Puowaina(Punchbowl)は、Waiki*ki*から西に向かうバスで数十分ほどのところにあるクレーター*。海沿いにひろがるAlamoanaからだと、山側に位置するPauoaの丘がはじまる手前のところにあります。そのPauoaに隣接するハワイアンのコミュニティがあるエリアがPapakoleaで、そこからPuowaina をはさんで東側にひらけて見える(ahuwale)のがMakikiの平野(kula loa o Makiki)。そんな、地元のひとたちにとっては、日々往来しているであろうエリアが歌われているわけですが、この誰かは、大切なひとと一緒に(me ku’u aloha)Makikiに戻るつもりのようです。そしてそれは、pua meliaの花をつないでleiにするため(i ke kui pua lei pua melia)なんだと……。針と糸によるkuiスタイルのレイメイキングは、比喩的には愛の営みをあらわすことが多いことを考えると、この二人、Makikiのどこかでひそかに会う約束をしていたのかもしれませんね。
あら大変、急な雨に見舞われて、彼女はManoaで足止めされてしまったようです。せっかくのデートだったのに……。Manoaは、PuowainaからだとMakikiをはさんだ東側のエリアですから、その上空がにわかに雨雲におおわれるのを眺めながら、雨宿りする彼女の姿を思い浮かべたりしたのかもしれません。 ところで、Manoaといえば、熱帯のジャングルを思わせる森の雰囲気を、軽いトレッキングで楽しめる渓谷が人気だったりする観光スポットでもあります。とにかく雨が多く、雨具が欠かせないことでも知られていますが、その雨の名がここに登場する「ka ua Tuahine」。それは、美しさがわざわいして過酷な運命のもとで命を落とすことになったManoaの女性、Kahalaopunaを不憫に思いながら、その母Tuahine がやりきれぬ思いに涙する姿であるとも語られてきました**。そんな伝説の舞台であるManoaは、ハワイのひとびとにとって、まずは切なさを喚起させる場所なのかもしれないと思ったりしますが、少なくともここでは、なかなか思い通りにいかない恋路を暗示しているように感じられます。
あぁ、きみに会えないんだなぁ……そんな、こころにポッカリ穴が空いた気分で、自由に空を舞う鳥の群れをうらめしく見上げているといったところでしょうか。そうさ、きみは僕ひとりのもの(na’u ho’okahi)で、鳥の群れのもの(na* ka nui manu)ではないんだと……。たわわに咲きほこるmikinoliaですから、獲物をねらう鳥のように抜け目ない恋敵がいっぱいいたのかもしれませんね。 Pauoa側の高い位置から東の方向を見晴らすと、Papakoleaのある丘の向こう側にPuowainaがみえ、その先のManoaからHonolu*lu*のビル群も突っ切ったあたりには、島の東端にどっしり構えるKaimanahila(ダイヤモンドヘッド)の姿がある……そんな、見晴らしのいい空間をたどりながら、切ない恋心が淡々と語られる『Papaokolea』。ある日のこころもようが描き込まれた、まるで地図のようなmeleですが、雨という自然のあらわれを神話のことばで語る伝統を引き継いでもいるあたり、文字ではなくoli(chant、詠唱)で地形や気象条件も語り継いだであろう、古代のハワイの知の名残のようなものも感じさせます。もっといえば、個人の思いを超えたところにあるなにかが、ひそかに表現されていたりもするのかなと……。そんなことをあれこれ思いめぐらせながら、ハワイの風景には、先人の思いをよみがえらせる不思議なパワーがあるのかもしれないと思うに至った、『Papaokolea』なのでした。
Traditional
*:Punchbowは、7万5千年から10万年前、O’ahu島が燃える島だった時代に溶岩の噴火でできた地形。英語名は、食卓で用いるパンチボールの形に似ていることにちなむようですが、ハワイ語名の「Puowaina」(Pu*-o-waina)には、「waina」(貯蔵する場所)がある「pu*」(hill、丘)という意味があり、古代には生贄を捧げる場所(死体の貯蔵庫?)だったことに由来するとされています。また現在は、合衆国の共同墓地(National Memorial Cemetery of the Pacific、別名:Punchbowl Cemetery)があり、第二次世界大戦時に太平洋で命を落とした兵士や退役軍人が眠っている場所でもあります。 **:Kahalaopunaの伝説についてはこちら。 http://hiroesogo.blog.fc2.com/blog-entry-31.html
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