美しい歌声とピアノのひびきが、緑深くすがすがしい空気に包まれたMānoaの雰囲気を感じさせる『Lei ana ʻo Mānoa i ka nani o nā pua』。Mānoaといえば、高層のホテルが立ち並ぶWaikīkīにもほど近いロケーションが信じられないほど自然の緑が美しい場所で、その山側には、いまもうっそうと生い茂る森が広がっています。日の光もまばらにしか差し込まない森の静謐さと、その静けさを突然襲うにわか雨、そして、その後に現れる美しい虹―そんな自然のありのままの姿が手の届きそうなところにあるMānoaのすばらしさを、その地に残る伝説を参照しながら歌い上げている作品でもあります。花々に包まれたMānoaを称賛しながら、愛すべき伝説の主人公、Kahalaopunaの名が登場するのはそのためですが、ストーリーそのものを直接語るというよりも、物語のエッセンスをそこかしこに盛り込みながら、深い思いを幾重にも折りたたんでいくようなところがこの歌にはあります。そして、なにより圧巻なのは、何度も繰り返されるhuiの部分かもしれません。
誰もが認める美しさで、大切にもされてきたあなた……この歌詞だけを読むと、幸せだけが待っている将来を約束された女性が想像されるのですが、もの悲しく響くメロディには、どこか行き場を失った思いのやりきれなさみたいなものも感じられて、夢を、あるいは未来を途中で絶たれたひとの、魂の叫びが聞こえてきそうな勢いもあります。しかもなぜか、うっすらと翳りにもおおわれているような……舞台はMānoaですから、それはすべてを見通すことがかなわない、うっそうと茂る森の空気感だったりするのかもしれません。少なくとも、伝説を生んだインスピレーションの源泉が、無数の神々によって(nā kini akua)守られた、Mānoaの独特の雰囲気にあることは確かではないかと思われます……。
参考文献 1)Beckwith M: Hawaiian mythology. Honolulu, University of Hawai'i Press, 1970, pp152-153 2)Kawaharada D ed: Ancient O'ahu-Stories from Fornander & Thrum. Honolulu, Kalamaku* Press, 2001, pp15-28(Nakuina EM: Kahalaopuna-Daughter of Ma*noa's rain & wind)
『Lei Ana ʻO Mānoa I Ka Nani O Nā Pua』(by Kawaikapuokalan Hewett)について、zoomオンライン講座で解説しています。アーカイブ(録画)による受講のご案内は、こちらをご覧ください。 http://sukimano.com/blog-entry-650.html
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