Lei Ana ’O Ma*noa I Ka Nani O Na* Pua

Lei Ana ’O Ma*noa I Ka Nani O Na* Pua







 Ma*noaはleiに飾られるように、花々の美しさに包まれたところ。
 (そして、そこに暮らす)Kahalaopunaは愛すべきひとで、
 Ma*noaの見上げるようなそのいただきには、lehuaの花が咲きほこっている。
 無数の神々の力に守られて……。

 美しい歌声とピアノのひびきが、緑深くすがすがしい空気に包まれたMa*noaの雰囲気を感じさせる『Lei ana ’o Ma*noa i ka nani o na* pua』。Ma*noaといえば、高層のホテルが立ち並ぶWaiki*ki*にもほど近いロケーションが信じられないほど自然の緑が美しい場所で、その山側には、いまもうっそうと生い茂る森が広がっています。日の光もまばらにしか差し込まない森の静謐さと、その静けさを突然襲うにわか雨、そして、その後に現れる美しい虹―そんな自然のありのままの姿が手の届きそうなところにあるMa*noaのすばらしさを、その地に残る伝説を参照しながら歌い上げている作品でもあります。花々に包まれたMa*noaを称賛しながら、愛すべき伝説の主人公、Kahalaopunaの名が登場するのはそのためですが、ストーリーそのものを直接語るというよりも、物語のエッセンスをそこかしこに盛り込みながら、深い思いを幾重にも折りたたんでいくようなところがこの歌にはあります。そして、なにより圧巻なのは、何度も繰り返されるhuiの部分かもしれません。

(Hui)
 名高き美しさで、大切にもされてきた、
 まさしくMa*noaの美女というべきあなたは、(私の)いとしいひとなのです。

 誰もが認める美しさで、大切にもされてきたあなた……この歌詞だけを読むと、幸せだけが待っている将来を約束された女性が想像されるのですが、もの悲しく響くメロディには、どこか行き場を失った思いのやりきれなさみたいなものも感じられて、夢を、あるいは未来を途中で絶たれたひとの、魂の叫びが聞こえてきそうな勢いもあります。しかもなぜか、うっすらと翳りにもおおわれているような……舞台はMa*noaですから、それはすべてを見通すことがかなわない、うっそうと茂る森の空気感だったりするのかもしれません。少なくとも、伝説を生んだインスピレーションの源泉が、無数の神々によって(na* kini akua)守られた、Ma*noaの独特の雰囲気にあることは確かではないかと思われます。

 Kolopuaの風が吹いてきて、
 愛するあのひとの香りを連れてきたら……
 ここで私たち二人、雨にぬれていよう(という気持ちにもなる)。
 (そうして)Tuahineの雨は、lehuaのつぼみをぬらすのです。

