全身全霊で世界のすべてを感じながら、「なんて素晴らしい大地なんだろう(nani ka honua)」とこころふるわせるひとの感動が生き生きと伝わってくる『Nani Ka Honua』。空へ、海へ、山へ……と全方向に向けられるまなざしがとらえたハワイの美しさが晴れやかに歌われる、自然の大パノラマを目にするようなmeleだと思います。なかでも冒頭の虹(a*nuenue)の描写には、広々と視界が広がる臨場感があるうえに、あらゆる美しい色に満ちた(me na* waiho'olu'u like 'ole)光景も目に浮かぶよう……。虹を描写するフレーズではありますが、なにもかもが強い日差しにくっきり映えて輝く、気持ちよく晴れた日のハワイの風景が切り取られているように感じられます。
Hawai’i島でWailukuといえば、Hiloに向かって流れる水流が豊かな川。山々から(mai na* kuahiwi )激しい勢いで流れ落ちる水(ka wai 'o'oloku*)が描かれているので、虹で有名な「Rainbow fall」あたりの滝がイメージされているのかもしれません。一方、「大海原の」(o ka moana)「大波」(na* 'ale nui)と歌われるPunaは、Hiloの南東側に位置するエリア。その大きく激しい波は、「岩に」(i ka po*haku)「ぶちあたって砕く」(ku'i a naha)とされ、同じように勢いのある水辺の風景でも、山側とはまた違った自然の営みがありそうです。Punaの名の由来は「puna」(ハワイ語で「spring、泉」)で、実際に地下から水がわき出る場所(tide pool)がたくさんある地域でもあります。その一方で、Punaには海に流れ込む川らしい川がありません。では、Punaに降る雨はどうなっているのかというと……そう、わき水が多いことからも想像できるように、その多くは大地にしみ込んでいるようなんですね。そんなPunaの独特の自然環境は、その大地を作った火山、Ki*laueaによるところが大きいわけですが、そんなこんなを考えあわせてみると、砂が堆積したような平地に続く海辺ではなく、溶岩が固まってできた黒々とした岩が、波に洗われて水しぶきを上げている、そんな荒々しい海岸線が続いていたりするのかも……。観光でひょいっと行けるようなところではないかもですが、そこにはこれぞホンモノのハワイって感じの風景がありそうな予感がしています。 ここまでたどりながら、あらためていろんな表情をみせるハワイの自然の豊かさが思い起こされました。そしてなにより思うのは、ありのままの自然のあらわれをまるで親しい友人・知人のように語る、ハワイ的感性から生まれたのがこの歌なのかもしれないなと……。そうして、あらゆる自然現象が人格(神格?)を持って語られたりもする、ハワイの神話の世界に通じるものを感じた『Nani Ka Honua』なのでした。
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