Kawailehua'a'alakahonua

Kawailehua'a'alakahonua




 Kawaikapuokalani Frank Hewitt




 
 雨が降ると、
 ほうら天からlehuaが運ばれてくる。

 (そうして)花は海にちらばって、
 大海原を幸せに満ちてただようのです。

 地上のあらゆる命の源である雨を、「kawailehua(ka-wai-lehua)」(レフアの蜜)にたとえ、そのありのままの姿を夢のような美しさで表現する『Kawailehua'a'alakahonua』。シンプルで起伏の少ないメロディの繰り返しが、豊かな水をたたえて悠々とひろがる大海原を思わせるとともに、太古の昔から続く水の循環のはてしなさをたどっているようでもありますが、なんといっても印象的なのは、海に散らばった(helele'i)lehuaの花が、楽しそうに踊る(hula le'a)とされる描写。雨粒がぶつかることで表情を変える海水面をたとえているものと思われますが、雨という現象を喜ばしく眺めるひとだけに感じられる、祝福そのものであるような雨の風景があったりするんでしょうか……。

 雨は海にとってなじみのあるもの。
 ふたたび戻ってきては愛を運び(命をつなぐのです)。

 海では雨は「なじみのあるもの」(he kupa)……なんのことかと思ってしまいそうな表現ですが、蒸発した海水が空中をただよい、いつしか雲になって雨を降らせるのであれば、海に降る雨は、まさしくなじみのある場所にふたたび戻ってくる(ho'i hou)ともいえそうです。そして、雨が降って大地をうるおし、植物が芽吹く季節がやってきて……といったあたりまえに思われるこの繰り返しこそが命を誕生させ、いまを未来へとつないでいく……そんな愛の営み(e aloha mai)の源泉を水の循環に重ねることで、人間を超えた力のもとでこそ成立する、ある世界観が表現されているのではないかと思われます。

 これは大切なあなたのための歌、聖なる存在へ(の捧げもの)。
 大地を目覚めさせるような、かぐわしいLehuaのような雨(に向けて歌います)。

 ここまで描かれているのは、雨が海に降る光景だけですが、歌のタイトル「ka-wai-lehua-'a'ala-ka-honua」には、「ka honua」(大地)ということばが含まれていることに注目すべきかもしれません。レフアの蜜のように愛を運ぶ雨は、なにより大地をめざめさせ、命を育む雨でもある……そんな思いが込められているのが『Kawailehua'a'alakahonua』ではないかと思われますが、「大地」とそれをうるおす「雨」といえば思い起こされるのが、ハワイの創世神話『Kumulipo』に描かれる、「Wakea」(天)と「Papa」(大地)の物語。この一節の中に、生命の誕生を語っていると思われる箇所があるのですが、そこでWakeaが降らせる雨にぬれたPapaから誕生するのが、ハワイのひとびとにとっては「始まりの人間」的な存在であるHa*loa*です。彼が生まれる前には、タロイモの塊茎のような姿で生まれた兄(彼の名前も「Ha*loa」)がいたとも語られ、土にうめられて植物として命をつないだことで、あとに続く人間の栄養源となった……という、そんなお話です。はじまりを力技で創造(想像?)してしまうような、神話特有の時空間が感じられる物語ですが、雨(ka ua)を命の源として捉えることで、人間と植物との隔たりさえないところでつむがれるこの世界観というか表現の素朴さには、どこか『Kawailehua'a'alakahonua』に通じるところがあるようにも思われます。
 ところで、作者であるHewitt氏が歌う、アルバム『Kapilina』におさめられた同曲には、歌とともにナレーションが重ねられていて、最後のバースには、この歌を「my royal child」(私が特別な思いを寄せる子ども)にささげるとHewitt氏自身によって語られています。なんでも、ある子どもが誕生したときに、ふいに向こうから降りてきたインスピレーションから作られたのがこの曲なんだといいますが、この歌のベースには、自分が生きていることも含めて命を授かりものと捉えるところからしか決して生まれない、宗教的なもののはじまりでもあるような世界観があるように感じられます。水の循環も含めて、あらゆる自然の営みがシンプルにあらわれるハワイならではの生命観なのかもしれませんが、せめてそこから大切ななにかを学びたいと強く思う、『Kawailehua'a'alakahonua』なのでした。

*:文字通りの意味はkalo(タロイモ)の地下茎。

by Kawaikapuokalani Frank Hewitt

参考文献
Beckwith MA: The Kumulipo. Honolulu, University of Hawai'i Press, pp117-127, 1951
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。