Nani Ka Honua

Nani Ka Honua







 虹がいろんな色でもってアーチを描く。
 そうして、大空を飾るんだ。

 全身全霊で世界のすべてを感じながら、「なんて素晴らしい大地なんだろう(nani ka honua)」とこころふるわせるひとの感動が生き生きと伝わってくる『Nani Ka Honua』。空へ、海へ、山へ……と全方向に向けられるまなざしがとらえたハワイの美しさが晴れやかに歌われる、自然の大パノラマを目にするようなmeleだと思います。なかでも冒頭の虹(a*nuenue)の描写には、広々と視界が広がる臨場感があるうえに、あらゆる美しい色に満ちた(me na* waiho'olu'u like 'ole)光景も目に浮かぶよう……。虹を描写するフレーズではありますが、なにもかもが強い日差しにくっきり映えて輝く、気持ちよく晴れた日のハワイの風景が切り取られているように感じられます。

 繊細な雨みたいなミスト……といえば、lehuaの花をぬらすもの。
 'O*hi'aってホント、素敵な木だよね。
 
 風は吹く……そう、あっちでもこっちでも、もっと、もっと!って感じで。
 そうして、砂埃を巻き上げるんだよね。

 雷が鳴って、いなずまが走る。
 そうして、空の高いところが燃えるようにみえたりとか。
 あの音にはガツンとやられるね。

 Lehuaの花をぬらす繊細な雨……といえば、Hawai’i島Hiloのまちに降るKanilehuaでしょうか。このlehua-'o*hi'aのバースも含め、場所を特定しにくい描写もあるのですが、作者Johnny Lum HoがHawai’i島Hilonの出身であることから、Hawai’i島の風景がたどられている可能性が高いのではないかと考えながら訳しています。それにしても、この風(ka makani)が相当強く巻き上げる激しさや、天を燃え上がらせる('a* a'e ka lani)雷がいきなりやってくる(ho'olono)描写には*、大自然のまっただ中に投げ出されているような感じがありますね。

 Wailukuの流域といえば……そう、山々から流れる勢いがすごいんだ。
 そうして、海に流れ込むのさ。

 大海原の荒波といえば、岩にぶちあたって砕くほどだったりとか。
 そう、Punaでは波が高いんだよ。
 
 どう?素敵だとおもわない!
 この大地はホントに美しい(って伝えたくて)。
 大切な生まれ故郷(への愛を込めて)……。
 
 Hawai’i島でWailukuといえば、Hiloに向かって流れる水流が豊かな川。山々から(mai na* kuahiwi )激しい勢いで流れ落ちる水(ka wai 'o'oloku*)が描かれているので、虹で有名な「Rainbow fall」あたりの滝がイメージされているのかもしれません。一方、「大海原の」(o ka moana)「大波」(na* 'ale nui)と歌われるPunaは、Hiloの南東側に位置するエリア。その大きく激しい波は、「岩に」(i ka po*haku)「ぶちあたって砕く」(ku'i a naha)とされ、同じように勢いのある水辺の風景でも、山側とはまた違った自然の営みがありそうです。Punaの名の由来は「puna」(ハワイ語で「spring、泉」)で、実際に地下から水がわき出る場所(tide pool)がたくさんある地域でもあります。その一方で、Punaには海に流れ込む川らしい川がありません。では、Punaに降る雨はどうなっているのかというと……そう、わき水が多いことからも想像できるように、その多くは大地にしみ込んでいるようなんですね。そんなPunaの独特の自然環境は、その大地を作った火山、Ki*laueaによるところが大きいわけですが、そんなこんなを考えあわせてみると、砂が堆積したような平地に続く海辺ではなく、溶岩が固まってできた黒々とした岩が、波に洗われて水しぶきを上げている、そんな荒々しい海岸線が続いていたりするのかも……。観光でひょいっと行けるようなところではないかもですが、そこにはこれぞホンモノのハワイって感じの風景がありそうな予感がしています。
 ここまでたどりながら、あらためていろんな表情をみせるハワイの自然の豊かさが思い起こされました。そしてなにより思うのは、ありのままの自然のあらわれをまるで親しい友人・知人のように語る、ハワイ的感性から生まれたのがこの歌なのかもしれないなと……。そうして、あらゆる自然現象が人格(神格?)を持って語られたりもする、ハワイの神話の世界に通じるものを感じた『Nani Ka Honua』なのでした。

by Johnny Lum Ho

*:「Ho'olono」は「言われることを聞く」という意味ですが、文脈によっては「従う」と訳せることもあることから、否応なく耳に入ってくる感じをイメージして「ガツンとやられる」としてみました。
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。