 Kolopua*の風がふいにつれてくる、いとしいひとの気配、そしてやさしく二人のからだを包む雨……ここには、Ma*noaの自然を語りながら、ある愛の記憶を思い起こしているような雰囲気があります。そして、「大切な恋人」(ku‘u ipo aloha)と呼ばれているのは、1番で語られたMa*noaの美女、Kahalaopunaだと思われますが、ここに登場するMa*noaに降る雨、TuahineはKahalaopunaの母でもあり、娘を思って流す涙がその地に降る雨であると伝説では語られてきました。Kahalaopunaの悲しい運命を予感させる話ですが、ここでその物語をたどってみたいと思います。
 Ma*noaでもっとも美しいと言われるほどの女性だったKahalaopuna。Kauhiという土地の有力者の家系**にある男性と結婚することが決まっていた彼女は、Kahaimano***で人目を避けるように暮らしていました。ところが、彼女がほかの男性といい仲になったという噂を信じて激昂したKauhiに山深いところに連れ出され、あやうく叩き殺されそうになります。運よく守り神であるowl(フクロウ)が瀕死の彼女をみつけ無事よみがえらせますが、Kauhiの怒りはおさまることなく、今度はフクロウにみつけられないようにと、彼女をやっつけて土に埋めてしまいます。それでも、まるで神に見守られてでもいるようにelepaio(鳥の1種)が彼女のことを鳴き声で知らせ、それに気づいたとある男性によって助けられることになります。その男性の名はMahanaといい、後にKahalaopunaと結ばれることになるひとですが、この歌はその彼の視点から歌われているようです。
 なんど殺しても死なないKahalaopunaは、どう考えても幽霊に違いない……Kauhiはそう主張して、自らの命を賭けてこのことを世間に知らしめようと企てます。ですが、結局、証明できず、Kauhiは命を奪われその後サメになったとされます。一方、Mahanaと出会い、幸せを手にしたかに見えたKahalaopunaのほうも、最後には海でサメに襲われて命を落とすことになります。しかもそのサメは、おそらく彼女を執拗に殺そうとした婚約者、Kauhiの生まれ変わりに違いないと語られます。生まれ変わってもなお嫉妬心から逃れられなかったKauhi……伝説とはいえ、なんだか背筋が凍りつきそうな話ではあります。
 なんど殺されても死なないKahalaopunaといい、死んでも死に切れないKauhiといい、どう考えても尋常ではないキャラクターたちですが、そもそもKahalaopunaの出自からして、普通では考えられない仕方で語られています。たとえば、彼女の母は「Ka-ua-kuahine 」、父は「Ka-hau-kani」(Ma*noaの風の名前)であり、しかも彼らは双子のきょうだいだったりするんですね****。さらに遡り、Kahalaopunaの祖父母にあたるペアーにいたっては、「光り輝くMa*noaの尾根」と「(そこに生い茂る)lehuaの森」だったりして、どう考えても人間の力をはるかに超える存在者がイメージされているふしがあります。そう、最終的には人間と結ばれたKahalaopunaですが、土地やそこに育つ植物、吹く風や雨といった自然現象に限りなく近い存在のように思われるんですね。そして、そんな摩訶不思議なキャラクターたちが名を連ねるなかにあって、唯一、彼女の夫となったMahanaだけが、とくに高貴な血筋でもない普通のひととして語られます。そんなこんなを考え合わせると、自然と人間の領域の境界線のところにあって、その両者を力ずくでつなごうとする物語のなかで生み出されたのが、Ma*noaの美女、Kahalaopunaではないかという気もしてきます。また、婚約者だったKauhiとの関係でいえば、Kahalaopunaは、陸地と海それぞれの自然をつなぐ存在でもあるといえるかもしれません。

 愛はlehuaにやどり、山手の土地で咲きほこる。
 (それは)私の胸にしっかりと抱く、特別なleiでもあって……。
 そんなlehuaのleiのような、いとしいひとのために歌ったこのmele、
 (それは)Kahalaopuna、いとしいあなたにこそ捧げるもの……。

 Ma*noaに咲きほこるlehuaは、深い思い(ke aloha)を象徴する……神話の時空間では、Kahalaopunaの運命をたどることが、すなわちMa*noaの自然を語ることでもあるように、この最後のバースでは、Ma*noaの美しさと大切なKahalaopunaへの思いとが、渾然一体となって歌い上げられているような感じがあります。そして、「'O ka beauty o Ma*noa」(Ma*noaの美しいひと)とか「Kahalaopuna」でもよさそうなところを、「lei ana ‘o Ma*noa~」(leiに飾られたMa*noa)がタイトルとして掲げられていることは、Ma*noaという土地とKahalaopunaとが対等に扱われている、もっといえば神話を生むインスピレーションとしてはMa*noaが先にあるからではないかと思われます。また、この世の話とは思えない展開をみせるKahalaopunaの物語ではありますが、たたきつけられ、土に埋められてもよみがえったという不可思議なエピソードも、Kahalaopunaが植物であるなら納得できるような気もします。もしかするKahalaopunaは、Ma*noaの森に満ちているあらゆる植物たちそのもの、その命の象徴のような存在として語られているんだろうか……。そんなことを考えながら、そこかしこに別の世界への入り口があるような気がした、あのMa*noaの森の空気がふいに思い起こされたもした、『Lei ana ’o Ma*noa i ka nani o na* pua』なのでした。

参考文献
1)Beckwith M: Hawaiian mythology. Honolulu, University of Hawai'i Press, 1970, pp152-153
2)Kawaharada D ed: Ancient O'ahu-Stories from Fornander & Thrum. Honolulu, Kalamaku* Press, 2001, pp15-28(Nakuina EM: Kahalaopuna-Daughter of Ma*noa's rain & wind)

*:Ma*noaに吹く風の名前。
**:Kauhiの祖先はMohoali'i(サメにルーツのある神的存在)であったともされます。
***:文字通りの意味は「サメへのささげもの」。
****:母親の「Ka-ua-kuahine 」に「kuahine」(女性の姉妹を男性が呼ぶときの言い方)が含まれるのはそのためだと思われます。ハワイの創世神話『Kumulipo』に、まさにこの近親相姦的な関係から子孫が繁栄していくさまが語られることを考えると、「Kahalaopuna」にまつわる一連の物語も、神話独特の時空間にあるように思われます。

by Frank Kawaikapuokalani Hewitt
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。