amakihi la*

 あなたってホント、思いやりもなにもないひとなんだから……「愛がない」(aloha 'ole)なんて言ってしまって、もう身も蓋もない感じですが、そんなあなたもかつてはこんな私に(i ne*ia mau maka)ウインクしてくれたこともあった('imo aku nei)わけですから、お互いに惹かれるところあって結ばれた二人だったのかもしれません**。でも、それもいまは昔。ちょっとくらいやさしいところ(he palupalu)を見せてくれたっていいのに……自分のことを簡単に骨さえひねりつぶせる(‘iwi ha’i)小鳥にたとえてみたりしながら、もう口をついて出るのは愚痴ばかり……といったところでしょうか。
 ちなみに、ここに登場する「‘amakihi」は、ハワイミツスイの一種で体長10cmほどの小鳥。写真でみると、つぶらな瞳に黄緑色の羽におおわれた姿がやや控えめな印象ですが、短くひびくその鋭いさえずりは、遠くからでもそれとわかるほのどインパクトがあるようです。私は小さくてか弱い‘amakihiなのよ、なんていいながら、口では結構、相手を負かしていたりするんでしょうか……そんな、女性によくあるタイプも想像されますね。

 私にだって、自尊心っていうものがあるのよ。
 (こころのなかでは)ムチがビュンビュン鳴ってるんだから……。

 'O ka pou kaena iho ke*ia la*
 E 'ui*'ui* nei ke kaula 'ili la*

 わかってくれたかしら、私のこの歌に込めた気持ちを。
 (これじゃまるで)あなたは偉くて、私は召使いみたいじゃないの……。

 Ha'ina 'ia mai ana ka puana la*
 I ali'i no* 'oe i kanaka au la*

 あなたって、ホントわかってない―あまりにぞんざいな召使い扱いに怒り心頭、こころの中はまるで荒れ狂う嵐のよう……。そんな状況を想像しながら、「ムチガびゅんびゅん鳴っている」という表現には、いらだつ彼女のあやうい精神状態が暗示されているのではないかと考えてみました。一方、「Ka pou kaena」のところは、「kaena」に「自慢」「自尊心」といった意味があるところから、プライドを持って、ちゃんと自分の足で立っている柱(pou)、比喩的には「人格」という意味合いを持たせて訳しています。それにしても、こうやって日々の澱(おり)というかこころのマグマはたまっていくものなんですね。そうして、いつか爆発してしまうに違いない……。長年、歌い継がれてきたトラディショナルソングだけに、よくある男女のこころのすれ違いがある意味結晶化しているようにも思える、そんな『I Ali'i No* 'Oe』なのでした。

Traditionl

*:「Kuene」には「待つ」「待機する」(wate)の意味があり、「ke kuene」と名詞として用いられると「ウェイター」(給仕係)の意味にもなります。
**:「Ne*ia」は「ke*ia」(これ)と同じく話し手に近いものを指し示すことばですが、文脈によっては修飾するものに対する微妙な感情(多くの場合、マイナスの含みをともなう)ことから、「こんな私の(目)」と訳してみました。また、「'imo」(ウインクする)に付いている方向詞「aku」は、「nei」をともなうと過去の意味になり、かつてこころが通い合っていたころのことが語られていると思われます。
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。