Mai Lohilohi Mai ‘Oe

Mai Lohilohi Mai ‘Oe





 ねぇ聞いて、私の大切なあなた。
 いとしいたった一人のひとだわ。
 あなたなの、私がずっと愛しているのは。
 そう、気持ちをかき立てられるのよ。 

 もう好きでたまらない誰かに向かう感情のほとばしりが、あふれるままに語られているように思われる『Mai Lohilohi Mai‘ Oe』。愛しいそのひとに体当たりするような勢いもあって、なにより「a loko e hana a'e nei」のところには、気持ちの奥深く(loko)が休みなく前に急き立てられている(e hana a'e nei)感じがあります。タイトルの「mai lohilohi mai ‘oe」(直訳は「あなた遅れないで」)にも、なにかをためらって一歩ふみ出せない相手を促すようなニュアンスがありますし……。このなんとなく心穏やかでない状況描写が意味するところがなんなのかは想像するほかないのですが、ともかくもう少し先を読み進めてみると……。

 私が好きでたまらないものといえば、
 そう、あなたの声もそのひとつね。
 私にじわじわ迫ってくる(ともうたまらない感じ)。
 ねぇ、ふたりでいい時間を過ごしましょうよ。

 私、夜もよく眠れないの。
 気持ちがかき乱されちゃって。
 同じことをずっと考えてるわ。
 (それが)こんがらがった状態で、もうどうしようもないの。

 大好きなひとですから、素敵だなと思うところはいくつもあるはずですが、ここではその「あなたの声」(ko* leo)にスポットがあてられます。それにしても、その声が私に(ia'u)じわじわと迫ってくる(i ka ne* mai)なんて、なんとなく耳元でそのささやきを受け止めている感じが官能的ですね。しかも、「ここで」(i 'ane'i)「ふたりで楽しみましょう」(e nanea ka*ua)という呼びかけもあり、実際に二人でいるようにも読めるのですが、この歌の切羽詰まった感じは、なにより相手の不在に思いをかき立てられているひとのこころの乱れのようでもあり、電話でかろうじて連絡を取り合っているような状況のほうが、この歌には相応しいように思ったりもします。実際のところ、この歌が作られたころのLena Machadoは、すでにミュージシャンとして忙しい毎日を送っており、演奏旅行などでパートナーのLuと長期間会えない状況もあったようです。だとすると、離ればなれで「夜もよく眠れない」('a'ohe o'u moe pono i ka po*)ということも、決してめずらしいことではなかったのではないかと思われます。

 もう一度歌うわ。
 いとしいたった一人のひと。
 あなたなの、私がずっと愛しているのは。
 そう、気持ちをかき立てられるのよ。 

 「(もう待てない)早く!」「(さぁ)ためらわないで」とも訳せそうな『Mai Lohilohi Mai ‘Oe』。この印象的なフレーズが歌詞に含まれていないのが不思議なのですが、この歌が最初に録音された1935年バージョンでは、「a loko e hana a'e nei」のところが「mai lohilohi mai ‘oe」と歌われていたようです*。Lena Machadoが歌詞を変えた理由はわかりませんが、「Mai lohilohi~」よりも「a loko~」のほうが、ひと呼吸置いているというか、自分自身を客観視している印象はあります。もしかすると、からだも心もまるごとぶつけるような激しい表現が、年を重ねるにつれてなんとなく気持ちにそぐわなくなったのかも……。そんなことを想像したりしながら、かなりストレートに衝動的な思いが語られているようにも思えてきた、『Mai Lohilohi Mai ‘Oe』なのでした。

by Lena Machado(1935) 

*:ここに訳した歌詞は、1962年に録音されたバージョン。

参考文献
Motta P: Lena Machado-Songbird of Hawaii-My Memories of Aunty Lena. Honolulu, Kamehameha Schools, 2006, pp115-119

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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。